コロナ並みの勢いの侵略的外来昆虫、第1弾はキマダラカメムシ
外来のいやな奴と言えば、最悪なのは新型コロナウイルスだが、海外からの侵略的外来生物は昆虫界にも多い。そこで、昆虫記者としては、近年めちゃくちゃ増えてきて、横暴な振る舞いが目立つ外来昆虫軍団をシリーズで紹介しようと思う。
しかし、あまりにも見た目の悪い侵略者を紹介すると、虫アレルギーの人々が「ウギャー」と引いてしまう恐れがある。まずは比較的安全な、結構かわいい系(それでも人によってはウギャーかもしれない)を登場させるのが無難だろう。
侵略的外来昆虫の第1弾として取り上げるのは、キマダラカメムシだ。あの悪臭で有名なカメムシの一種で、かなりの大型種だから、嫌われて当然なのだが、孵化したばかりの幼虫集団が妙にかわいい。カメムシの幼虫としては、外来のくせに日本一かわいいと言ってもいいぐらいだ(在来のカメムシの反撃を期待したい)。
最初の写真がそのキマダラカメムシの幼虫集団だ。卵の殻を囲んで集合しているところがまた、何とも愛らしいと言うか、ウギャーと言うか。
孵化する直前の卵の中の幼虫に至っては、ピカチュウを思い起こさせる、アイドル級のかわいさではないか。
だが、しかし、少し大きくなるとそのかわいい仮面は一気にはげ落ちる。人間でもそういうケースは良くあるが、相手が虫だけに「うわー、不気味」と叫んで殺虫剤を大量に浴びせたくなる人もいるだろう。
カメムシとしてはかなり大きい成虫も、お世辞にもきれいな虫とは言えない。
東南アジアなどが出身地で、日本では江戸時代に長崎の出島で発見されてから、長らく姿を消していたが、150年ほどして長崎で再び発見され、2000年以降本州にも進出。10年ほど前から関東侵略に乗り出し、最近では東京都心のほとんどの公園を支配下に置いてしまった。昆虫記者の家の近くの公園では、クヌギ、ヤナギから、ウメ、ミズキ、ツツジに至るまで様々な木々に生息している。恐らく生命力、繁殖力が半端ではないのだろう。突然現れ、あっという間に拡散していく様も、なんとなく新型コロナに似ていて不気味なのだが、あのかわいい幼虫集団を見かけると「騙されてはいけない」と思いながらも、つい記念写真を撮ってしまう。有用な果実などの被害はあまりないようなので、かわいいから「まあ許してやるか」という気になってしまうのは、巧妙な罠かもしれない。