台風5号が台湾へ ラニーニャ現象の昨年の台風とエルニーニョ現象の今年の台風の違い
台風5号が北上
フィリピンの東にある台風5号は、台風が発達する目安となる海面水温27度を大きく上回る水温の海域を西進しています(図1)。
台風の中心付近は、海水をかき混ぜることで、深層にある冷たい海水が上がってきていますので、海面水温の温度が少し下がっているのですが、それでも29度くらいはあります。
このため、台風5号は非常に強い勢力に発達しながらフィリピンの東を西よりに進み、その後進路を北よりに変えて、7月28日には華中に達する見込みです。
沖縄県の与那国島地方において、台風5号の暴風域に入る確率は、7月27日午後で5~6パーセント程度と、昨日までの予報に比べると確率が小さくなってきました(図2)。
これは、台風5号が台湾の東を北上する可能性が小さくなり、バシー海峡から台湾海峡を通って中国大陸に進む可能性が高くなってきたからです。
ただ、予報円もまだ大きく、最新の台風情報に注意してください。
台風周辺の暖湿気の北上
台風5号が中国大陸に進む可能性が高くなったといっても、台風周辺の暖湿気が北上したり、台風が太平洋高気圧を強めているという状況は変わっていません。
このため、7月24日の西日本や南西諸島は雲が広がりやすく、所々で雨が降る見込みです。特に西日本では、大気が非常に不安定となり、雷を伴った非常に激しい雨の降るところもあるでしょう(図3)。
短時間強雨や落雷など天気の急変に注意してください。
また、本州付近は台風5号によって強められた太平洋高気圧に覆われ、各地で猛烈な暑さとなり、最高気温は35度以上の猛暑日となるところも多くなるでしょう。
7月23日は全国で最高気温30度以上の真夏日を観測したのが652地点(気温を観測している915地点の約71パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが885地点(約97パーセント)とともに、今年最多でした(図4)。
ただ、最高気温35度以上の猛暑日を観測したのが38地点(約4パーセント)と、7月17日の195地点(約21パーセント)には及びませんでした。
とはいえ、これからしばらくは各地で暑い日が続きますので、熱中症には厳重に警戒してください。
エルニーニョ現象
現在、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなるというエルニーニョ現象が発生しています(タイトル画像)。
ただ、エルニーニョ現象が発生すると、多くの場合、西部太平洋赤道域(インドネシア近海)の海面水温が平年より低くなるのですが、今回は太平洋赤道域の海面水温はほぼ全域で高く、東部太平洋で特に高いという特徴があります。
今年の春までは、東部太平洋赤道域の海面水温が平年より低くなるというラニーニャ現象が2年半という長きにわたって続いていましたので、様変わりです(図5)。
エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、赤道域で積乱雲の発生場所が変わり、台風の性質などが変わり、地球規模で異常気象が発生するとされています(図6)。
気象庁ホームページでは、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象と台風との関係は以下の表のようにまとめています。
昨年、令和4年(2022年)はラニーニャ現象の最中でしたが、台風の発生位置は北西にずれて発生していました(図7)。
このため、日本近海で発生する台風が多くなり、台風が発生するとすぐに日本に影響したということが多々ありました。
エルニーニョ現象の今年、令和5年(2023年)は、これまでの5個の台風発生海域をみると、まだ例数は少ないのですが、南東側にずれていそうです(図8)。
となると、気になるのは、表にある「夏、最も発達した時の台風の中心気圧が平常時よりも低い傾向がある」というところです。
事実、今年の台風2号は、フィリピン東海上で猛烈な台風に発達しています。
そして、沖縄近海から日本の南海上を進んでいますが6月の初めということもあり、海面水温がまだ低く、勢力としては弱まりましたが、日本列島の梅雨前線に向かって広い範囲で大量の水蒸気を送り続けたことで、連続6県(高知・和歌山・奈良・三重・愛知・静岡)で線状降水帯が発生し大雨となりました。
今後、台風2号のように中心気圧が低い猛烈な台風が発生し、海面水温が高くなってきた盛夏から秋に衰えずに日本に接近するということが懸念されます。
今年は台風に対して、特に警戒すべき年になりそうです。
タイトル画像、図2、図6の出典:気象庁ホームページ。
図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。
図4の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図5、図7、図8の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。