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トレンド入りした「ビバラバ」に学ぶ、三密を回避した新しいテーマパークの可能性

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)

先週末からはじまったサンリオピューロランドと劇団ノーミーツによるオンライン演劇「VIVA LA VALENTINE」通称「ビバラバ」が、ツイッター上でちょっとした話題になっています。

参考:ショーの裏側を描くピューロランド初オンライン演劇『VIVA LA VALENTINE』

初日であった2月6日にはTwitterトレンドの6位入り

3回目の公演となる2月11日も、東京のTwitterトレンドの1位に入る結果になった模様。

Yahoo! リアルタイム検索のツイート数グラフで見ても、2月6日、7日、11日と公演日ごとに大きくツイート数が跳ね上がっているのが良く分かります。

(出典:Yahoo! リアルタイム検索)
(出典:Yahoo! リアルタイム検索)

筆者自身も、3回目の2月11日に観賞することができたのですが、笑いあり、涙あり、ミュージカルあり、ラップあり、と50分ワンカットの没入感のあるカメラアングルの中につめこまれた様々な要素に、終始心を動かされ続けました。

テーマパークという「場所」の再定義

この「ビバラバ」はサンリオのテーマパークとしてお馴染みのピューロランドと、オンライン演劇の草分けである劇団ノーミーツがタッグを組んだ新しいカタチのオンライン演劇。

参考:サンリオと劇団ノーミーツがひらく、オンライン演劇の新しいカタチ

個人的にも、両社のそれぞれの取り組みをウォッチし続けてきたこともあり、2つの異分野のコラボからどのような新しい演劇が生み出されるのか非常に注目していたのですが。

今回のビバラバは明らかに、緊急事態宣言下だから仕方なく実施された企画ではなく、テーマパークというリアルの場所の可能性を新しく開拓した最初の一歩目と受け止めるべき企画だと感じています。

従来、テーマパークと言えば、朝から夜までお客さんに来場してもらい、会場の魅力を楽しんでもらうというビジネスでした。

そのため、今回のコロナ禍のように三密回避の要請が出てしまうと、ビジネス的には直撃をうけてしまう典型的な業態であるとも言えます。

実際に、あの東京ディズニーリゾートですら、287億円の赤字という過去最悪の決算になっているのが象徴的でしょう。

参考:過去最悪287億円赤字 ディズニー新エリアで回復も

ただ、今回のピューロランドと劇団ノーミーツによるオンライン演劇「ビバラバ」は、その三密回避を求められているテーマパークの、新しい可能性を見せてくれているのです。

オンライン演劇に、リアルのテーマパークが舞台を提供

もともと、劇団ノーミーツは、昨年の緊急事態宣言下に、演劇をやりたくてもできない状況に追い込まれてしまった劇団員の方々が、Zoom上で演劇をするという挑戦をはじめたところから生まれた劇団です。

参考:有料チケットを5000枚以上販売。「劇団ノーミーツ」会わない制約から生まれた新しいエンタメの可能性

第1弾長編の「門外不出モラトリアム」にはじまり、昨年は第3弾まで展開。

Zoom演劇の枠を飛び出してオンライン演劇のカテゴリーを確立しましたが、逆に劇団ノーミーツとして制限として課せられていたのが、演者の方々がパソコンのカメラの前で上半身で演技せざるをえないという構造的課題でした。

それが今回、劇団ノーミーツは、ピューロランドというリアルの舞台を手に入れたことにより、まるで短編映画のように見える「ワンカットのオンライン演劇」を作り上げることができたわけです。

(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)
(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)

しかもビバラバが上演されるのは、ピューロランドの閉園後。

実は、ピューロランドの通常の営業時間や既存の来場客には迷惑をかけない形で企画を実施できることになります。

テーマパークのリアルの会場というのは、従来はリアル会場に来場する顧客のための会場であって、営業時間外は特に使い途がない場所になりがちでしたが。

劇団ノーミーツの手によって、ピューロランドのリアル会場は、閉園後、オンライン演劇を演じるためのステージに変わりました。

(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)
(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)

テーマパークの一つ一つの場所に新たな意味が

しかも、オンライン演劇のステージに変わったのは、ピューロランド内のステージだけでなく、レストランや廊下も含めてピューロランドの全てがステージです。

さらに、オンライン演劇であればピューロランド近郊の方でなくても、全国、全世界から参加することが可能。

実際に見て頂ければ分かりますが、このオンライン演劇を見ると、多くの人は間違いなく「聖地」であるピューロランドに実際にまた行きたくなります。

きっと、このオンライン演劇にはピューロランドに再び来る人を増やす効果もあるでしょうし、オンライン演劇の中のキャラクターや役者の方々の真似をして記念写真を撮る人たちも増えることでしょう。

(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)
(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)

オンライン演劇「ビバラバ」の一つ一つのシーンを通じて、テーマパーク内の様々なスポットや、一つ一つの場所に、新しい意味や魂がこもっていくのを感じることができるのです。

オンラインで生配信ならではの双方向性

さらにオンライン演劇の面白いのは、コメント欄で視聴者同士が横につながりを感じながら視聴できる点です。

今回私は小学生の次男と一緒に視聴したのですが、最初はいやいや見ていた次男も途中から盛り上がるコメント欄に興味津々。

中盤からは私の代わりに大量のコメントを投稿していました。

しかも、今回はコンサートのシーンでペンライトアイコンを投稿できるギミックも実装されており、大量のペンライトアイコンが投稿され、コンサートならではの一体感も味わうことができました。

(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)
(著者撮影:「VIVA LA VALENTINE」)

また、劇団ノーミーツの演目ではお馴染みの、公演ごとの細かいアレンジも充実。

今回のビバラバにおいても、公演日ごとにレストランのテーブルの上のメニューが変わったり、カメラワークが変わったりという生の演劇ならではの小さい違いがあるため、すでに複数回見ているという方もおられたようです。

今後、昼のリアルのピューロランドとは別に、夜のオンラインのピューロランドに何度もリピートするファンが出てきてもおかしくないわけです。

今回のビバラバは、バレンタイン期間向けの企画ですが、こうしたオンライン演劇が、今後コロナ禍に関係なく、ピューロランドで定期的に開催されたり、週末の常設企画になる可能性は十分あるように思います。

「ビバラバ」の上演はバレンタインまで後2回。

是非、みなさんも、ピューロランドと劇団ノーミーツのコラボによる、新しい「オンライン演劇」の誕生を目撃して頂ければと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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