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台風1号が強い勢力で小笠原近海へ 台風2号との藤原の効果で難しくなった進路予想

饒村曜気象予報士
台風1号の雲(右)と台風2号の雲(左)(4月10日15時)

藤原の効果

 令和4年(2022年)4月8日9時にカロリン諸島で台風1号が発生したのに続き、10日9時にはフィリピンの東海上で台風2号が発生しました(タイトル画像参照)。

 台風1号は北西進し、フィリピンの東海上を発達しながら北上し、ほとんど停滞している台風2号との距離が短くなり、藤原の効果と呼ばれる相互作用の可能性がでました(図1)。

図1 台風1号・2号の進路予報と海面水温(4月11日3時)
図1 台風1号・2号の進路予報と海面水温(4月11日3時)

 台風に関する情報は、最新のものをお使いください

 2つの渦の相互作用についての研究は、明治20年代の北尾次郎の理論研究から始まっているとされていますが、これを岡田武松が発展させ、大正10年には藤原咲平が一般性を持った法則にまで拡大させています。

 のちに岡田武松は中央気象台長(現在の気象庁長官)となり、昭和16年の夏に、藤原咲平が岡田武松のあとを継いで中央気象台長になっています。

 しかし、台風の動きに関して、“藤原の効果”が言われだしたのは、戦後、米軍の飛行機観測によって台風の位置をかなり正確に求めることができるようになってからです。

 藤原の効果には、いくつかのパターンがありますが、今回は、相寄り型か指向型になるのではないかと思います(図2)。

図2 2つの台風が並んだときの動き
図2 2つの台風が並んだときの動き

1 相寄り型:一方の台風が極めて弱い場合、弱い台風は強い台風にまきこまれ急速に衰弱し、一つに融合する。

2 指向型:一方の台風の循環流が指向流と重なって、他の台風の動きを支配して自らは衰弱する。

 いずれにしても、藤原の効果がおきると、台風の進路が複雑となり、予報が難しくなります。

小笠原近海へ

 台風1号は、4月11日21時には中心気圧975ヘクトパスカルの強い台風に発達し、13日3時には中心気圧950ヘクトパスカルの非常に強い台風に発達する見込みです。

 台風が発達する目安とされている海面水温27度は、北緯30度付近ですので、日本近海へは少し衰えて、といっても強い勢力で北上してきます。

 このため、小笠原諸島では、4月15日の夕方と夜のはじめ頃の暴風域に入る確率が25パーセントに上がっています(図3)。

図3 暴風域に入る確率(上は八丈島、下は小笠原諸島)
図3 暴風域に入る確率(上は八丈島、下は小笠原諸島)

 台風の北上と共に、この確率はあがってくると思われます。

 また、台風が小笠原諸島に北上してくるころ、本州には前線により雨が降る見込みです(図4)。

図4 雨量分布予想図(4月15日夜)
図4 雨量分布予想図(4月15日夜)

 このため、台風の位置によっては、前線が刺激され、大雨になる可能性がありますので、台風から離れていても注意が必要となります。

 今後の台風情報に注意してください。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜(昭和61年(1986年))、台風物語、日本気象協会。

図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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