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すぐ近所に「水の惑星」を新発見!惑星の環境や、何が凄いのかを解説【GJ 9827d】

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「97光年彼方の近所に水の惑星を新発見か」というテーマで動画をお送りします。

ドイツのマックス・プランク天体物理学研究所などの研究チームは、地球からうお座の方向に97光年彼方にある「GJ 9827d」という惑星において、大気中の水蒸気を検出した可能性が高いと2024年1月に発表しました。

本動画では、SNSでも大きな話題を呼んでいた今回のニュースについて解説していきます。

●「水の探査」の重要性と成果

「水」という物質は、地球の生命が活動を行う上で必要不可欠な物質です。

よって地球に存在するような生命を地球以外の惑星で探る上で、そこに水が存在するかどうかをまず知ることが重要になってきます。

これまでにも、「水の惑星」を発見した事例がいくつかありますが、最近特に話題となっているのは、地球からしし座の方向に約120光年彼方にある「K2-18b」という惑星です。

2015年に発見されたこの惑星は、その惑星系において液体の水が存在し得る「ハビタブルゾーン」内に位置しています。

実際に2019年には、その大気中に水蒸気が発見されました。

さらにK2-18bは水蒸気が発見されただけでなく、生命の存在を匂わせる物質である「バイオマーカー」が検出されたりと、何かと話題豊富な惑星です。

最近世界的に話題になったこの惑星のバイオマーカーについての新発見と、遥か彼方にある太陽系外惑星の大気組成を調べる方法についても、本題解説後に説明していきます。

●GJ 9827dの探査

K2-18bの時と同様の手法で、今度は地球からうお座の方向に97光年彼方にある「GJ 9827d」という惑星において、大気中の水蒸気が検出された可能性が高いと2024年1月に発表がありました。

主星は「GJ 9827」という恒星で、質量と半径が共に太陽の60%程度、光度は太陽の12%程度です。

2017年にはこの惑星系にて「GJ 9827b」、「GJ 9827c」、「GJ 9827d」の3つの惑星の存在が明らかになりました。

どの惑星も主星からの距離が非常に近く、最も近いbの公転周期は約1.2日、cは約3.6日、水蒸気が検出されたと話題のdも約6.2日と、どれも一年が非常に短くなっています。

これまでも系外惑星で水蒸気が発見された可能性のある事例が幾つかありますが、今回の「GJ 9827d」の発見の特筆すべき点は、直径が地球の約2倍しかなく、水を発見した可能性のある惑星の中で過去最小であるという点です。

まず単純に惑星が小さいほどその大気組成を調べるのが難しいため、この発見から技術や理論の進歩が伺えます。

さらに惑星が一定より小さいと水素がなくなり、金星のように二酸化炭素が支配的で過酷な環境になると考えられています。

今回の発見は、その境目に迫るという観点でも重要な意味を持ちます。

○GJ 9827dの環境

最新の研究ではGJ 9827dの水蒸気は検出できましたが、現時点で水素の信号を検出することはできていないため、この惑星の持つ環境について大きく2つの異なるシナリオが提唱されています。

まず一つ目に、大気中に水蒸気を豊富に含む岩石惑星である可能性があります。

質量のうち岩石と水が半々で存在しており、大量の水蒸気から成る大気の下に岩石の地殻が存在しているそうです。

主星のエネルギーは太陽の12%程度と比較的弱いですが、公転周期がわずか6.2日しかないほど主星から距離が近いため、約400度と金星並みの高温です。

つまりこのシナリオでは、GJ 9827dは水蒸気や海が存在する「水の惑星」であるとはいえ、非常に高温多湿で、地球とは大きく異なる環境を持っていることになります。

このシナリオの場合、惑星は主星から遠く離れた場所で形成され、その後主星の近くを公転するようになったとされます。

最初は大量の水素と氷が存在していましたが、主星に近付くにつれ水素は強烈な放射線の影響で宇宙空間へ逃げていき、氷は蒸発して液体の海や大気中に大量に存在する水蒸気となったと考えられています。

そして二つ目のシナリオとして、非常に豊富な大気を持つ、小型の海王星のような惑星である可能性もあります。

この場合「水の惑星」とは言い難く、一つ目のシナリオよりも地球とかけ離れた環境を持つ惑星となります。

このシナリオの場合、大気中のほとんどが水素であり、水蒸気はわずかしか存在していません。惑星は現在と同様、主星に近い場所で形成されたと考えられます。

現時点では、水蒸気を大量に含む岩石惑星、つまり「水の惑星」である可能性が高いと見られています。

この星系は誕生から60億年が経過していると考えられていますが、その間分厚い水素の大気を保持し続けるのは容易ではないためです。

この惑星は本当に「水の惑星」なのでしょうか?

その正確な真偽は、今後の研究で解明されます。

もしかしたら宇宙で水の惑星は比較的ありふれた存在なのかもしれません。

https://stsci-opo.org/STScI-01HHG127P9PEQYGEXWCJW5164K.pdf
https://astrobiology.com/2024/01/hubble-finds-water-vapour-in-the-atmosphere-of-small-exoplanet-gj-9827d.html
https://hubblesite.org/contents/media/images/2024/007/01HH2QC4NXP7B4PF01M8QZG0GM?news=true
https://science.nasa.gov/missions/hubble/nasas-hubble-finds-water-vapor-in-small-exoplanets-atmosphere/
https://en.wikipedia.org/wiki/GJ_9827
サムネイルCredit: NASA/ESA/Leah Hustak (STScI)/Ralf Crawford (STScI)

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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