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PTAで「入会意思の確認」を実現する方法 強制加入をやめるため“一般会員”にできることは?

大塚玲子ライター
何がネックになっているのでしょうか(ペイレスイメージズ/アフロ)

新学期が始まりました。加入届を配るPTAも徐々に増えてはいるようですが、残念ながら今年度もまだ、加入意思の確認がないPTAが多いようです。

これまでも指摘してきたとおり、加入の同意をとらずに保護者を会員とするやり方は、PTAの最大の問題点のひとつです。強制加入のままでは、みんななかなか楽しく活動はできませんし、また「同意なく会費を徴収する」という行為自体、普通に問題です。さらに個人情報の管理という面でも問題があります。

学校に備品を寄付するにせよ、活動時のお茶菓子を買うにせよ、正式な同意なく集めたお金を使うのは後ろめたいことです。なんとかしたいと思っている人は多いと思うのですが、では実際のところ、どうすればいいのでしょうか?

先日の記事で書いたように、PTAを「やめる」ことで加入届配布を促すやり方や、「会長(本部役員)になって、やり方を改める」という方法もありますが、そのどちらでもなく、「一般会員」という立場のままで、PTAの加入意思確認を実現する方法は、あるのでしょうか?

筆者も現在進行形でトライしている最中なのですが、以下、考えられる方法を紹介していきたいと思います。

*「PTA総会」「会長」「校長先生」「自治体」という4ルート

ざっと考えられるのは、以下の4つの方法です。

  1. PTA総会で言う
  2. PTA会長さんにお話する
  3. 校長先生にお話する
  4. 自治体(教育委員会・P連)に意見する

まず考えられるのは、1番の「PTA総会で発言する」という方法でしょう。実際のところ、一般会員がPTAの運営についてオープンに意見できる場は、総会以外にありません。PTA総会は、大体どこのPTAでも年度初め(4月中旬~5月上旬)に行われます。

ただし、成功率は微妙です。総会で発言して「翌年度から入会届が配られるようになった」という例もあるにはありますが、「会場がシーンとしただけで何も変わらなかった」という話も聞きます(筆者も経験)。同様の挑戦をした友人が「勇気がいるわりに、実入りが少ない」と言いましたが、筆者もうなずくところです。

おそらく、役員さんたちも戸惑ってしまうのでしょう。加入届を配って同意をとるとなると、集金方法や規約などの見直しも必要になりますし、非加入者の扱いなど付随して対応を考えるべきことがいろいろと出てきます。それらをどうしていいかわからないから、ついスルーしてしまうのかもしれません。

また役員さんたちは、校長先生の意向を忖度して返事がしづらい、という面もあるように感じます。

そういったことを考えると、総会で発言する前に、2・3番の「PTA会長さん・校長先生にお話する」をしておくのもいいかもしれません。

じつは、1~3のなかで最も成功率が高いのは、3番の「校長先生にお話する」という方法です。「校長先生に話したら加入届が実現した」という話は、実際よく聞く話です。

しかし、これも100%ではありません。なかには校長先生が「加入届を配ろう」と言っても、役員さんの反対で実現しないケースもあるので、とりあえず1・2・3を、併行でやってみるのがいいかもしれません。

さらに言うと、役員さんや校長先生は、近隣のPTAの動向を気にする場合もあります。なので、4番の「自治体(教育委員会やP連)に伝える」も同時にやっておくとよいかもしれません。「上から言われるほうが動きやすい」という声もあります。

*責めない・要点を絞って伝える

なお、これらを実行する際には、以下のような点に気をつけていただけるとよいかと思います。

  • 誰かを責めない

同意なく加入させる現状のやり方に腹が立っていたとしても、役員さんや学校を責めないでもらえたら、と思います。役員さんたちも悪意があって強制加入にしているわけではないので、責めてもおそらく解決しません。

なお、説明をしてもまるで話が通じないPTAの場合、総会発言では変わらない可能性が高いので、最初から別の方法(2・3・4等)を考えたほうがいいように思います。

  • 要点を準備する

新学期は会長さんも校長先生も忙しい時期なので、できるだけ要点をまとめて話をしてもらえるといいかと思います。手紙を用意するのもおすすめです。

教育委員会やP連に連絡する際は、自治体のホームページにある意見投書フォームを使うのもいいでしょう。他部署にも問題を共有してもらえる可能性があります。

*加入意思確認不在の問題点をどう伝えるか

では具体的に、どんな内容を伝えればいいのでしょうか? 決まっているわけではありませんが、ご参考まで、筆者が作成した総会発言文案を以下に掲載しておきます。

いつも役員の皆様のご活動に、深く感謝しております。

一点、意見を言わせていただきます。PTAの加入方法についてです。現状このPTAでは、ほかの多くのPTAと同様、子供が入学すると自動的に、保護者が会員になる形ですが、これを法令を遵守する形に改め、加入意思を確認のうえ会員とする形に修正していただくよう、お願いいたします。

新入生保護者には、PTAが任意で加入する団体である旨の説明を一言添え、加入意思を確認するための「入会届(確認書)」を配布・回収し、また在校生の保護者や、教職員の方たちにも、加入継続意思の確認書を配っていただきたいと思います。

加入の意思を確認せずに会費を集めてしまうと、学校とPTAが別の団体と知らず、あるいはPTAが任意加入であることを知らずにお金を払う人が出てきてしまい、もし後で「詐欺」といわれた場合には、否定しきれないところがあります。

もしそれで裁判が起きた場合、PTAが勝てる見込みは、ほとんどありません。実際に熊本で、ある保護者が「PTAが任意加入なのに知らされず自動的に入会させられたので、払った会費を返してほしい」と裁判を起こしましたが、最終的には「PTAが任意加入であることを知らせる」という条件で、和解となりました。

また、現在は学校の名簿がPTAの名簿として使われていますが、学校とPTAは別の団体であり、名簿の流用は法令に違反します。学校は市の個人情報保護条例に違反しており、PTA側も、個人情報保護法に違反してしまいます(PTAに個人情報保護法が適用される5/30以降)。

法令上の義務を負う以上、PTAも独自に個人情報を集めなければなりませんので、やはり入会届・加入継続確認書を、配布する必要があるはずです。

「PTAはこれまでずっと自動加入でやってきたんだし、よそのPTAもそうなんだから、このままでいいじゃないか」と思う方もいるかもしれませんが、「だから、法律に違反してもいいんだ」とは言えないのではないでしょうか。

非加入者への対応、集金方法など、付随して修正するべき点も出てくると思いますが、これらについては必要があれば情報を提供できますので、お声かけください。

(※ 以下のような記事をプリントして役員さんに渡すのもよいかと思います *「訴訟も起きている『PTAに入っていないと子どもに卒業祝い品をあげない』は許されるのか」「誤解が多いPTA活動中の保険『非会員の子どもは対象外』『P連を抜けると契約不可』は本当か?」

以上、お忙しいところおそれいりますが、ご検討のうえ、今後の方針について(○日までに)お知らせいただければ幸いです。

要約すると、「加入の同意なくお金を集めたら詐欺」だし、「学校は現在すでに個人情報保護条例に違反しているし、PTAも5/30以降、個人情報保護法に違反してしまう」という内容です。

先ほども書いたとおり、筆者もいまトライ中で、この方法で加入意思確認が実現するかまだわからないのですが、興味がある方は参考にしていただけたらと思います。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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