新宿の有名ホテルで大半の飲食店が閉店! そこに新しくオープンした「なだ万」では何が食べられる?
歴史ある日本料理店
日本には、数多くの日本料理の名店がありますが、日本全国に展開する規模を誇り、長い歴史をもつブランドといえば「なだ万」です。
「なだ万」の原点は、1830年に初代の灘屋萬助が大阪に開業した料理店。そこから時代は下り、1970年帝国ホテル 東京に「帝国ホテル店」をオープンし、1986年にホテルニューオータニの「本店 山茶花荘」で東京サミットの晩餐会が開催されました。
順調に店舗を増やしていき、現在では、レストランは国内に27店舗、海外に6店舗を擁しています。小売店も国内に44店舗を構えるまでに発展。2011年には創業180周年を記念して、「なだ万」初の料理本「なだ万 日本料理の真髄」も発売しました。
「なだ万」といえば高級日本料理を想起させ、その名を知らない人は少ないでしょう。
「なだ万」で注目の新店
この「なだ万」がオープンした注目の店があります。
それは、ハイアット リージェンシー 東京に2022年1月14日グランドオープンした「新宿なだ万」です。
・新宿の有名ホテルで6つの料飲施設が閉店! 3つのレストラン・バーだけが営業を継続する理由(東龍)/Yahoo!ニュース
ハイアット リージェンシー 東京は新型コロウイルス感染拡大の影響を受けて、館内にある直営料飲施設の半分以上をクローズしました。そのクローズした跡地に「新宿なだ万」が入居して大きな注目を浴びたのです。
日本料理エリアの「日本料理 新宿なだ万」、鉄板焼エリアの「鉄板焼グリル by なだ万」、鮨エリアの「すし清水 by なだ万」に分かれており、総席数124席という大店舗。日本料理では個室が充実しており、鉄板焼にはカウンターとテーブルで個室が設けられています。
「新宿なだ万」の支配人は「なだ万」歴20年以上という渡辺淳太氏。店舗全体の調理長は吉田武彦氏が務めています。
それぞれの店舗とメニューについて詳しく紹介していきましょう。
※価格は全て税・サ込
日本料理 新宿なだ万
3つのエリアにわかれていますが、最も大きいのは日本料理のエリア。ホール席11卓46席、半個室3室24席、個室3部屋16席でのべ86席になります。
開業時から調理長を務めるのは、全体も統括する吉田氏。「名古屋なだ万」に入社後、「香港アイランドなだ万」「東京なだ万」「シャングリ・ラ ホテル 東京 なだ万」でオープニング調理長を歴任してきた実力派です。海外担当部長も兼務しており、グローバルな感覚を持ち合わせています。
吉田氏の料理を楽しめるのが「ディナー懐石」(21,780円)です。先付、温物、造り、煮物、合肴、焼物、食事、赤だし、香の物、デザートとフルコースの構成になっており、季節の妙味を味わえます。
先付
最初は石川県の香箱蟹、雌のズワイガニをまるごと用いた一品。香箱蟹の身を取り出して、なめらかなアスパラ豆腐、酸味のある南高梅ゼリーと共に殻に詰めました。上にのせられた球体は外子。旬の香箱蟹を全て味わえる贅沢な一品です。
先付はもう一品あります。カラッと揚げた雲子に、とろっとしたカブの餡を合わせました。花穂紫蘇は見た目も香りも品のあるアクセントです。
前菜
前菜は豪華な八寸仕立てです。生雲丹がのせられたもっちりとした海老芋豆腐、焼き目が食欲をそそる秋鯖焼目寿司、肉汁感のある合鴨ロース煮などバラエティに富んでいました。揚げ銀杏や紅葉によって、季節感も感じられます。
造り
造りは大きな磁器で上品に提供されています。赤身と脂のバランスがよい本鮪、磯の香りが豊かで、コリっとした食感の赤貝、濃厚で口溶け感もある寒鰤。
煮物
