トランプ再選で「温暖化」加速!もはや習近平に頼るほかないのか?まったく存在感のない日本
■トランプもアメリカ国民も地球温暖化に無関心
それにしてもアメリカ国民は、とんでもない選択をしたものだ。自分で自分の首を絞めるとはこのことだろう。目先のことを考え、「トランプならなんとかしてくれる」と経済重視で投票した結果、地球温暖化対策は後退し、この先、気候変動による大災害が頻繁にやってくるのは間違いなくなった。
この夏、いままでになかったメキシコ湾から東進してフロリダを襲ったハリケーン「ミルトン」、ノースカロライナに甚大な被害をもたらしたハリケーン「へリーン」を忘れてしまったのだろうか? 赤い州フロリダはともかく、激戦州ノースカロライナまでトランプの圧勝である。
経済、インフレ、移民、中絶と、目先の国内問題ばかり争点にして、もっとも切実な問題を忘れてしまっている。日本の選挙もそうだが、もはや地球温暖化は政治課題ではなくなってしまったのだろうか。しかし、これに対処しなければ、私たちの未来はない。科学者たちの警告より、政治家の甘言を信じていると、時間切れになってしまう。
■「掘って、掘って、掘りまくれ!」とトランプ
トランプは、地球温暖化、気候変動を「ただの天気の話」と思い込んでいる。だから、そんなことにカネと時間をかけるのは馬鹿げているとして、前回、大統領に就任すると即座に「パリ協定」から脱退した。今回も間違いなく脱退する。
トランプは、完全なポピュリストである。
票が欲しいだけのために、ラストベルトの労働者たちに向けて、「USスティールは日本に売らない」と言い、さらに石炭、石油産業労働者たちに向けて、「ドリル、ベイビー、ドリル!」(掘って、掘って、掘りまくれ)と言った。
「化石燃料を掘りまくってエネルギーコストを下げる」「石油・天然ガス産業を後押しすれば経済がよくなる」などと、時代錯誤のタワゴトを並べたてた。
トランプの公約を集めたサイト「AGENDA47」に掲げられたエネルギー政策は、すべて「反バイデン」の“温暖化促進”政策である。
「石油・天然ガスプロジェクトを立ち往生させている政府による制限をすべて撤廃する」「パリ協定から再び脱退し、過激な左派によるグリーン・ニューディールに反対する」「バイデン政権が強化した自動車の排ガス規制など、自動車産業の発展を妨げている規制を撤廃する」
■欧州の「脱炭素」政策は大きく後退した
コロナ禍による経済低迷、ウクライナ・ロシア戦争、イスラエル・パレスチナ戦争などによって、世界的に温暖化対策は大きく後退している。とくにこれまで世界の「脱炭素」「カーボンニュートラル」を牽引してきた欧州での後退は深刻だ。
たとえば、英国ではGHG(温室効果ガス)排出量取引の価格が市場開設以降の最安値を記録し、EUでも安値を更新している。これは、不景気でガス価格が低迷しているためで、脱炭素対策の資金不足につながる。
また、EUは2040年のGHGの排出量について、1990年比で90%削減という新たな目標を掲げたにもかかわらず、農業分野を除外した。域内の農家が猛反対したからだ。しかし、記録的な豪雨、干ばつの激化などの影響をもっとも受けるのは農業である。
EUといえば、自動車に関しては徹底したEVシフト政策を取ってきた。しかし、2030年までにEVを50%あるいは100%まで拡大とする政策は、掛け声倒れに終わる可能性が高くなった。
いくらEVをつくってみても、まったく売れない。売れるのは安価な中国EVだけだからだ。それで、EUは10月30日に、中国製EVに追加関税を課すことを決定した。これでは、EVシフトなどできようもない。
ドイツでは、ついにフォルクスワーゲンが国内工場の閉鎖に追い込まれた。
■習近平の掛け声で温暖化対策が進む
世界を見渡して、いま、もっとも温暖化対策を推進しているのは、中国である。習近平主席ほど、世界の指導者のなかで温暖化対策、環境対策に熱心な人間はいない。習近平は、就任以来、北京の大気汚染対策に取り組み、温暖化対策も徹底して促進してきた。
習近平は、浙江省の書記時代に「緑水青山就是金山銀山」(きれいな水と緑深い山こそが金山銀山に匹敵する宝物である)というスローガンを掲げて環境対策を推し進めた経験がある。それを、中央に持ち込んで、いま、全国規模で展開している。
