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「ここまでくれば」、国会に政治資金に関する独立の機関を設置し、改正法案を提案させるべきだ

鈴木崇弘政策研究者、PHP総研特任フェロー
政治資金の問題が政権そして政治を揺るがせている(提供:イメージマート)

 岸田政権は、「ここまでくれば」という言葉を使わずにはおえない状態に来ている。

 同政権は、以前からも高かったとはいいがたいが、内閣支持率は、マイナンバーカード関連のトラブルなどの影響で、本年6月以降下落傾向に陥った。同政権は、支持率の改善を目論んで、9月には内閣改造を実施したり、11月には減税や低所得世帯への給付などを盛り込んだ総合経済対策を閣議決定した。だが、政権浮揚にはつながらなかった。

 そんななか、ここ最近に至り、自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題が深刻化した。それに対して、岸田総理や政権の対応の不燃焼感が、国民の政権や政治への不信感を募らせ、政権運営は一層厳しくなっていた。

岸田政権は、今般の政治の問題を乗り越えられるのか
岸田政権は、今般の政治の問題を乗り越えられるのか写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 このような状況において、報道各社が、内閣支持率の調査を行い、低い数字が続々と公表されてきている。その中でも特に毎日新聞の全国世論調査の岸田内閣の支持率は、11月実施の前回調査(21%)よりもさらに5ポイント減の16%であった。これで、内閣発足以来最低を2カ月連続で更新すると共に、不支持率は前回調査(74%)より5ポイント増の79%となったのである。

 この数字は、記事「内閣支持率、旧民主・菅政権末期に迫る 裏金疑惑直撃 世論調査」(毎日新聞、2023年12月18日)によれば、「調査方法が異なるため単純比較はできないが、旧民主党・菅直人政権末期(2011年8月)の15%に迫った。一方、内閣不支持率は前月比5ポイント上昇の79%。森喜朗政権の75%(01年2月)を上回り、毎日新聞が内閣支持率の調査を始めた1947年7月以降で最も高い不支持率になった」のである。

 このようにして、内閣不支持率は支持率の何と約5倍という極度に厳しい数字になっており、内閣がいつ総辞職してもおかしくない状況になってきている。

 これは、ほんの数か月前までは全く予想だにしなかった事態である。岸田政権は、内閣支持率は絶えず低空飛行であることが多かったが、与党内外に岸田さんの総理の地位を脅かす人材がいる事態ではなく、同政権は予想以上に長期政権であるだろうという雰囲気が生まれていたといっても間違いではなかった。

 ところが、である。

 以前の自民党であれば、新しい大きな方向転換を打ち出すなり、党首の首をすげ替えて、新たな総理による政権交代などを行い、政治や社会の空気や雰囲気を変えることを行い、政権や政治への支持をリセットしたものだ。だが、今般の自民党ではそんな対応や危機管理をできる、人材も仕組みもあるとはいえない。

自民党は、金権政治の批判を受けて、政権交代を行い、難局を乗り越えた
自民党は、金権政治の批判を受けて、政権交代を行い、難局を乗り越えた写真:Fujifotos/アフロ

 また、政策的にも、今問題になっているのが政治に関わる裏金・政治資金の問題であり、それにより、以前から絶えず存在してきていた政党(特に与党自民党)、派閥そして政治全般に対する不信感は強化され、信頼の喪失の増幅という政治の根底を揺るがす事態になっているのであり、小手先や表面的なやり方では対応できないし、それをすれば逆に火に油を注ぎかねない状態になっているということができる。

 政治状況が「ここまできた」のであれば、政権交代を図るかどうかは別として(政権の交代をしてからの方が政治への信頼回復は早かろうが)、「政治資金」における抜本的な改革をせざるを得ないのではないだろうか。

 そこで提案である。

 今、その信頼が失われている中で、政治、特に与党の側が、政治資金に関する法等改正をしても、場当たり的で、その場しのぎの付け焼刃感は拭えない。信頼がない側が、対応しても、国民からの支持は得られない。

 この事態においては、当該の政治資金規正法等改正に関しては、国会が独立の調査研究委員会を設置し、ここできるだけオープンに議論していただき、改正法案を作成してもらうのである。国会は、同法案を受けて、国民世論なども踏まえて、オープンな形で審議し、修正などを経て、可決するのである。

 同調査委員会は、国民の視点から、政治資金の意味についても議論し、その適切性および透明性確保等のために、あらゆる可能性や対応を検討すると共に、政治資金の運用における監視の仕組みなどについても考察し、改正法案等を作成するのである。

 同調査研究委員会の設置および運営に関しては、内容が異なるが、憲政史上はじめて国会に設置された独立研究機関である「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)」(注)がその参考になるだろう。

新しい政治、国会の対応が求められているのではないか
新しい政治、国会の対応が求められているのではないか提供:イメージマート

 政治資金規正法の改正に関する議論は、メディアなどで既に始まっている。その具体的な改正内容は重要だが、現在の政治状況を考えると、その法改正の方法や手続きなどにおいて、新しいアプローチが求められているのではないだろうか。

(注)同事故調の設置・運営に関しては、次の拙記事を参照のこと。

記事「国会事故調に関する私的メモを公表する…日本の政治・政策インフラの向上のために」(鈴木崇弘、Yahoo!ニュース、2021年3月11日)

政策研究者、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。経済安全保障経営センター研究主幹等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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