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60年の歴史に幕を閉じる 博多中洲の人気ラーメン店が閉店へ

山路力也フードジャーナリスト
60年もの間愛され続けてきた『博多大砲ラーメン 本店』の「ラーメン」。

『博多大砲ラーメン』が5月末で閉店へ

建物の老朽化により5月31日で閉店する『博多大砲ラーメン 本店』。
建物の老朽化により5月31日で閉店する『博多大砲ラーメン 本店』。

 中洲にかかる春吉橋のほとり、国体道路沿いに佇む老舗ラーメン店『博多大砲ラーメン 本店』(福岡県福岡市中央区春吉3-12-37)。屋台の風情を感じさせる狭い店だが、地元民から観光客までいつも多くの人で賑わう。中洲や春吉で飲んだ酔客が締めに食べるオアシスのような存在の店だ。ちなみに久留米に本店を構える同名店とは現在関係はない。

 『博多大砲ラーメン』の創業は昭和39(1964)年。今年で60周年を迎える福岡でも屈指の老舗だが、建物の老朽化により5月31日をもって閉店することとなった。かつて国体道路の春吉橋周辺には屋台が軒を連ねていたものだが、その屋台もなくなり橋も新しくなって雰囲気が変わった。唯一変わらぬ風景として当時の面影を残していた店が無くなってしまうのは何とも寂しいものだ。

進化したパンチのある豚骨ラーメン

深みのある豚骨スープが特徴の「ラーメン」。
深みのある豚骨スープが特徴の「ラーメン」。

 メニューはシンプルに「ラーメン」「チャーシューメン」「ネギラーメン」のみで、替玉や大盛は用意されていない。替玉はもともと長浜ラーメンの文化で、博多ラーメンにはなかったものだが、大盛もないというのは珍しい。あとはお酒のつまみとして「おつまみチャーシュー」があるだけで、餃子や焼飯などもない。

 見た目はノスタルジックな博多ラーメンながら、その味わいはここ数年で進化を遂げている。パンチの効いた濃度のある豚骨スープは、ほんのりと豚骨熟成臭が漂うもの。細ストレート麺は歯切れの良さとしなやかさを併せ持つ。大判のチャーシューには醤油の味がしっかりと染み込んでいる。丁寧な仕事を感じさせるラーメンだ。

劇的な進化を遂げたとろりとした口あたりの豚骨スープ。
劇的な進化を遂げたとろりとした口あたりの豚骨スープ。

 何よりとろりとした口あたりの豚骨スープが白眉の出来。本来の博多ラーメンはおやつ感覚でサクッと食べられる、毎日でも食べられるようなあっさりとした味わいだった。しかしながら時代に合わせて博多ラーメンも進化を遂げており、よりスープの濃度が高くなったり旨味が強くなったラーメンが増えている。昭和に生まれた『博多大砲ラーメン』のラーメンも、平成そして令和と時代の変化とともに変わっていったのだ。

60年の歴史を味わって欲しい

連日別れを惜しむファンが後を絶たない。
連日別れを惜しむファンが後を絶たない。

 今後は令和元(2019)年にオープンした『博多大砲ラーメン 新宮店』(福岡県糟屋郡新宮町下府3-1-27)で、歴史ある屋号と味は受け継がれていく。しかしながら、泣いても笑ってもこの味をこの場所で楽しめるのは今月限り。是非とも60年福岡の人たちに愛されてきた場所で、歴史のある一杯を味わって頂きたい。

この景色が見られるのもあとわずか。
この景色が見られるのもあとわずか。

博多大砲ラーメン 本店
福岡県福岡市中央区春吉3-12-37
2024年5月31日で閉店

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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