ご注意を!「縮毛矯正」後に「急性腎障害」。外国から相次いで報告。グリオキシル酸が原因?【最新論文】
ヘアケアで腎臓に悪影響?
6月10日、「キドニー・インターナショナル・レポート」という世界的な腎臓病学会誌に、ちょっとショッキングな患者さんの報告が掲載されました。
縮毛矯正が原因で(一過性ですが)急激に腎臓の機能が悪くなった、つまり急性腎障害を起こした可能性があるというのです。
報告したのは、スイスのジュネーブ大学病院で働くオーレリー・ユベール氏たち。
簡単にご紹介します [文末文献1] 。
縮毛矯正後に体調不良
昨年の9月、42歳の女性が体調不良を訴えてジュネーブ大学病院を受診しました。
ユベール氏たちが調べると、腎臓の機能が低下していました。そこで腎臓そのものを調べると、腎臓の内部に「シュウ酸カルシウム」という物質が沈着しているのが見つかりました。
医学的には、この沈着が腎臓を傷つけ、その機能を低下させていると考えられました(シュウ酸腎症」と呼ばれます)。
しかしなぜ、腎臓にシュウ酸カルシウムが沈着したのでしょう?
訊けばこの女性、数日前に縮毛矯正を受け、その後から具合が悪くなったというのです。彼女が縮毛ケアを受けたブラジルでは、グリオキシル酸を使った縮毛矯正が一般的だと言います。
グリオキシル酸と腎機能低下の間に何か関係があるのでしょうか——?
グリオキシル酸使用縮毛ケア後の腎機能低下は過去にも多数の実例
不思議に思ったユベール氏たちは医学論文を調べました。
すると驚いたことに同じような患者が26名も、すでに報告されていたのです [文末文献2] 。全員、急激な腎機能低下を認めたのですが、その前にグリオキシル酸を使った縮毛矯正を受けていました。
そこでユベール氏たちは次のような仮説を立てます。
頭皮から吸収された「グリオキシル酸」が血流に乗り、まずは「グリオキシル酸」、そして「シュウ酸」とカタチを変え、最終的に「シュウ酸カルシウム」となって腎臓に沈着。その結果、腎臓の機能が急激に悪くなるのではないか——。
縮毛矯正のたびに体調を崩す女性も
縮毛矯正後に腎機能が低下した患者さんの報告はこれだけではありませんでした。
臨床医学では最も信頼性の高い「ニューイングランド医学雑誌」(NEJM)にも、同じような患者さんの報告が載っていたのです [文末文献3] 。報告したのは、マルセイユ・コンセプション病院(フランス)のトーマス・ロバート氏たち。
こちらは26歳の女性。グリオキシル酸を使った縮毛矯正を3回受け、3回ともその直後に体調が悪くなりました(受診したのは3回目)。調べると、やはり腎臓の機能が低下していました(その後、経過観察だけで回復)。
「グリオキシル酸添加」後の「シュウ酸カルシウム」沈着を動物実験でも確認
ロバート氏たちはさらに検討を続けます。動物(マウス)にグリオキシル酸を投与してみたのです。
するとやはり腎臓の機能は低下し、さらに腎臓への「シュウ酸カルシウム」沈着が直接、確認されました。
やはりグリオキシル酸は(いつもではありませんが)、腎臓に「シュウ酸カルシウム」を沈着させることがあるようです。
注意すべき症状は?
誤解なきよう追記しますが、グリオキシル酸を使った縮毛矯正を受けた全員で、腎臓の機能が低下するわけではありません。しかしその「可能性」を知っておいて損はないでしょう。
念のため、グリオキシル酸を使った縮毛矯正後の主な身体症状もご紹介しておきます [文末文献2より]。
悪心・嘔吐 (側)腹痛 頭皮発疹
私たち素人では、腎臓に原因があるとは思えない症状ばかりでした(多い順)。
縮毛矯正の後にこのような症状が出たら、医療機関を受診した方が安心かもしれません。
まとめ
グリオキシル酸を使った縮毛ケアをサロンで受けた後、腎機能が一時的に低下して体調を崩した患者さんがいた、という論文3本をご紹介しました。
いずれもサロンでのケア後なので、市販されているグリオキシル酸入りトリートメント剤でどうなるか、これらの論文からでは分かりません。
さて、髪の毛については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!
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今回ご紹介した論文
- 縮毛ケア後に体調を崩し、腎機能低下が確認された42歳女性 [2024 Jun. 10]
- グリオキシル酸を用いた縮毛ケア後に腎機能低下した26例
- グリオキシル酸はマウスの腎臓にシュウ酸カルシウムを沈着させる [2024 Mar. 20]
本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。