黒毛和牛のロースと松茸、蕪を小鍋仕立てに。目の前で熱され、ちょうどいい火入れ加減で食べられるのが嬉しいです。針柚子のフレッシュな香りがよい刺激。
合肴
シグネチャーディッシュは、妖艶な香りを放つトリュフ餡をかけたフォアグラ茶碗蒸し。フォアグラの濃厚さとインカのめざめの甘味がマッチしています。牛のすね肉と鶏ガラからとったこだわりの出汁がベースになっています。
焼物
メインディッシュは熊本赤牛炭火焼と鰆山椒焼。肉料理と魚料理を同時に食べられるという、贅沢な一品です。褐毛和牛の「熊本あかうし」は赤身の旨味をたたえており、食味に優れています。炭火焼で香ばしさもまとっていました。鰆は山椒焼きにして、少しインパクトのある香味に。
食事
食事はズワイガニの釜炊きご飯と香の物、赤だし。新潟のズワイガニをふんだんに用いた炊き込みご飯は、潮の風味がたっぷり。途中からいくら醤油漬けを添えると、味わいも変わって、ますます贅沢に。
デザート
濃密な栗のブリュレに柿と巨峰を添えました。水菓子が口の中をさっぱりとさせてくれます。
日本料理とマリアージュするお酒
シャンパーニュなどのワインや日本酒も充実しています。
「ランソン ブラックラベル ブリュット」(ハーフボトル 2,178円)はハウスシャンパーニュ。ピノ・ノワール50%、シャルドネ35%、ピノ・ムニエ15%と黒ブドウが主体で、フレッシュな酸があるので最初に飲むにはぴったり。
「なだ万 鶴齢 本醸造」(1,089円)は「なだ万」が新潟の青木酒造とコラボレーションした日本酒。ふくよかで米の味わいがしっかりと感じられます。温菜からは、こちらで最後までペアリングできることでしょう。
モダンな日本料理
どれも日本料理らしい目でも楽しめる美しいコースでしたが、吉田氏は次のようにいいます。
「モダンで現代的な日本料理を楽しんでいただきたいですね。旬の食材にこだわっていて、豊洲の他、北海道から九州まで直送で仕入れています」
今はまだ外国人の方は少ないですが、普段であれば半々くらいの割合であるといいます。
「外国人のお客様には特に喜んでいただいています。幅広い年齢層、全てのお客様に楽しんでいただけるようにしたいですね」
今後についても様々なアイデアをもっています。
「たとえば、ビーガンの方に寄り添うようなコースもつくりたいですね。『なだ万』は日本料理をリードする店だと思いますので、時代と共に新しいことにチャレンジしていきたいです。お客様それぞれが希望されるようなオートクチュールのメニューをご提供できるようになれたらと思います」
鉄板焼グリル by なだ万
鉄板焼は、世界でも評価されている黒毛和牛が主役となっているので、人気が高まっています。鉄板焼エリアではカウンター10席、カウンター個室6席、テーブル個室2部屋12席と、全部で28席。
鉄板チーフを務める阿久津義也氏は「横浜なだ万」入社後、「新宿なだ万賓館」で鉄板チーフとして腕をふるいます。そして「新宿なだ万」でも、オープン時から鉄板チーフの重責を担うことになりました。
鉄板焼で体験しておきたいのが「欅」(18,150円)です。先付、一品、焼野菜、海鮮、サラダ、黒毛和牛サーロイン100g(フィレ +2,000円)、白御飯 または ガーリックライス、赤だし、香の物、デザート、コーヒー または 紅茶とボリューム感があります。
甘海老のカクテル
最初の一品はカクテルグラスで提供された甘海老。身はマリネにし、頭は揚げて、丸ごと味わえるようになっていました。アスパラガスとスプラウト、雲丹が合わせられ、彩りも味わいも豊かに。
ローストビーフ 合鴨ロース
しっとりとしたローストビーフと脂がのった合鴨ロース。酸味の利いた野菜のピクルスが添えられていました。
マスのマリネ 軽い燻製
