オートバイのあれこれ『“パイクカー”ならぬ、“パイクバイク”!?』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『“パイクカー”ならぬ、“パイクバイク”!?』をテーマにお話ししようと思います。
バブル景気に沸いた80年代、日本ではパイクカーと呼ばれるクルマが流行しました。
代表的なのが、日産『Be-1』『パオ』等ですね。
これらのクルマはレトロなデザインが特徴的だったわけですが、オートバイの分野でも、これらパイクカーと同じような雰囲気をもったモデルがありました。
スズキが1992年(平成4年)にリリースした『SW-1』です。
文章での説明より先に画像を見てもらったほうが、その雰囲気がすぐに伝わるでしょう。
とても個性的なデザインで、またパイクカーとも通ずる香りをどこか感じないでしょうか。
もし共通の匂いを感じられているとしたら、その感覚は当たりです。
というのも、実はこのSW-1のデザインは、Be-1やパオを手がけたコンセプター・坂井直樹氏によるものだからです。
坂井氏は80年代末、日産のクルマのデザインも担当しつつ、このSW-1の開発にも参画していました。
SW-1をデザインするうえで掲げられたコンセプトが、「ヒューマン・ウェア」。
つまり「バイクとしてのバイク」ではなく、「ファッションアイテムとしてのバイク」ということです。
Be-1やパオもファッション性を前面に押し出したスタイルでしたが、坂井氏はその発想をSW-1にも採り入れたということですね。
SW-1が企画された80年代後半のバイク市場はレーサーレプリカブームで、各メーカーは主にエンジンスペックといった部分へ開発資金を投入していたわけですが、スズキはSW-1の開発において運動性能向上にはリソースをほとんど割かず、坂井氏のコンセプトを反映したスタイリングデザインの構築にひたすら力を注ぎました。
完成したSW-1は見事に坂井氏のコンセプトが活きた姿となりましたが、価格が68万8,000円と当時の250ccモデルにしてはかなり高く、またバブル経済が崩壊した背景もあって、SW-1は売れ行き不調のまま2年ほどで生産終了となってしまいました。
SW-1は現役時代には人気を得られなかったものの、当時よりも価値観が多様化した今、電動バイクなどにこのスタイルを再現すれば、そこそこ売れそうな気がします。