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【オートバイのあれこれ】風を切って軽快。「ザッパー」Z。

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「風を切って軽快。“ザッパー”Z。」をテーマにお話ししようと思います。

1972年(昭和47年)に『900SUPER4』(Z1)をリリースし、世界のビッグバイク市場を席巻したカワサキ。

▲空冷Zの祖・Z1。アメリカで“特大ステーキ”を指す「ニューヨーク・ステーキ」の愛称が与えられた
▲空冷Zの祖・Z1。アメリカで“特大ステーキ”を指す「ニューヨーク・ステーキ」の愛称が与えられた

最大のライバルだったホンダ『CB750FOUR』にも遜色ない人気ぶりを見せたZ1は、瞬く間にカワサキを代表する存在となります。

Z1の魅力はやはり、当時の日本車において最大排気量となる900cc級のエンジンを携え、そこから解き放たれる82psのパワーと200km/hオーバーのトップスピードを味わうことができるところでした。

「オートバイはデカくて速くてナンボ!」という当時のバイクファンたちの思いに沿った作り方を、カワサキはZ1の開発において実行したわけですね。

これは言い換えると、「排気量を上げて、パワーを大きくして…」という“足し算”の考え方でZ1は作られたということ。

▲Z1では、既存のあらゆるスポーツバイクを凌駕するために900ccのDOHCエンジンとされた
▲Z1では、既存のあらゆるスポーツバイクを凌駕するために900ccのDOHCエンジンとされた

しかし一方、カワサキ社内には、その発想とは真逆をいく“引き算”の考え方に基づくバイク作りの構想もありました。

具体的には「車体をなるべく軽く&コンパクトにして勝負する」というアイデアです。

そしてこのアイデアをベースに生み出されたのが、’76年(昭和51年)登場の「ザッパー」こと『Z650』でした。

▲Z1のような“豪快さ”ではなく、“軽快さ”をコンセプトに開発
▲Z1のような“豪快さ”ではなく、“軽快さ”をコンセプトに開発


車名から分かるとおり、排気量は650cc。

900ccはおろか、定番(日本の規制上限)の750ccですらなく、当時の“大排気量至上主義”からすると全く的外れな設定とされていました。

しかし、これは先述の引き算思想に基づく数字で、カワサキは積極的にエンジンサイズを抑制したことにより、DOHC4気筒というZのフォーマットを維持しながら、Z2系の750ccエンジンから約20kgもエンジン重量を削ることに成功

▲エンジン形式を変えることなく、重量をZ1/Z2系のものから大幅に削減!
▲エンジン形式を変えることなく、重量をZ1/Z2系のものから大幅に削減!

排気量縮小にともなうパワーダウンを惜しむことなく、ひたすら軽量コンパクトに傾注した結果、この大幅なダイエットを成し遂げたのです。

(ただ、「パワーダウンを惜しむ」とはいってもZ650のエンジンは最高出力64ps&最大トルク5.8kg-mを発揮していて、同年代の『Z750FOUR』と比べると馬力はマイナス6ps、トルクにいたっては0.1kg-m、Z650のほうが上回っていました)


このエンジンだけで、カワサキの引き算思想を理解できるのではないでしょうか。

▲北米向けのZ650C(KZ650Custom)
▲北米向けのZ650C(KZ650Custom)

また、Z650は言わずもがな車格もコンパクト。

ホイールベースを例に挙げると、Z650のそれは1,420mmと、初期型のZ1と比べ70mmも短くなっていました。

ホイールベースの短さは、俊敏なハンドリングを得るための大きな要素となります。

このように、あらゆる部分が小さくまとめられたZ650は、Z1のように“パワーで押す”速さではなく、軽快なフットワークを活かした機動力で速さを得ていたのでした。

まさしく“zapper”、すなわち、軽いハンドリングで風を“zap, zap”(「ヒラリ、ヒラリ」)と切って走るバイクだったのですね。

まだライトウェイトスポーツの魅力が受け入れられず、当時はあまり注目されなかったZ650ですが、ダウンサイジングが主流の現代にタイムスリップしてきたなら、きっと当時以上に人気を集められることでしょう(もっとも現在は、末裔的存在の『Z650RS』がありますけどね)。

▲当時のカタログ
▲当時のカタログ


画像引用元:カワサキモータースジャパン

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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