なんといっても中国は、世界一のGHGの排出国(世界全体の約3割)なので、中国が先頭に立って削減する責務がある。そのため、中国は(1)2030年までにCO2排出量を削減傾向に転じさせる(2)2030年までにカーボンピークアウトを実現する(3)2060年までに実質的なカーボンニュートラルを実現する、と世界に対して表明している。
■温暖化対策を進めれば中国企業は儲かる
ただし、中国の世界に向けた公約は、今日まで思うようには進んでいない。中国国家発展改革委員会は、これまで何度か温暖化対策の主要指標が「見通しを下回った」ことを明らかにしている。
とはいえ、強権国家で習近平が独裁的権力を握っているだけに、温暖化対策はやろうと思えば確実にできる。
この11月8日、全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は、エネルギー安全保障の強化を柱とした新エネルギー法案を可決、成立させた。
この法案では、再生可能エネルギーについて「国は優先的な開発と利用を支持」するとし、エネルギー消費に占める化石燃料以外の比重を高めることが定められた。
中国が温暖化対策に熱心なのは、世界がそれを進めれば進めるほど、中国が儲かるという図式があるからだ。
たとえば太陽光発電パネルの世界市場シェアでは、ロンジ(4.80%)、ジンコソーラー(3.17%)、トリナソーラー(2.59%)など、上位を中国企業が独占している。また、 EVに搭載する車載電池の世界市場シェアも、トップはCATL(32.6%)で、そのあとに韓国、LG化学(20.3%)、日本パナソニック(12.2%)が続いている。
ならば、中国は「一帯一路」で、途上国援助による債務の罠など仕掛けず、積極的に温暖化資金を提供すべきだろう。
折から、アゼルバイジャンの首都バクーで、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第29回締約国会議(COP29)が始まった。この会議の最大のポイントは、温暖化対策の資金をどのように拠出するかだ。
■アメリカ離脱で中国に資金提供を頼むほかない
今回のCOP29は、今後の世界の行方、人類の生存にとって、もっとも重要な会議である。しかし、いまのところ、COP29に関する報道は驚くほど少ない。
COP27で決まった地球温暖化による「損失と損害」(ロス&ダメージ:Loss and Damage)への支援基金創設を、どのように具体的に進めるか。それが最大の課題で、これが決められないと、地球温暖化対策は大きく後退する。
トランプによってアメリカがパリ協定から再離脱し、最大の資金提供国がなくなれば、その穴埋めは困難になる。EUやほかの先進国だけではとうてい無理で、中国に頼るほかない。ところが、中国はCOPにおいては、途上国として参加していて、資金を出す側ではないのだ。
つまり、これを改めさせることができるかどうか? そしてインドやブラジルなどBRICS諸国も巻き込んでいかないと、温暖化阻止などできない。人類の滅亡へのカウントダウンが始まることになる。
■各国首脳は欠席、トランプの邸宅は水没する
すでに報じられているが、アメリカのバイデン大統領、EUのフォンデアライエン委員長はCOP29の首脳会議に欠席する。もちろん、中国の習近平主席も欠席、インドのモディ首相、ブラジルのルーラ大統領も欠席だ。
日本の石破首相も欠席であるばかりか、日本政府は温暖化に対してはほとんど無関心である。気候変動における災害をもっとも受けているというのに、日本はCOPにおいてはまったく存在感がない。
COP29に先駆けて、国連環境計画は10月24日、「Emissions Gap Report2024」(排出ギャップ報告書2024年版)を発表した。この報告書では、現在の排出削減レベルのままでは、今世紀末には地球の平均気温が3.1度上昇するとされている。
また、EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」(C3S)は、11月7日、今年の世界の平均気温が観測史上最高だった2023年を上回り、産業革命前の水準より1.5度以上高くなるのはほぼ確実だと発表した。つまり、すでに「パリ協定」の1.5度以内に抑えるという目標は、無意味になってしまったのだ。
トランプのフロリダ州マイアミにある邸宅「マー・ア・ラゴ」(Mar-a-Lago)は、2045年までに年間210日水没するとされている。しかし、その時期がもっと早まるのは確実だ。しかし、この次期大統領は世界がどうなろうと、知ったことではないのだろう。