「黒人だから」霊媒師とノルウェー王女の恋愛は批判と差別を受けるのか?
ノルウェーのマッタ・ルイーセ王女と婚約者のシャーマン(霊媒師)であるデュレク・ベレット氏が、インスタグラムで70分にわたるライブ放送をした。
動画の多くは互いをどれほど深く愛し合っているか、2人の恋愛事情が多くを占める。
ノルウェー現地で注目を浴びた点は「ベレット氏が黒人だから、人々は差別し、反対しているのか」という点だ。
動画後半から2人はこう話している。
ベレット氏「私たちは多くの憎しみと死の脅迫を受けています。なぜなら人々は欧州のロイヤルファミリーに黒人がいるのを見たくないから」
男性が黒人女性を選ぶパターンはありだった。でも女性のプリンセスが黒人男性を選ぶストーリーは今までなかったから、人々は過剰反応するのだと指摘している。
ベレット氏「プリンセスが黒人男性を選んだ歴史はありませんでした。古い枠組みに縛られている人たちは、ついてこれないのです。だからとても落ち込み、怒るのです」
「でも私たちは別の意識の層で生きています。その意識世界を世界にもたらすために私たちはいるのです」
「黒人と付き合うことは、君にとっても目を開く出来事になっているんじゃない?」と、ベレット氏は隣にいる婚約者に問いかけた。
ルイーセ王女「ええ、もちろん。大きな学びになっています。白人特権で生きてきて、最初は分かっていませんでした。今も世界でこのようなことが怒っていることは、本当にショック」
「私はナイーブでした」と語る王女は、白人の王女と黒人の恋人に対して、人々の態度がどのように違うかを目の当たりにしてきた、そして同じように「多くの白人もナイーブだ」と語る。
食い違う「議論を醸す理由」
今回の2人のラブラブな会話で、ノルウェーのメディアが取り上げたのは、「人々は黒人を白人のロイヤルファミリーにいるのが見たくないのか」「肌の色で差別しているのか」という点だ。
これまでノルウェーでは、ベレット氏のスピリチュアル・ビジネスに関する言動がフォーカスされてきた。
英国のロイヤルファミリーに関する報道と異なり、彼の肌の色にはあえて触れずにいた面もある。
肌の色に特化した報道は、余計に彼の肌の色に対するヘイトをネットで生むという配慮。メディア側から肌の色と差別の可能性を話題にすること事態が、ノルウェーでのポリティカル・コレクトネスに反するなどもあってのことだと、私は感じている。
肌の色の差別を指摘するのは、むしろこのカップルであり続けた。
議論を醸すのは「カップルの言動や、王室の特権を利用したかにみえる商業ビジネス」という視点で報道してきたノルウェーのメディアに対して、「批判者の中には差別意識が眠っている」と反論することが多かった。
ベレット氏は男性も女性も恋愛対象であり、バイセクシュアルであることも批判されると、カップルは自分たちから話題にした。
ベレット氏のセクシュアリティに関しても、ノルウェーのメディアはあえて大きくは報道してこなかった。
互いに愛しあっており、自分たちは他人の意見はもはや気にしない意識レベルにいるともカップルは何度も強調した。
ベレット氏「(批判する人々に対し)その人たちがそういう人でありたいなら、そうすればいい。それが彼らが選んだ在り方で、きっと愛を知らない場所から来たのでしょう」
ルイーセ王女「繰り返しますが、それがその人たちの限界なのです。だから私の選択を理解できないのでしょう」
このように、ノルウェー現地の報道陣がする批判視点と、カップルが指摘する「私たちが批判される理由」は、ずっとずれていた。
6月はプライド月間ということもあり、このカップルの話題はなくとも、多様性についての議論はノルウェーでもともと多くなっていた。
だからこそ、「ノルウェー王室の多様性を歓迎する」という、王室の多様性がより豊かになることを喜ぶ、ノルウェー現地の差別反対団体などの声も公共局NRKでは記事になっていた。
あえてノルウェーメディアが大きく話題にしないことで、ネットでヘイトスピーチが増加するのを防いでいたともいえる、肌の色やセクシュアリティの視点。
だがカップルのほうから指摘が今も続くことで、この角度での議論も今後は進むのかもしれない。
「多様性のある国だ」と証明しようとする意識が働いて、ノルウェーで結婚をより祝福する傾向が高まる可能性もある。