スモークしたサーモンのマリネは、軽い燻製香で食欲をそそります。ドットのソースは2種類で、ハーバルな大葉とバジルのソースとクリーミーなアボカドのソース。キャビアがのせられ、ディルがあしらわれています。
玉ねぎのフラン
鶏の出汁と鰹、昆布をベースにした、コクのあるタマネギのフランです。中にはアクセントになる銀杏があり、上にはとろみをつけたコンソメ。身体が芯から温まるスープです。
焼野菜
焼野菜は常時4種類程度。当日はシルクスイート、ホイール巻きにした白菜、静岡県のブラウンマッシュルーム、熊本県の赤茄子が用意されており、バラエティ豊かでした。炭塩、藻塩、ワサビ。胡麻醤油、タマネギのマリネ、おろしポン酢と、コンディメントも豊富なので、使い分けてみるとよいでしょう。
クエのソテー 蕪のコンソメ仕立て
長崎県からのクエをタラバガニと一緒に、おぼろ昆布で巻きました。クエの佳味とタラバガニの旨味が同時に味わえます。仕上げに聖護院蕪のスープとあおさが注がれ、イクラが載せられました。
黒毛和牛サーロイン フィレ/本日のサラダ
2人以上で利用すれば、サーロインとフィレをシェアすることもできます。左が北海道の黒毛和牛のサーロイン、右が秋田県の黒毛和牛のフィレです。どちらともフランベして香りが付けられています。ともに100グラムで、肉質等級はA4。B.M.S.は7程度で、脂はしっかりと感じられながらも、しつこくありません。
白ご飯 または ガーリックライス/赤だし、香の物
ガーリックライスは、ニンニクと醤油だけというシンプルなスタイル。米で薄いパリパリのおこげをつくるのが特徴です。
ティラミスとフルーツカップ/コーヒー または 紅茶
ティラミスに、イチゴ、ブルーベリー、パイナップルなどのフルーツ盛り合わせ。
鉄板焼にはワイン
鉄板焼にはワインが合わせられることも多いだけに、白ワインと赤ワインも充実しています。
「ドメーヌ ルー・ペール・エ・フィス ブルゴーニュ シャルドネ レ・ミュレル 2020」はフランス・ブルゴーニュ地方の白ワイン。シャルドネ100%で、爽やかでフレッシュ。魚介料理との相性が抜群です。「ドメーヌ ド ロスタル エスティバル 2019」はフランス・ラングドック・ルーション地方の赤ワイン。滑らかなタンニンやしっかりとした果実味が感じられるので、肉の旨味をシンプルに引き出した黒毛和牛の鉄板焼によく合います。
火入れにこだわり
鉄板チーフを務める阿久津氏はこだわりを次のように話します。
「肉の火入れが重要なので、若手には火入れのポイントを丁寧に指導しています。世界的にはミディアム程度の焼き加減が主流ですが、お客様のご希望によって、どんな加減にもご対応していますね」
黒毛和牛は銘柄に固執せず、産地指定で質がよいものを仕入れています。
「日本料理と寿司がありますので、全国の産地から、毎日よい魚介類が入ってきます。肉料理だけではなく、魚料理にも自信がありますので、是非とも味わってください」
今回のコースでも、長崎県から食味に優れたクエを仕入れるなど、魚料理も出色でした。他にもまだこだわりがあります。
「身体を温めていただくためにも、スープはいつも入れていますね。ガーリックライスは卵を入れたりせず、できるだけシンプルにして、さっぱり召し上がれるようにしています」
阿久津氏には今後考えていることがあります。
「新宿という日本の中心地にあるので、ブランド牛のフェアを開催していきたいですね。部位の食べ比べも行って、お客様にもっと楽しんでいただけるようにしたいです」
すし清水 by なだ万
寿司カウンターでは、本格江戸前寿司を楽しめます。10席だけというエクスクルーシブ感のある造りです。
