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ロシアがウクライナでの戦闘のために募集したシリア人傭兵はいまだ実戦に参加せず

青山弘之東京外国語大学 教授
(写真:ロイター/アフロ)

英国を拠点として活動する反体制系NGOのシリア人権監視団は9月15日、複数筋から得た情報として、ロシアがウクライナでの戦闘のために募集したシリア人傭兵に関して、その多くがロシアに、そして一部がウクライナ東部に残留しているものの、警護任務に就くだけで、第一線での戦闘には参加していないと発表した。

同監視団によると、ロシアやウクライナ東部に駐留するシリア人傭兵は依然として2,000人あまりに達しているが、戦闘に参加していない理由については、シリア人傭兵がロシア語を修得していないことが障害になっているという。

ロシア側のシリア人傭兵については、パン・アラブ日刊紙『シャルクルアウサト(シャルク・アウサト)』が3月、2万人以上がウクライナでロシア軍とともに戦闘に参加する準備ができていると報じていた。また、『フォーリン・ポリシー』も150人とも800人とも言われている傭兵がロシア入りしたと伝えていた。

一方、ウクライナ側が募集した外国人傭兵のなかにも、シリア人は含まれている。ロシア国防省が6月に発表したところによると、外国人傭兵の数は6,956人で、シリア人は200人いるとされた。

NHKワールド・ジャパンでの佐野圭崇記者のリポートによると、ウクライナ側のシリア人傭兵は実戦に参加しており、少なくとも10人が戦死している。

●シリア人傭兵の詳細については拙稿『ロシアとシリア:ウクライナ侵攻の論理』(岩波書店、2022年)を参照されたい。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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