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レアルの「右の三角形」とカマヴィンガの左SB...アンチェロッティ・マドリーの戦術的欠陥とは?

森田泰史スポーツライター
ボールをキープするカマヴィンガ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

好スタートを切った。だが安定した戦いを見せられているわけではない。

今季、レアル・マドリーはリーガエスパニョーラで開幕から5勝2分け1敗で首位を走っている。しかし、チャンピオンズリーグではグループステージ初戦でインテルを下しながら、第2節で初出場のシェリフに敗れた。

最初のクライシスに遭遇したアンチェロッティ・マドリー。まず、「躓きはじめ」となった2試合を分析したい。

■守備陣の人材不足

ラ・リーガ第7節ビジャレアル戦で、気になったのはマドリーの右の三角形である。フェデリコ・バルベルデ(右サイドバック)、マルコ・アセンシオ(右インサイドハーフ)、ロドリゴ・ゴエス(右ウィング)の3選手だ。

守備陣が人材不足に陥っているマドリーで、カルロ・アンチェロッティ監督は選手起用に頭を悩ませている。ビジャレアル戦においては、バルベルデを右サイドバックに据えた。

(マドリーの右の三角形)

この布陣を見た時、ひとつ、期待したことがある。それはアンチェロッティ・マドリーが、可変の3バックを導入するのではないか、だ。

(マドリーの4バックと可変3バック)

私は、大いに期待していた。シーズン序盤に、アセンシオをインサイドハーフにコンバートして、可変のシステムを自在に操る…。チャンピオンズリーグ制覇も夢ではないと、一瞬、思わされた。

ビジャレアルとマドリーの一戦
ビジャレアルとマドリーの一戦写真:ムツ・カワモリ/アフロ

しかし、それは幻想だった。本来であれば、バルベルデが右で高い位置を取り、ロドリゴがハーフスペースに入り、アセンシオが中央のトップ下にいくべきだ。起用法で欲を言えば、この考えならば右ウィングにロドリゴではなくアザールを据えたいところだ。ただ、いずれにせよ、バルベルデを上げての可変3バックシステムは悪くない。守備の人材不足を解消するために、ひとつの解決策になるはずだった。

アザール込みの可変3バックを仮想
アザール込みの可変3バックを仮想

だが蓋を開けてみれば、マドリーは4バックでビジャレアルに挑んでいた。これはウナイ・エメリ監督としては、「してやったり」だっただろう。

今季のビジャレアルは【4−3−3】と可変式【4−4−2】をベースに戦っている。肝になるのはカンテラーノのジェレミー・ピノで、彼がウィングとサイドハーフを兼任して、チームのバランスを整えている。

(ビジャレアルの可変システム)

マドリーの歪な【4−3−3】は、エメリ・ビジャレアルに悉(ことごと)く捕まった。

攻撃面では、ビルドアップで蓋をされた。バルベルデ、ナチョ・フェルナンデスは共に球出しが得意な選手ではない。そこを【4−3−3】時のビジャレアルの両ウィングであるピノとダンジュマが塞ぐ。

そして、中盤では、ビジャレアルの可変式【4−4−2】が効いていた。ミドルゾーンで「3vs4」になり、マドリーは苦しくなった。

「後退ではない。我々はラ・リーガで首位の座を守っており、そういった意味では前進だと言える。悲しみを感じてはいないよ。チームは全力でトライして、戦った。簡単なゲームにはならないと思っていた」とはアンチェロッティ監督のビジャレアル戦後の言葉だ。このゲームに関しては、エメリがアンチェロッティを上回っていた。

(全2564文字)

■チャンピオンズリーグの舞台で

続いて、シェリフ戦だ。

シュートを打つアザール
シュートを打つアザール写真:ムツ・カワモリ/アフロ

アンチェロッティ監督は、【4−4−2】の布陣で臨む決断を下した。アザールを生かすためには、これがベストのシステムだとアンチェロッティ監督は考えているようだ。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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