米中衝突の台湾有事の際、どれほどのヨーロッパ人が米国を支援するつもりなのか
「米国と中国が台湾をめぐって軍事衝突した場合、ヨーロッパ人の多くは自国に米国を支援するよりも、中立を保つことを望んでいる」。欧州のシンクタンク、欧州外交問題評議会(ECFR)が4月に実施した世論調査でこんな結果が出た。欧州全体で米国を支援すべきだと答えた人は23%にとどまり、中立を保つべきだと回答した62%を大幅に下回った。
ウクライナ戦争では、ウクライナ支持と反ロシアで結束してきた欧州諸国だが、対中国では中立志向が浮き彫りになっている。ECFRは「中国はロシアとは違う」と説明している。
この世論調査は、EU(欧州連合)に加盟する11カ国(オーストリア、ブルガリア、デンマーク、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン)の18歳以上の成人を対象にECFRが実施した。回答者の総数は1万6168人だった。
国別では、スウェーデンが米国を支援すべきだと答えた人が最も多く、35%に上った。逆に中立を保つべきは49%にとどまった。NATO(北大西洋条約機構)非加盟国のスウェーデンは隣国ロシアの脅威に直面し、米国との関係を強めている。
EUの主要国であるフランスでは24%が米国を支援すべきだと答える一方、中立を望む人は53%に及んだ。ドイツでも、米国支援は23%にとどまる一方で、中立を保つべきだとする人は60%に達した。
ECFRはツイッターで、「世論調査の結果は、中国を戦略的かつ世界的なパートナーとみなすマクロン仏大統領とショルツ独首相の政策的立場が欧州の世論とほぼ一致していることを示唆している。欧州全域の市民は、台湾をめぐる米中紛争で欧州が中立を保つことを望んでいる」と説明した。
さらに、ホームページ上では「欧州諸国の国民は中国が欧州に挑戦し、欧州を弱体化させようとしている大国とは考えておらず、バイデン政権が推進する『民主主義対独裁主義』の枠組みを支持していない」と指摘した。
●世の中に残る反米主義
台湾有事の際の米国への支持が18%にとどまるイタリアの日刊紙「イル・フォッリョ」のジュリア・ポンピリ記者は7日、筆者の取材に対し、「イタリアのような欧州諸国について最初に考慮すべき問題は、今も世の中に残る反米主義だ」と指摘した。
そして、「特にイタリアでは、『中国は米国とは異なる平和のアクター(行為主体)である』と訴える中国のプロパガンダが長期間にわたって機能してきた。イタリアは、『伝統的な同盟国』に加えて『新しい友人』がいることを国民に示したいポピュリスト政治家らのせいで、2019年に中国のシルクロードに署名した唯一のG7国となった。独立系メディアであっても、中国の暗部である権威主義的な側面を伝えるのは難しい」と述べた。
その一方、ポンピリ記者は「フランスとドイツの場合は状況が多少異なる」と言い、「これらの国では、主に経済的側面が政治的側面を打ち負かしている。確かにロシアによるウクライナへの大規模侵攻が始まって以来、より多くの人々が中国への経済的依存を恐れるようになってきた。しかし、この(中国経済依存の)問題が表面化するまでにはまだ時間がかかるだろう」と述べた。
●「米国に安全保障を依存できない」が74%
また、今回の世論調査では、ヨーロッパ人の大多数は安全保障と防衛に関わるEUの自主性を望んでいることも分かった。回答者の74%が欧州は安全保障を常に米国に依存することはできないと考えており、EUの自主防衛力の拡大を望んでいる。
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