シリア・ロシア軍が合同で爆撃を実施、テロリストのドローン発射・官制訓練施設を破壊、外国人ら多数を殺傷
戦争においては、情報戦のなかで当事者が発信し続ける情報を注視することで、初めて的確な情勢把握が可能になる。耳当たりのいい情報が得られたことに満足して、情報収集を怠れば、現実から乖離した、自分にとって都合の良いヴァーチャル・リアリティを頭のなかに作り上げるだけである。
SANA報道
シリア国営のSANA(シリア・アラブ通信)は9月14日、シリア軍がロシア軍と合同で爆撃、ミサイル攻撃を実施したと伝え、その映像を公開した。
現場の情報筋がSANAの特派員に明らかにしたところによると、シリア軍はイドリブ県農村地帯で索敵監視活動を継続したうえで、ミサイル部隊がロシア軍航空機と協力し、特殊作戦を実施、精密爆撃とミサイル攻撃によって、テロリストのドローン発射・官制訓練施設複数ヵ所を攻撃した。
同筋によると、この作戦で、ドローン発射・官制訓練施設の施設に加えて、指揮官制用の車輌複数輌、ドローン複数機を破壊、外国人教官複数を含むテロリスト多数を殺傷した。
SANAが公開した映像には、灌木に隠れるように駐車された車輌、細長い箱状のもの、農作業とは異なる俊敏な動きを見せる複数の人物、爆撃を実施するロシア空軍のSu-29、発射される弾道ミサイル、標的が爆発する瞬間などが映されている。
ロシア軍発表
攻撃が行われた日時、正確な場所は明らかにされなかった。
だが、SANAの報道に先立ち、ラタキア県のフマイミーム航空基地に設置されているシリア駐留ロシア軍司令部に所属するロシア当事者和解調整センターのオレグ・エゴロフ副センター長は9月8日に声明を出し、ロシア航空宇宙軍がシャイフ・ユースフ村近郊にあるシャーム解放機構の教練キャンプを爆撃し、テロリスト120人以上を殺害したと発表していた。SANAが報じた攻撃はこの爆撃を指すものと思われる。
RIAノーヴォスチ通信によると、エゴロフ副センター長は、この爆撃で、シリアに駐留するロシア軍部隊の施設を攻撃するためにテロリストが準備していたドローン制御拠点4カ所、ドローン発射装置数ヵ所、自作ドローン約20機を無力化したことを明らかにしている。
エゴロフ副センター長はまた、シリアのアル=カーイダとして知られ、イドリブ県中北部を中心とする反体制派支配地(いわゆる「解放区」)を支配するシャーム解放機構が、イドリブ市、タフタナーズ市、ビンニシュ市、ジスル・シュグール市、ナイラブ村、アリーハー市で活動するホワイト・ヘルメットの代表らとともに、ロシア軍とシリア軍が民間人や民間インフラを攻撃していると見せかけるためのビデオを撮影している、と付言した。
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エゴロフ副センター長は翌9日にも、この爆撃に言及、シャーム解放機構の幹部メンバー20人以上に加えて、タウヒード・ワ・ジハード大隊の指導者のムフタロフ・スィロズィッディーン・ズィヤヴディノビッチ(アブー・サロフ)(Мухтаров Сирожиддин Зиявутдинович (Абу Салох))の死亡を確認したと発表した。
タウヒード・ワ・ジハード大隊は、ウズベキスタン人を主体とする武装集団で、米国防総省は2022年3月7日に、大統領令第13224号に基づく特別指定グローバル・テロ組織(SDGT)に指定している。
なお、シャーム解放機構も米国によって外国テロ組織(FTO)に指定されているほか、国連安保理決議第一二六七号委員会(通称アル=カーイダ制裁委員会)によるテロリスト指定を受けている。
沈黙する反体制派
これに対して、ホワイト・ヘルメットは、この攻撃を「虐殺」と非難、子供1人を含む市民7人が死亡し、10人以上が負傷したと発表、映像や写真を公開した。
ホワイト・ヘルメットは、シリア軍やロシア軍の爆撃や攻撃の残忍さをアピールするため、瓦礫の下敷きになった血まみれの女性や子供、遺体の映像や写真を公開している。8日に公開された画像や写真は、倒壊した建物、そこで捜索作業を行うホワイト・ヘルメットの隊員の様子、爆撃現場にいたと思われる血まみれの若い男性、シャツの背中に血痕がついている少年が写っているのみだった。
14日のSANAの報道に対して、反体制派は今のところ何らの発表も行っていない。