校長やPTAが「校庭の木の手入れ」するのは当たり前? 予算の大半をあてるPTAも
先日、鹿児島県の小学校で校庭の草刈りをしていた校長先生が、木の枝の下敷きになって亡くなるという悲しい事故がありました。自然落下が原因だったようですが、そもそも先生が草刈りをすること自体を疑問視する声があがっています。
教育研究家の妹尾昌俊さんは、ツイッターで「校長や教頭が草刈りや剪定をしている学校は少なくありません。やはり学校にちゃんと予算をかけないといけないと思います」とコメント。賛同の声が複数寄せられていました。
校庭の樹木の手入れ問題は、PTAでもわりあいよく問題になります。樹木の剪定などの作業をPTAや保護者が担っている学校や、PTAの予算で業者を頼んでいる学校がときどきあるからです。
先日取材した小学校のPTA会長は「PTA予算の最大の支出が、学校の樹木の手入れの費用だ」と話していました。木の剪定や、切った枝葉の処分等を業者に頼むのに、毎年何十万円もかかっており、保護者が無償で作業を行うことも多いといいます。
なぜそんなに樹木が生えているのかというと、「地域」には植木好きなおじいちゃんが多く、学校の敷地内にどんどん木を植えてしまうのだとか。たまに彼らが整備をしてくれることもあるものの、切った木や枝は切りっぱなしなので、PTAが業者に頼んで後処理せざるを得ません。
PTAの判断で伐採しようとすると、「この木はダメだ」と止められることもあるそうで、会長は困惑していました。
保護者たちからは「お金は出すから、全て業者にやってもらってほしい」という声がよくあがるものの、役員さんたちは「本来は公費でまかなうべき費用を、PTA会費を値上げしてまで負担するべきか」と頭を悩ませているといいます。
学校には、何年も前から「公費をつけてほしい」と頼んでいますが、一向に状況が変わらないため、今後は別の働きかけを検討しているとのこと。
樹木だけではありません。たまに、校庭を芝生にしている学校がありますが、この場合もよく、手入れの負担が問題になります。
校庭が芝生だと子どもたちが転んでも怪我をしにくく、見た目もよいのですが、芝がすぐ伸びるため頻繁な手入れが必要となります。そこで大抵、校長や教頭先生、PTAの役員さんなどが、たびたび芝刈りをすることになるのです。
植樹や芝生を入れる際は、あとの手入れまで考えて
校庭の草木の手入れのコストは、誰が負担するべきなのか。稀に、教育振興費などの名目で保護者全員から徴収する学校もありますが、これもどうでしょう。PTA会費として集めるよりはマシな気もしますが、私費負担には変わりありません。
教育行政学者の福嶋尚子さん(千葉工業大学准教授)は、「地方財政法4条の5で禁止される“割当的寄附金”に当たるはず」と指摘します。
「樹木の剪定費用や、学校図書館の蔵書、部活動に使う物品の購入費用、紙代など、本来は公費をあてるべき費用を『教育振興費』などとして保護者から一律に集める手法は、公費配当が少ない自治体の学校でよく見られます。
自治体が保護者に転嫁させてはならない費用(地方財政法27条の4)には該当しないものの、法禁された“割当的寄付金”に当たり、学校財務上の違法性が問われます」
やはり、学校環境の整備なのですから、公的な予算をあてるのがスジでしょう。「先生がやるべき」「保護者がやるべき」と押し付け合うのではなく、保護者も学校も、ともに公費を確保するべく努力していきたいものです。
そして、地域住民や保護者も学校敷地内に木を植える際は、あとの手入れのことまで慎重に考える必要があるでしょう。
ときどき、保護者などから「校庭を芝生にしたいと提案しているが、学校や教育委員会の許可がおりない」といった話を聞きますが、現状はやむを得ない気がします。芝生は理想ですが、手入れのコストはずっとついてまわるのです。