血圧を下げたいなら「トマト」?「高血圧予防」の可能性も。7000人を3年観察【最新情報】
高い血圧を放置すると何が起きるか
「血圧は高くても平気」。
これはおじさん向け週刊誌定番のネタ。でも本当でしょうか。
図を見てください。血圧別の「その後、心臓血管系疾患(心筋梗塞や脳卒中)で死亡するリスク」を日本人で調べた結果です。
明らかに血圧が高くなるほど、そのあと心臓血管系疾患で死亡するリスクが上がっています。
これでも放っておけますか?
「高血圧」とは「放置すると将来、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などになるリスクが上がってしまう血圧」だと考えてください。「今、健康健康な人の血圧」ではありません。
「血圧を下げるとかえって悪い」?事実は逆。
「血圧が上がるのは加齢現象だから無理に下げるのは良くない」。
これも週刊誌でよく見かける主張です。確かに第二次世界大戦中の教科書にはそのように書かれていました。でも1940年代の医学常識で治療されたいですか?
さて、こちらの図を見てください。
降圧薬を使った治療がその後の心臓血管系疾患発症に及ぼす影響を調べた、7つの臨床試験データを併合した成績です。
ご覧の通り、血圧は大きく下がった方が、そのあとに心臓血管系疾患を起こすリスクは減っています。
これが事実です。
だからやはり、血圧は上がらない方が良いし、上がったら下げたほうが良いでしょう。
そこで、本題です。
いろいろな食材が「血圧を下げる」と紹介されていますが、今回は「トマト」です。「高血圧の予防」も期待できそうです。バルセロナ大学(スペイン)のダビド・ムルシア=レスメ氏たちが「欧州予防循環器学」という学術誌で報告した研究をご紹介します [文末文献1]。
トマトをたくさん食べる人は血圧が低く、高血圧にもなりづらい
同氏たちが調べたのは、スペイン在住の約7000人。日々のトマトの摂取量を「質問票」から割り出し、その後3年間の血圧の変化をトマト摂取量別に比べました。
その結果、トマト摂取量が「3日で約1個」だった人たちに比べ、「毎日1個以上」の人たちでは上の血圧が2.4mmHg、下の血圧も2.0mmHg低くなっていました。
もちろんトマトをたくさん食べる人とそうでない人では、トマト以外にも血圧に影響を及ぼす影響の差があります。しかしこの数字はトマト以外の因子による影響を統計学的に取り除いた後の結果なのです。
さらに、観察を始めた時点は高血圧でなかった約1000人で解析すると、トマト摂取量が「3日で約1個」だった人たちに比べ、「毎日1個以上」の人たちは3年間で高血圧になるリスクが相対的に44%も減っていました(0.56倍)。
最後に嬉しいデータをもう一つだけ。
トマト多食に伴う血圧低下は、糖尿病の有無や肥満の有無、降圧薬服用の有無とは無関係に認められたそうです。ちょっと健康に自信がなくても大丈夫。試してみる価値はあるでしょう。
リコピンが作用?
もちろんこの結果だけでは、「トマトが血圧を下げた」のか「トマトを多食する人たちに共通する何かが血圧を下げた」のか分かりません。
しかしムルシア=レスメ氏たちは、「トマトが下げた」と考えているようです。
というのも、トマトに豊富なリコピンは、血圧を上昇させる「レニン・アンジオテンシン系」という仕組みを抑制することが知られており、またそれ以外にも血圧を下げるであろう多くの作用が報告されているためです。
ちなみに降圧薬でも、レニン・アンジオテンシン系を抑えて血圧を下げるものがありますよ。ARBとエース阻害薬と呼ばれる薬です。
まとめ
トマトを1日1個以上食べる人は少ししか食べない人に比べ血圧が低く、高血圧にもなりにくいという観察研究でした。
普通のトマトが「食べにくい」「苦手」なら、プチトマトが良いかもしれません。あまり「トマト」らしい味もしませんし、サッと洗うだけで簡単に食べられます。
リコピンについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらも是非、ご覧ください。今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ではまた!
今回ご紹介した論文
本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。