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史上初 彗星に初めて着陸するヨーロッパの探査機

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
ロゼッタが撮像した「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」の表面 画像提供:ESA

2004年に欧州宇宙機関 (ESA)が打ち上げた彗星探査機「ロゼッタ」が、10年間にわたり太陽系を旅してきましたが、2014年11月12日に短周期彗星「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」の地表に着陸機「フィラエ」を投下する予定です。

ESAの彗星探査衛星「ロゼッタ」 CG提供:ESA
ESAの彗星探査衛星「ロゼッタ」 CG提供:ESA

これが成功すれば、人類史上初の彗星に着陸した探査機となり、彗星表面の詳しい構造や組成を明らかにしてくれるものと期待が高まっています。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、公転周期が6.6年。ロゼッタは2014年7月14日には、この彗星に1万4000kmまで接近し、写真を撮影しています。この彗星は2つの彗星がゆっくりとぶつかって、そのまま結合してしまったかのような構造で、一見、アヒルのオモチャのような奇妙な形をしています。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に近づきフィラエを降下させるロゼッタ 提供:ESA
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に近づきフィラエを降下させるロゼッタ 提供:ESA

アヒルのオデコの部分がフィラエの着陸予定地で、そこは「アギルキア」と名付けられました。どのような成果が得られるか注目しましょう。

ロゼッタの成果によって、本当に彗星が地球に海をもたらしたのか、生命の源は彗星が地球に運んできたのかなど、地球の誕生や生命の起源をめぐる、新たな発見があるかもしれません。

11月12日のフィラエ着陸の様子など、詳しい情報は ESAのウェブページESAの「ロゼッタ」サイトをご参照ください。着陸に向けてのカウント・ダウンも表示されています。

私たちの体を構成するタンパク質はアミノ酸から出来ています。そのアミノ酸は宇宙空間でまずは誕生したようです。

アメリカNASAの彗星探査機「スターダスト」は、2004年、太陽を公転している 「ヴィルト第2彗星」に、240キロメートルまで接近し、この位置からヴィルト第2彗星が放出する塵粒を採集しました。ハエトリ紙のような構造の装置を用いて、探査機にぶつかる塵を捕まえ、地球に持ち帰ったのです。

2006年に、スターダストが地球に接近した際に、この塵を含んだカプセルを見事地上に投下しました。この貴重な塵粒たちは、様々な最新の分析装置によって徹底的に調べられました。そして、採集した塵粒から必須アミノ酸の一つ「グリシン」が発見されたのです。

人の体はタンパク質でできています。タンパク質はアミノ酸がたくさん結合することでできていますので、タンパク質の元となる分子の一つが彗星に含まれていることがわかったということは、地球の上のみならず、宇宙空間にもアミノ酸があることを示しているのです。

スターダスト、はやぶさ、ロゼッタ、そしてはやぶさ2の探査により彗星や小惑星が、地球上のアミノ酸、つまり生命の起源なのかどうかが解き明かされそうとしています。

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。国際天文学連合(IAU)国際普及室所属。国立天文台で天文教育と天文学の普及活動を担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

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