「103万円の壁」引き上げの財源7.6兆円はどこから?
「103万円の壁」を178万円にまで引き上げる国民民主党の公約をそのまま実現するためには7.6兆円の減収効果が見込まれるとのことです。
7.6兆円は消費税率に換算しますと3%分に相当します。国民民主党の玉木雄一郎代表は「取られ過ぎた税を返すだけ」との立場です。
減税となれば、手元に残るお金が増える訳ですから、消費に回る金額も増えます。こうしたお金が日本経済に回りまわって経済が活性化し、税収も増加することになるでしょう。
もし、こうした減税による経済活性化効果によって、減税額7.6兆円を税の増収で回収できれば財源は必要となりません。
では、減税による税の自然増収で財政赤字は埋まるのでしょうか?
そこで、内閣府経済社会総合研究所「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)の構造と乗数分析」により、所得税減税が財政に与える影響を確認してみます。
いま、「103万円の壁」を178万円に引き上げた場合、内閣府のマクロ計量モデルの乗数を用いた機械的な試算によれば、減税額7.6兆円、名目GDP607.6兆円とすれば、マクロ経済に与えるインパクトは1.25%となるので、1年目の実質経済成長率は0.26%上昇することになりますが、財政赤字対名目GDP比は-1.20ポイント拡大します。つまり、減税で経済が成長しても財政赤字は悪化することになります。
まとめると、税の自然増収では「103万円の壁」の引き上げに係る7.6兆円の財源を回収することはできませんから、見合いの歳出削減か、その他の税を増税するか、(内閣府のシミュレーションのような)赤字国債発行でツケを子や孫に先送りするかをはっきりさせる必要があると思います。