新幹線公衆電話終了へ かつて新幹線だけにあった移動客のための重要サービスとは?
最近、街中から公衆電話が減っている。そんな状況の中で、新幹線に公衆電話が残っていたこと自体、驚きかもしれない。
20年から30年ほど前は、新幹線だけではなく多くの在来線特急や、普通列車グリーン車にも公衆電話が設置され、利用されていた。
街中の公衆電話が減ったのも、在来線特急の公衆電話が消えたのも、理由は同じだ。携帯電話が普及したからである。新幹線の公衆電話サービスが終了することになった理由も、同じだ。
ただ、新幹線の公衆電話サービスは在来線特急などと大きな違いがあった。
新幹線に電話をかけることができた
新幹線の公衆電話の大きな特徴として、電話をかけたい相手の乗車する列車がわかっていれば、呼び出してもらえるという「列車着信通話」の仕組みがあったことが挙げられる。後々に普及する、在来線特急の電話にはないサービスであった。
まず「107」に電話をかけ、列車番号と相手の名前を告げ、呼び出してもらう。それで相手が電話に出る。
東海道・山陽新幹線では初期は電波、のちに漏洩同軸ケーブル(LCX)を使用するようになり、同様の方式はほかの新幹線にも広がっていった。
在来線特急などはNTTドコモの携帯電話や自動車電話などと同じシステムを使用していたのに対し、新幹線はこういった独自のシステムを採用していた。そのため、NTTコミュニケーションズがこのサービスを提供していた。
車内への呼び出しサービスは、2004年に終了した。そのころには多くの人が携帯電話を持つようになり、相手を呼び出す必要がなくなってしまったからだ。
その後も車内の公衆電話サービスは続いていたが、かけるだけなので、携帯電話の普及とともに利用する人は減っていった。
新幹線ではトンネル内でも携帯電話やWi-Fiがつながるようになり、電話サービスの必要性はなくなっていった。そして6月7日以降は撤去が始まり、30日にはサービスを終える。
なお、在来線特急などの電話サービスは、NTTドコモの2Gサービスを使用していたため、そのサービスのなくなる2012年には終了している。
2004年に終了した「列車着信通話」こそが重要なサービス
列車内の電話サービスは、携帯電話が普及した現状、役割を終えたといえる。とくに、呼び出しも可能だった新幹線の電話サービスは、列車着信通話こそが最重要サービスだった。
忙しい人が乗る新幹線で、連絡を一刻も早く取りたい人が相手としており、その人を呼び出すことがどうしても必要という意味で、このサービスは存在意義があった。
相手を呼び出し、何かを伝えなくてはならないことがあるような人がたくさん乗っている新幹線だからこそ、このサービスは必要といえた。
近年なくなった新幹線のサービスとして、車内の文字ニュースというものがある。これも、列車内にいる人に最新の情報を届ける必要があったからこそ成り立つサービスだった。しかしもう、多くの人がスマートフォンのプッシュ通知でニュース速報を知る。それゆえになくなった。
呼び出し電話のサービスも同じだ。多くの人が携帯電話を持つようになって役割を終えた。その後普通の公衆電話と同様のサービスになってしまった。
かつてはホテルなどでも部屋から電話をかけることができたが、いまはできないところも多い。ホテルの部屋を指定して電話をかけることもできない。同じ状況が鉄道でも起こっている。
いまでも、あえて携帯電話を持たない、というポリシーの人はごくまれにいる。しかし、そういった人は「つながる」ことにも拒否感を示しているので、そういう人に対して無理やり「つなげる」必要はないだろう。
いまや、在来線でも車内Wi-Fiがある列車があり、新幹線でもそういったサービスは完備されている。携帯電話の電波がつながれば4G回線でデータのやりとりもできる。そういった状況の中で、新幹線の公衆電話は、いままでよく持ったといえるのではないだろうか。