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「中国は2028年、アメリカを抜く」――5年早い“世界一”予測にも「ほめ殺しに警戒せよ」

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
環球時報英語版が記事につけた「中国の明るい未来」イラスト=筆者キャプチャー

 中国が2028年、米国を抜いて世界トップの経済規模になる――こんな見通しを英民間調査機関「経済・ビジネス研究センター」(CEBR)が26日発表した。新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)にもかかわらず、当初の見通しより5年早く“世界一”を達成するという見通しだ。ただ当の中国では「ほめ殺しに警戒せよ」との論調のもと、国民に慎重な受け止めを求めている。

◇日本はインドに抜かれ世界4位に

 CEBRが発表したのは、世界193の国・地域を対象に予測した2035年までの経済ランキング。中国の経済規模が2028年に米国を抜き、世界一になると予測している。昨年の報告書では、そのタイミングを「2033年」と予測していたことから、5年前倒しにした、ということになる。

 報告書における中国経済に対する注目度は高く、世界経済における中国のシェアが2000年に3.6%だったのが2020年は17.8%に上昇▽今後15年間で経済規模が3倍以上になる▽2023年までに高所得国になる可能性――などが指摘されている。

 中国は新型コロナ感染が最初に拡大した国だが、早い段階で厳しい規制をかけ、影響を抑え込んだ。これとは対照的に、米国では28日現在、約1882万人の感染が確認され、約33万人が死亡し、経済も大きな打撃を受けている。こうした影響もあり、米中逆転がより早まるという分析となった。

 ただ、中国の人口(約13億9300人)が米国(約3億2820万人)の4.2倍である点を考慮すると、中国が世界最大の経済大国になった後でも、一人当たりに換算すれば、米国を大きく下回るとみられる。

 一方、今後15年間でアジア経済は大きく成長すると予測している。

 インドネシアは2020年の15位から2035年には8位、フィリピンは32位から22位、マレーシアは40位から28位、バングラデシュは41位から25位と予測している。ただ、日本は人口減や輸出減で成長力が弱まり、2030年にはインドに抜かれて世界4位に後退する見通しになっている。

◇「経済規模で米国をはるかに引き離してこそ……」

 中国共産党は11月3日、第14次5カ年計画(2021~2025年)などの草案を公表した。その際、習近平総書記(国家主席)は「2035年までに国内総生産(GDP)と1人当たりの収入を2倍にすることは完全に可能だ」と自信をのぞかせていた。

 CEBRが「8年後には中国が世界一」と発表したのを受け、党機関紙・人民日報系「環球時報」は27日付で「多くの中国人の最初の反応は“ほめ殺し”への警戒だった」と、慎重な見方を示した。

 その理由として、次のような見解を記している。

「中国側からみれば、(西側諸国の研究機関である)CEBRがこんなレポートを出すということは、米国や西側諸国に“中国が頂点にそびえ立とうという動きを加速している”と警鐘を鳴らしているようなものであり、米欧を刺激して“行動”を起こすよう駆り立てている」

 さらに、中国が米国を、インドが日本を追い抜くのを「時代の流れ」――という独自の視点を示しつつも、経済規模が米国の水準に達しただけでは、米中の立場を逆転させられないと指摘。「経済規模で米国をはるかに引き離してこそ、中国を封じ込めようとする米国を圧倒できる。米国とその同盟国の一部に、新しい方法で我々に対処するよう真剣に考えさせることができる」とさらなる努力を促している。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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