その中学受験は本当に子どものためになる?
受験シーズンが迫ってきて、中学受験においても追い込みをかける時期になってきました。
そこで、私が以前聞いて印象的だったNさんという方の話を紹介したいと思います。
Nさんは関東地方在住で小学6年生の子のお母さんです。
以下、要約して紹介します。
「私の夫は、学歴主義者で自分で誇らしげにそれを宣言しています。
子どもにも『よい大学を出てよい仕事に就くのが幸せになる条件。それでないと収入も地位も高くならないし人にもバカにされる。とにかく学歴が大事だから中学受験に集中するように』と言っています。
テストの点や順位にうるさくて、結果が悪いと不機嫌になって子どもを叱り続けます。
先日も塾のテストで順位が下がったことに激怒し、誕生日のプレゼントはお預けになりました。
元の順位に戻ったらプレゼントを渡すと言っています。
他にも罰を与えたりご褒美で釣ったりして、子どももうんざりしています」
私はNさんの話を聞いて、未だにこういう人がいるんだなと思いました。
また、この人ほどはっきり言わなくてもこれに近い価値観の人はけっこういるとも思いました。
でも、私は学歴より大事なものがあるとはっきり言いたいと思います。
例えば、人間性とか自分らしく生きられる主体性などは学歴よりはるかに大事です。
学歴が高くても人格・徳性・思いやり・誠実さがなければ何の意味もありません。
また、学歴が高くても自分の人生を自分らしく生きられないならそれも意味がありません。
実際、高学歴でなくても人間的に素晴らしい人、自分らしく幸せに生きている人、適性を活かして活躍している人、立派な仕事をしている人はたくさんいます。
学歴や収入や地位が高くても、イヤイヤ仕事をしているようでは幸せとはいえないでしょう。
また、学歴も収入も地位も高い高級官僚・政治家・大企業のトップなどで不道徳なことや不正をしている人はたくさんいます。
これから受験シーズンに入っていくわけですが、本当に人生において何が大切なのかをしっかり考えた方がいいと思います。
特に中学受験の場合は、親が視野狭窄に陥って子どもを苦しめている例が多いので気をつけてほしいです。
勉強しないとか成績が上がらないなどといって叱り続けていると、子どもの自己肯定感が下がります。
「自分はダメな子だ。どうせ自分は何をやってもダメだ」という思い込みが強くなってしまうと、チャレンジ精神や向上心が減退し努力の継続ができなくなります。
また、勉強についてのネガティブな印象が強くなり、勉強が嫌いになってしまいます。
生涯学習が大事な時代なのに、こうなってしまうと大人になってから勉強する意欲が持てなくなってしまいます。
叱られ続けると親の愛情に疑問を持ち始め、その結果として親子関係が悪化します。
親への不信感や不満が募り、それが他者一般に対する不信感、つまり人間不信につながる可能性もあります。
親が視野狭窄に陥って叱り続けていると、このような弊害が出てくるので気をつけてほしいです。
中学受験で人生が決まるなどと言ってあおる人もいますが、決してそんなことはありません。
塞翁が馬の故事を思い出しましょう。
親は大人なのですから、受験を必要以上に大ごととして捉えすぎることなく、より長期的かつ俯瞰的に人生を見るようにしてほしいと思います。
そもそも次のような子は中学入試の受験勉強に向きません。
・まだ精神的に幼い
・自己管理力がまだ十分に育っていない
・勉強へのモチベーションが持てない
・元々勉強が好きでも得意でもない
私の知るところでは、早生まれ男子の多くは上記に該当するので中学受験に向いていません。
でも、小学生ではこのような状態だった子が、中学に入ってから伸びるケースもよくあります。
その場合は、高校受験で勝負した方がはるかによい結果が得られます。
子どもの成長ペースは百人百様で早熟がよいとは限りません。
後伸びの子もいますからわが子の成長のペースをよく見て、まだ無理だと思ったら勇気をもって中学受験から撤退する選択肢も持ちましょう。
この年代の子どもに対して、勉強しないと言って毎日叱ってばかりいるのは絶対によくありません。
とにかく、無理な中学受験は弊害が大きいです。
そうならないために4つの視点を提案したいと思います。
1,本人がやりたいことをやったりなど、子どもらしい健全な生活を楽しみつつ
2,自己肯定感を高めつつ
3,親子の関係を良好に保ちつつ
4,本人に見合った範囲のがんばりでできる中学受験
これらをクリアする中学受験ならよいと思います。
再度言いますが、中学受験が本当に子どものためになっているか再考してみてほしいと思います。