寿司チーフを務めるのは鷹巣豊氏と鈴木愛紀氏。鷹巣氏も鈴木氏も「なだ万高輪プライム」入社後、同店の寿司チーフに就任します。そして「新宿なだ万」開業時に、二人とも寿司チーフに就任しました。
鷹巣氏と鈴木氏の江戸前の握りを存分に体験できるのが「寿司 熊野」(18,150円)。握り14貫、巻物、お椀物という流れで、たっぷりと握りを味わえます。
九絵/中トロ/小肌
長崎県の九絵。コクが深く、味がついているのでそのままでいただきます。中トロは100キロ程度の本鮪で、こなれた食味。噛みしめると口溶けのよい赤身の味わいが広がります。旬となる佐賀県産の小肌。軽やかな酸味で、光り物特有の味わいが引き立ちます。
赤貝/縞鯵/赤海老
走りの赤貝は九州産。刃が細かく入れられていました。神奈川県の縞鯵は、旬よりも脂は少し落ちていますが、冬独特の慎ましやかな風味。おろし生姜と葱を載せて。熊本県産のシュッとした車海老は凝縮した甘味を湛えていました。
鰤/鮪漬け/トロ
北海道産の鰤は、脂がのったトロの部分を炙りました。余計な脂が落ち、心地よい薫香も感じられます。本鮪の漬けは漬け加減のバランスがよく、ねっとりとして旨味たっぷり。柚子も心地よく香ります。本鮪のトロはなめらかな脂。口中で溢れ出す妙味は格別です。
墨烏賊/いくら/雲丹
千葉県産の墨烏賊は細かく刃を入れて、なめらかな触感に。いくらは軍艦巻にしています。プチプチっとして、アクセントのある粒感。北海道産のキタムラサキウニはしっかりとした磯の香味と、豊かな風味があります。
穴子/巻物/玉子焼き
やわらかく、ふっくらとした煮穴子。ツメも甘すぎません。巻物は2種類なので、違いを楽しめます。中落ちと赤貝のヒモキューが半分ずつ。玉子焼きには海老のすり身が加えられ、ふっくらとして優しい甘味。デザート感覚に仕上げました。
寿司に合うお酒
寿司に寄り添うお酒も用意されています。
生ビールで用意されているのが「アサヒ スーパードライ」(1,138円)。すっきりとしていながらも、コクも感じられるので、最初の白身魚には最適なチョイスです。「船中八策 純米」(1,089円)は高知県ならではの辛口で、脂がのった魚との相性も抜群。食中酒として、非常に万能ではないでしょうか。
寿司のこだわり
それぞれの魚介類の特長を引き出した握りでしたが、寿司チーフを務める鈴木氏は次のようにいいます。
「素材には一切妥協はありません。最高のネタを、最もよい状態でお客様にお出しすることに腐心しています」
中でもこだわりのネタはどちらでしょうか。
「生の本鮪にこだわっています。小肌や鯖など、江戸前に力を入れていますね。特に好きなネタは穴子です。産地にこだわっているだけではなく、丁寧に仕事していますので、他とは違うことがわかっていただけるのではないかと思います」
握りのみのコースと、おつまみの入ったコースがありますが、オーダーの割合は半々。オープンしてから1年程度ですが、30回程度のリピートしているゲストもいるということです。
「こちらの『清水』ブランドは『なだ万』の寿司の中でも、フラッグシップだと思っています。『なだ万』の中ではもちろん、他の寿司店にも負けないように、励んでいきたいですね」
統括調理長の吉田氏も寿司に力を入れているので、ネタはどれも利益度外視です。
存在感を高めていく「新宿なだ万」
ハイアット リージェンシー 東京にオープンした「新宿なだ万」。日本料理、鉄板焼、寿司と魅力的なレストランを有しているだけに、どちらに訪れようかと悩むほど。
駅からも近く、贅沢な空間の中に、日本の食を十分に堪能できるレストランが誕生したことは非常に喜ばしいです。これからインバウンドも回復してくるだけに、ホテル内にある「新宿なだ万」は、ますますその存在感を高めていくのではないでしょうか。