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「お通じのお悩み」にはキウイ。その効果を医学的に実証。【最新エビデンス】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

先月、「『お腹のつらさ』、薬に頼りすぎていませんか?常用で〇〇リスクが50%上昇の可能性も」という記事をご紹介しました。「便秘薬に頼りすぎると、将来認知症になるリスクが増えるかも」というお話です。お読みいただけましたか?

では薬に頼らずお通じを良くするにはどうしたらいのか——。上の記事では「朝食を抜かない」という方法をご紹介しました。加えて「十分な水分や食物繊維の摂取」の大切さにも触れました。

そこで今回は「食物繊維を摂るならキウイ」という医学研究をご紹介します。キウイのお通じ改善作用は、ガイドラインで推奨されている食物繊維サプリよりも強力でした。「米国消化器学会誌」という学術誌に1月9日付で載った研究をご紹介します [文献1`] 。執筆したのはオタゴ大学(ニュージーランド)のRichard Gearry氏たち。日本人研究者も10人が共著者として名前を連ねています。

お通じで悩んでいる120人をくじ引きで2群に分け、比較

この研究が対象にしたのは、日本とイタリア、ニュージーランドでお通じに悩んでいる(便秘を訴えた)約120人です。便秘の原因(病気や常用薬など)が明らかな人とたちは除かれています。

これら約120人は「キウイフルーツ1日2個」(ヘイワード種グリーン・キウイの皮以外)を4週間食べるグループと、食物繊維「サイリウム」サプリを飲むグループにくじ引きで割り振られました。ちなみにサイリウムサプリはカナダのガイドラインで、お通じ改善に推奨されています [文献2] 。

サイリウムサプリの量は、含まれる食物繊維の量がキウイ2個分と同じになるよう調整されています。そのためキウイに「食物繊維プラスアルファ」のお通じ改善作用があるかどうかも、調べることが可能でした。

このようにグループをくじ引きで分ける比較試験は「ランダム化比較試験」と呼ばれ、医学研究の中では非常に信頼性の高い方法だと考えられています(くじ引きで分けると「どちらかのグループが有利になるよう分ける」ことが不可能だから)

キウイでサイリウムにくらべ「お通じ回数」が有意に増加し「お腹の不快感」も減少

その結果キウイを食べたグループでは、完全なお通じがあった回数が1週間でおよそ1.7回増え、この増加率はサイリウムサプリ群の約2倍でした。またこの差は統計学的に「有意」(偶然ではない)と確認されています。

さらに「キウイ食」群では客観的スコアで評価した「お腹の不快感」も、サイリウムサプリに比べ3倍改善されていました。

キウイに含まれる食物繊維のほうがお通じを楽にする、あるいはキウイが含む「ラファイド」が腸の蠕動を促進した可能性

ではなぜキウイ食とサイリウム・サプリの間で「お通じ改善」に差があったのでしょう?

一つの理由としてGearry氏たちは、キウイの食物繊維の方がより水分を含みやすく膨張しやすい点を指摘しています [文献3] 。その分、お通じが柔らかくなると考えられます。またキウイに含まれる「ラファイド」という物質が腸の蠕動を促進する可能性にも触れられています[文献4]。お腹の働きの改善も期待できる訳ですね。

まとめ

いかがでしたか?

キウイによる「お通じ改善」は、一部ガイドラインでは便秘に推奨されているサイリウム(ウェブ上でもお通じ改善に効果が高いと評判)より上だ、という医学研究のご紹介でした。お通じが良くなるだけでなく「お腹の不快感」が減る点も魅力的ではないでしょうか?

この研究ではキウイを食べる時間は参加者に任されていました。だから自分のライフスタイルに合った食べ方が可能です。朝ごはんがわりに1つ、就寝前に1つ、という食べ方などいかがでしょう?

ぜひ試してみてください!

食べ物については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひお読みください。

今回ご紹介した論文はすべて英語ですが無料で要約が読めます(一部全文無料のものも)。無料翻訳サイトDeeplを使えば簡単に日本語に直せます。

ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. キウイはサイリウムよりもお通じ改善作用が良好(全文無料)
  2. サイリウムを便秘に推奨するカナダの便秘ガイドライン
  3. キウイに含まれる食物繊維は水分による膨張率が高い
  4. キウイに含まれる「ラファイド」が腸の蠕動を促進する可能性

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。また本稿筆者にキウイ生産者や販売者とのつながりは一切ありません。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(いずれも筆名)。

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