紫金山・アトラス彗星は大彗星となるか?
10月12日から2週間程度が目撃するチャンス
紫金山・アトラス彗星(C/2023A3、ツーチンシャン・アトラス彗星とも表記)は昨年、中国の紫金山(しきんざん)天文台と南アフリカにあるATLAS望遠鏡で2023年1月に発見された新彗星です。10月12日以降、日没後の西の空に出現しますので、その姿を捉えられるか、チャレンジしてみましょう。
紫金山・アトラス彗星の地球への最接近は10月13日で、この時の彗星と地球の距離は約7千万km(太陽-地球間の距離のおよそ半分程度)です。上図のように12日、13日頃は見かけ上、太陽からあまり離れていないため、ほぼ真西の方角の低空で、日没後1時間程度で地平線下にこの彗星は沈んでしまうため、薄明が終わる時刻を待たず、日没後20-30分に地平線近くを探すことになります。幸い近くに宵の明星・金星が見えてきますので、金星の見え方や金星との位置関係から、肉眼または双眼鏡で彗星を探すと良いでしょう。また、尾が発達している可能性が高いので、太陽が沈んだ20分後ぐらいから連続して、西の低空を写真撮影すれば、彗星本体と尾が写る可能性が高いと思われます。
10月14日を過ぎると、水平線・地平線が見渡せるような場所に限らず、障害物が西の空に無く、金星が見つけらる場所からなら、比較的簡単に彗星を見つけることが可能です。ただし、彗星は金星や恒星と異なり拡散した光のため捉えにくく、なるべく周囲に人工の明かりが少ない市街地を避けて観測することをお勧めします。日本各地で10月12日から26日頃までが紫金山・アトラス彗星を見るチャンスです。この間、太陽から彗星は離れていくため、日を追うごとに次第に見やすい高さになり、日没後長時間にわたり観測が可能になりますが、その反面、彗星本体や尾の明るさは次第に暗くなると予想されています。
彗星の観測方法としては、双眼鏡や天体望遠鏡を準備されることをお勧めしますが、今回の紫金山・アトラス彗星では、空が暗く視界が開け、地平線・水平線まで快晴の好条件下であれば、誰でも肉眼で彗星本体を見つけられる可能性があります。つまり、21世紀を代表する大彗星となるかもしれません。また、カメラを三脚に載せて撮影されることをお勧めしますが、最近の高性能のスマホであれば、スマホを西に向けて肘を締めてブレないように撮影すれば、地平性から上に向かって伸びる尾を記録に残せる可能性もあります。
紫金山・アトラス彗星のようす
紫金山・アトラス彗星は、太陽の重力によって太陽系の果てから飛来した彗星で、日本時間の2024年9月28日に太陽に最も接近しました。地球からの見え方としては9月後半から10月3日頃までは、明け方の東の低空にその姿を見ることが出来、その頃には彗星本体は1等級に近い明るさとなり、角度で15度以上に伸びる明るい尾が世界各地で写真撮影されています。
その後10月11日頃までは、地球から見るとこの彗星は見かけ上、太陽の方向にほぼ重なる通り道であったため、太陽に近すぎて通常の観測では観測が困難な状況でしたが、太陽周辺のコロナなどを常時モニターしている太陽観測衛星からは観測が可能でした。例えば、太陽観測衛星SOHOからは、紫金山・アトラス彗星が次第に光度をあげて、金星と同程度の明るさ(マイナス4等級前後)まで増光し、尾が発達している様子が捉えられています。
彗星とは?
一般に彗星は、ほうき星またはコメットとも呼ばれ、氷と塵(ちり)が混じった直径10キロメートル程度のサイズの天体です。氷が固まった雪玉のような天体なので、太陽に近づくとその熱によって氷が昇華し、彗星(核)の周囲にガスが取り巻きます。これをコマ(髪の毛の意味)と呼びます。さらに熱を受けるとコマの外側にガスの尾(これをイオンテイル、またはプラズマテイルと呼ぶ)と塵の尾(ダストテイル)が形成されます。イオンテイルは太陽の反対方向に伸び、ダストテイルは核から放出された塵の状態や地球から見る角度により、まっすぐに伸びたり、広く扇のように広がったりします。このように、彗星は太陽に近づくほど活動が活発になる傾向があります。
紫金山・アトラス彗星の詳しい情報や観測の仕方は、国立天文台の特設ページもご覧ください。