政府・大阪カジノ認定も「世界最高水準の依存対策」への誤解
ということで、本日朝に政府・IR推進本部が開催され、大阪のIR整備計画の認定を了承したことが報じられました。以下、MBSニュースからの転載。
【速報】岸田総理 大阪のIR整備計画を「認定」と表明 IR推進本部 全国初
https://news.yahoo.co.jp/articles/c9cf918c7be9e31c8107a4b71532158d542388db
本件に関しては、他のメディアも報道していましたが、私がざっと見た限りにおいてこのMBSが最も正確に報道をしているのかなと思いました。我が国のカジノを合法とするIR整備法において、IR整備計画の認定は国土交通大臣が行うことになっており、IR推進本部に認定権限はありません。なので、上記MBSが報じている「認定と表明」くらいまでがギリギリ正しい報道であり、他の報道機関は多くが「推進本部が認定」としているのは間違いです。
なにはともあれ、我が国初のIR整備が大阪に認定されるわけですが、実はツイッター上では昨晩からカジノ反対派の日本共産党さんがとても荒ぶっておりまして。。以下は、大阪を地盤とする共産党の前・衆議院議員である清水ただしさんと私のやりとり。
私としては、大阪選出の前・共産党議員としてカジノ反対論の最前線で常に論客として戦ってきた清水ただしさんですら、日本のカジノの入場回数制限の意味を正確に理解していないのかと、愕然としたわけです。
我が国のIR整備法は、内国人のカジノ入場に際してマイナンバーカードの提示を義務づけ、システム的に入場回数を把握し、週3回、月10回のカジノ入場上限を設けることをカジノ事業者に求めています。但し、このこの週3、月10という数字そのものは、あくまで「観光の振興」というIR整備法のカジノ合法化の趣旨に則り「この回数を超えると流石に観光とは言えない」という閾値を定めたものであって、清水ただしさんが仰るような「依存対策として効果がある/ない」の観点で定められたものではありません。
寧ろ、この制度の依存対策としての本質は、個別具体的な回数そのものではなく、日本の法律が内国人に対してカジノ入場の上限を定め、それをマイナカードで管理している事自体にある。ギャンブルに依存している人は必ずどこかでこの回数上限に頭を打ちますから、「もはや観光とは言えない」施設利用をする入場客を早期認知し、単純に制度の不理解から上限を打ったのか、それともギャンブルに対して何らかの問題を抱えているのかを判断し、必要とあればそこから依存対策プログラムに誘導をする。
ギャンブル依存のみならず、多くの社会問題はアウトリーチ(問題を抱えている人を発見し支援を届けるまでのプロセス)が大きな課題の一つとなりますが、我が国のIR整備法は問題を抱えている人を施設側でスクリーニングし、そこに必要な支援を届けるアウトリーチの手法までもを法律上で定めている。諸外国のカジノ産業はおろか国内の既存ギャンブル産業も含め、この様な制度を持っている国や業は日本のカジノ産業以外にはありません。そういう意味で、私たちは我が国のIR整備法が「世界最高水準の依存対策」を提供していると表現しているワケです。
この様な説明を行ったところ、(皮肉交じりではありますが)清水ただしさんにも制度の仕組み自体はご理解頂けたようで、以下の様なコメントを賜ることができました。
この様に、カジノ反対派には制度趣旨を正しく理解しないままカジノ批判を展開している人が多数存在することは残念なことではあるわけですが、これに関しては単純に彼らが悪いというワケでもない部分もありまして。実は、我が国のカジノ推進派の議員は元より、国会でカジノ反対派による上記の様な主張に対して答弁する側にいる役人も含めて、上記の様な正しい制度趣旨を理解し、それを明確に説明してきた人間が殆どいないのです。要は推進派は推進派で「回数上限があるから依存対策なのだ、世界最高水準なのだ」と正しいとは言えない主張をアチコチで繰り返しているわけで、そりゃあ反対派は勘違いするわな、と。
我々の様な専門家の仕事は、こういう適当な言説を(推進派の言説も含めて)度ごとにコツコツと修正してゆくことなんだなあ、と改めて感じた次第です。なにはともあれ大阪のIR認定、おめでとうゴザイマス。