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歯舞が読めない大臣と違い、監督は自分のチームのスーパースターを呼び間違えても大丈夫

宇根夏樹ベースボール・ライター
ダスティ・ベイカー OCTOBER 11, 2012(写真:ロイター/アフロ)

2月24日、ワシントン・ポスト紙のチェルシー・ジェーンズがこうツイートした。ジェーンズはワシントン・ナショナルズを取材している。

「ところで、ダスティ・ベイカーブライス・ハーパーについて語る時に誤ってロイスと呼び続けている。これまでに2度」

ベイカーは昨年11月にナショナルズの監督に就任したばかりだが、ハーパーのことを知らないはずはあるまい。ハーパーの名前は、2010年にドラフト全体1位でナショナルズに入団する前から知れ渡っており、昨シーズンはナ・リーグMVPを受賞した。

ただ、歯舞が読めなかった沖縄北方担当相や「環境の日」を間違えた環境相とは違い、こちらは笑い話で済むレベルだ。

取材を受けた時、ベイカーがラリっていたわけでもないだろう。ベイカーは監督就任の直後に出版した著書「キス・ザ・スカイ」において、ミュージシャンのジミ・ヘンドリックスと大麻を吸った経験を明かしているが、これは約半世紀も昔のことだ。

また、ベイカーはかつて監督を務めていた当時、先発投手に長く投げさせすぎて故障させたと批判されたが、これも心配には及ばない。確かに、1999~2006年(サンフランシスコ・ジャイアンツの監督7年目以降とシカゴ・カブスの監督時代)に、ベイカーは平均20.5試合で先発投手に120球以上を投げさせた。これは同じスパンのリーグ平均の倍以上だ。けれども、シンシナティ・レッズで指揮を執った2008~13年は、平均4試合に過ぎなかった。カブスではマーク・プライアーケリー・ウッドが相次いで故障したとはいえ、ベイカーの起用法との相関関係は定かではない。

加えて、ナショナルズは投手コーチに、昨シーズンまでテキサス・レンジャーズで同職にあったマイク・マダックスを迎え入れている。弟のグレッグのような大投手にはなれなかったものの、マイクは名伯楽として知られている。

ベイカーの66歳という年齢も、決して若いとは言えないが、懸念には当たらない。昨年、ニューヨーク・メッツをワールドシリーズに導いたテリー・コリンズ監督は、ベイカーより約半月早く生まれている。

ハーパーのアクの強さを考えれば、むしろ、ベイカーはふさわしい監督かもしれない。バリー・ボンズ(現マイアミ・マーリンズ打撃コーチ)がメジャーリーグでプレーした22年間のうち10年間は、そのチームの監督としてベイカーが采配を揮っていた。

ナショナルズにはハーパーだけでなく、ジョナサン・パペルボンもいる。昨年9月、パペルボンとハーパーの2人は、試合中にダグアウトで掴み合いを演じた。

ジャイアンツで3番と4番を打っていたボンズとジェフ・ケントがダグアウトで激しくやり合ったのは、2002年のことだ。この年、ベイカーが率いるジャイアンツは、リーグ優勝を果たした。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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