「アスパラひつじ」や「メンメ」とは? 1200キロも移動して探した北海道食材の中国料理
食材の宝庫である北海道
北海道は日本が誇る食材の宝庫です。
米や小麦、ジャガイモ、タマネギ、ニンジン、カボチャ、ダイズ、アズキに加えて、サンマ、ウニ、ホタテ、タラ、サケ、マス、コンブ、ホッケ、さらには生乳や肉用牛などが、日本国内で生産量トップになっています(2020年度)。
国内の耕地面積の約4分の1を有する一大農業地帯であり、地域によって気候風土が異なるので、多種多様な農畜産物が生産されています。北海道の食材があるからこそ、日本の食が成り立っているといっても過言ではありません。
北海道の食材を用いたフェア
この北海道の豊かな食材を高級な中国料理に仕上げたコースがあります。
それは、ザ・キャピトルホテル 東急の中国料理「星ヶ岡」で、2022年6月1日から8月31日の平日ディナーに行われている「北海道食材フェア」(22,770円、税・サ込)。
これまでも、料理長を務める山橋孝之氏が日本の各地を巡って様々な地域の食材フェアを行ってきました。今回も、山橋氏が北海道の広大な大地と3つの海を訪れ、オリジナリティに溢れる料理を創り上げています。
どのようなコースが生まれたのか、詳しく紹介しましょう。
※仕入れ状況により、内容が変更になることがあります。
たけなかファーム“リーキ”の冷製濃厚豆乳クリーム
たけなかファームのリーキ=ポロネギを用いた冷製スープです。あえて濾していないので、リーキの甘い風味がしっかりと体験できます。豆乳クリームと塩だけの自然な味付けで、フレッシュなスプラウトをのせ、潮が香る本ズワイガニを贅沢に添えました。
北海道を囲む3つの海から7つの海鮮を一皿に集めて
前菜を担当するのは、山橋氏から信頼されているベテランの桑島栄一氏。
北海道を囲む、オホーツク海、太平洋、日本海をイメージしたブルーの器に、7種類の海鮮を盛り合わせました。その日その日に最適な魚介類がつかわれており、北海道の海の幸を表現した一皿です。
老酒漬けのアマエビは香りが豊かで酒肴にぴったり。塩茹でしたアカソイのすり身を巻いてふかした北海シマエビは、ふくらみのある旨味です。あえてボイルしてウニのソースと合わせたホッキガイは、歯応えは残しながらもやわらかく、新鮮なテクスチャ。塩水ウニならではの繊細な味わいを堪能できます。アサリとジュレは凝縮された旨味が印象的。
メヌケは当別町の甘酒で3時間煮てバナーで焼き、イクラと北海道の山椒をトッピングしました。適度な甘味とギュッと詰まった旨味があり、これもアテに最適。一番出汁で煮た早煮昆布は磯の風味がたっぷり。
付け合わせの野菜は、ヤングコーンとトウモロコシのソース、オクラです。
北海道生まれの伝説のホップ「ソラチェース」を100%使用したビール「SORACHI 1984」や北海道根室市にある碓氷勝三郎商店「北の勝 純米酒」とのマリアージュも秀抜です。
ふかひれの姿煮と北海道産殻付き帆立貝の葱油煎り焼きの共演
北海道産ホタテと「星ヶ岡」名物のフカヒレ姿煮という贅沢な取り合わせ。活ホタテは肉厚で大きな貝柱と、旨味のある干し貝柱、コリコリとしたヒモがつかわれており、様々な味わいが楽しめます。フカヒレはヨシキリザメの尾ビレで、しっかりとした繊維。鶏白湯と醤油を合わせたソースは、妙妙たるコクがあります。
歯舞漁港水揚げ“メンメ”と根室産“灯台つぶ貝”のカムイ・ミンタルの塩炒め
北海道で「メンメ」と呼ばれている脂がのったキンキと、火を通してもやわらかい「灯台つぶ貝」をシンプルな塩炒めに。「カムイ・ミンタル」はアイヌ語で「神が遊ぶ庭」を意味するミネラル豊富な自然塩です。食欲をそそる黄ニラ、シャキシャキとした碧玉筍(ヘキギョクチク)はキンキとの相性が抜群。
西川農場“アスパラひつじ”の蜂の巣揚げ ニセコ産キタアカリの香り
