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物価対策5万円給付、財源9000億円のうち6500億円超が年金受給世帯にばらまかれる現実

島澤諭関東学院大学経済学部教授
イラストはイメージ(提供:イメージマート)

政府は9日に開催される「物価・賃金・生活総合対策本部」で、住民税非課税世帯に対して1世帯当たり5万円の給付を決定する見通しです。

住民税非課税世帯のうち72.5%が65歳以上の高齢世帯であることはすでにこの記事「住民税非課税世帯とは誰なのか?-物価対策の5万円給付は高齢世帯へのバラマキ-」で指摘しました。

総務省自治行政局住民制度課「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数のポイント(令和4年1月1日現在)」によれば、外国人世帯を含む総世帯数は5976万1065世帯。このうち、約1600万世帯が対象になるとされています。

この結果、物価対策5万円給付には、9000億円程度の財源が必要とのことです。

住民税非課税世帯に5万円給付で調整…政府、物価高騰受け追加対策(読売新聞、2022/09/07 07:45)

以上から、住民税非課税世帯が約1600万世帯で、そのうち72.5%が65歳以上の高齢世帯であることを勘案すれば、9000億円×0.725=6525億円を高齢世帯が受け取ることになります。

所得控除が、給与所得者(55万円)と年金受給者(110万円)という格差を放置したままでは、なぜか年金という安定した収入がある年金受給者の方が、多くは非正規でいつ仕事が打ち切られるか分からない若い給与所得者よりも、より多くの年金収入があるにもかかわらず生活が苦しいとみなされる確率が高くなってしまいます。

これは困窮者対策という物価対策の趣旨に鑑みるととてもおかしなことに思えますが、いかがでしょうか?

しかも、こうした指摘は特に新型コロナ禍で「生活に困っている人」への給付金が打ち出されるたびにありました。

結局、頭数が多く投票にも行ってくれる高齢者への体のいいバラマキになっていないか、どうしたら本当に困っている人への給付になるのか、財政が厳しい折でもあり、政府にはよく検証してもらいたいものです。

関東学院大学経済学部教授

富山県魚津市生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁(現内閣府)、秋田大学准教授等を経て現在に至る。日本の経済・財政、世代間格差、シルバー・デモクラシー、人口動態に関する分析が専門。新聞・テレビ・雑誌・ネットなど各種メディアへの取材協力多数。Pokémon WCS2010 Akita Champion。著書に『教養としての財政問題』(ウェッジ)、『若者は、日本を脱出するしかないのか?』(ビジネス教育出版社)、『年金「最終警告」』(講談社現代新書)、『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞出版社)、『孫は祖父より1億円損をする』(朝日新聞出版社)。記事の内容等は全て個人の見解です。

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