アスパラガスを飼料にして育ち、食味や栄養素に優れた「アスパラひつじ」の挽肉でつくった蜂の巣揚げ=中華風コロッケ。山橋氏は、タロイモやムラサキイモよりもデンプン質の少ないキタアカリでチャレンジしたので、約2ヶ月を要してようやく完成させることができました。羊肉は雑味がなくて、ジューシーです。周りに散らされているのは、サクサクとしたジャガイモのフレーク。
長沼ファーム“馬追和牛”の青椒牛肉絲 芽室・山川わさびの香り添え
繁殖肥育一貫経営の長沼ファームで育てられた馬追和牛は、山橋氏が最初につかうことを決定した食材。40ヶ月の長期肥育で、コクがあってやわらかいです。そのモモ肉とパプリカを別々に炒めて最適な火入れにし、しっとりとして馥郁な味わいのチンジャオロースに。ピリっとした山椒のスプラウトをトッピングし、仕上げに山ワサビを目の前で削りました。
島根県の石州瓦の器も趣きがあります。
当別町産小麦“きたほなみ”の冷し麺 胡麻ダレ五目のせ
麺をメインにした食事。当別町産小麦「きたほなみ」は薄力粉ですが、しっかりとした弾力があります。ミョウガ、サクラカイワレのスプラウト、チシャトウ、マイクロトマト、北海道産コーンを加え、「星ヶ岡」自慢の冷麺の胡麻ダレを合わせました。ピリ辛がアクセントの胡麻ダレは、醤油、煮出した鉄観音(烏龍茶)、胡麻、マスタードなどによって構成されています。
北海道産メロンとミルク杏仁豆腐
当別町産きな粉餡の米粉大福餅と北海道TEAワインブドウリーフティー 2021
杏仁豆腐は品のよい控えめな味わいで、赤肉メロン「ルピアレッド」のかたさにあわせたテクスチャに。
当別町産の素材でつくったきな粉大福は、非常にもっちりしていて、中に包まれたきな粉餡も香ばしいです。ワイン用ブドウの葉を用いたお茶の香気とよく合います。
フェアに至った背景
北海道の食材をふんだんに用いた素晴らしい中国料理ばかりでしたが、どのようにして企画されたのでしょうか。
山橋氏は振り返ります。
「もともと北海道の夏の食材に魅力を感じていました。実際に現地へ訪れたところ、生産者の方の思いや食材のおいしさに感銘を受け、北海道食材フェアを実施する運びとなりました」
この時期に開催したのは、海産物や野菜がとてもおいしい時季であったからということです。今フェアに関しても、山橋氏は北海道へ訪れました。
「4月下旬に根室から寿都までを横断して各地を視察し、全部で約1200キロも移動しましたね。私と仕入れ責任者、マーケティング担当者の3人で生産者を回り、素晴しい食材を見付けられました」
生産者とのつながり
山橋氏が述べたように、今フェアで特筆するべき点はやはり、生産者とのつながりです。
「北海道食材フェア」として最初に決定した食材が、長沼ファームの馬追和牛。食味が秀抜であるのはもちろんのこと、山橋氏は、生産者である森崎睦博氏の牛に対する真摯な姿勢に感銘を受けました。
「アスパラひつじ」を提供したのは西川農場。西川崇徳氏はアスパラガスの端材を飼料に転換して羊を飼育し、「アスパラひつじ」は科学的にも旨味や甘味に優れていることが証明されています。北海道でジンギスカンは名物料理のひとつですが、輸入した羊肉がつかわれていることがほとんどです。もっと日本の羊肉を食べてもらいたいという西川氏の思いに、山橋氏の心が動かされました。
山橋氏が絶賛する野菜はリーキ。100年以上続くたけなかファームの5代目である竹中章氏は、西洋野菜であるリーキを育てるというチャレンジングな試みを行い、質の高いリーキを栽培しています。
これまで以上に力が入れられたフェア
「北海道食材フェア」は、第1弾が6月から7月、第2弾の8月がカニをふんだんに使用したメニューに変わるなど、旬に合わせた内容に仕上げられています。山橋氏が食材の宝庫である北海道のフェアに力を入れていることの証左なので、是非ともこの夏に体験してみてください。