完全試合、ノーヒットノーランにドラフト候補の躍動――都市対抗東京・北関東・東北二次予選
第90回都市対抗野球大会の二次予選では、各地区で代表が次々と名乗りを上げている。北関東では、5月の東北大会を制した日本製鉄鹿島が勝負強さを発揮。左腕の能間隆彰が新鋭のエイジェックを相手に94球で完全試合を達成すると、日立製作所との第一代表決定戦は、3点を追う7回表に林 悠平の3ラン本塁打で同点に追いつき、1点をリードされて迎えた9回表二死一塁から、再び林が逆転2ランをセンターに叩き込む。4年連続19回目の本大会出場は、黒獅子旗を手中に収めるチャンスだ。敗れた日立製作所も、翌日の第二代表決定戦でエイジェックに3-2で辛勝し、2年ぶりの代表権を手にした。
昨年の都市対抗ではJR東日本とセガサミーがベスト4、NTT東日本と鷺宮製作所がベスト8と、企業6チームの実力が拮抗する東京は、4月の日立市長杯大会で優勝した鷺宮製作所、長野県知事旗大会で準優勝のNTT東日本が第一代表決定戦に進出。新人の佐々木 健から4投手をつないだNTT東日本に対して、鷺宮製作所は5年目の左腕・野口亮太が8回まで5安打無失点の好投を見せ、昨年に続いて第一代表を手にした。
野口は164cmと上背にこそ恵まれていないものの、右打者のインコースにストレートを出し入れしながら、アウトコースの変化球で打たせる投球が持ち味。もともと優れている制球力が、昨年あたりからワンランク上になったという印象で、対戦相手は手を焼いている。今予選でも、準決勝ではJR東日本に9回途中まで1失点。東京ドームでも活躍すれば、26歳のサウスポーをドラフト指名するプロ球団も現れるかもしれない。
ドラフト候補たちも目立つパフォーマンスを見せる
NTT東日本に第二代表をもたらしたのは、間もなく34歳になるベテランの大竹飛鳥だ。関東学院大に入学してから本格的に投手になり、3年時にトミー・ジョン手術を受けたため、「社会人で野球を続けるのは諦めかけていた」という右腕だが、150キロに迫るストレートを武器に頭角を現し、20代後半になると技巧派にモデルチェンジ。昨年は都市対抗10年連続出場を達成し、最優秀防御率のタイトルも手にするなど、社会人を代表する投手として存在感を示している。
「試合前のブルペンから調子がよかった」という明治安田生命との第二代表決定戦は、ストレートも変化球も低目に集め、「そういうタイプじゃない」と言いつつも三振の山を築く。果たして、14奪三振2四球の133球で、ノーヒットノーラン。しかも、5回表に挙げた1点を守り抜く文句なしの内容だった。
第三代表は、ドラフト候補がひしめくJR東日本が勝ち取った。準決勝で鷺宮製作所に苦杯を喫し、敗者復活戦でも明治安田生命に延長で敗れたが、その明治安田生命にリベンジしようと気合い十分。ルーキーながら先発を任された伊藤将司が3回裏に3点を失うも、直後の4回表に渡辺和哉の2ラン本塁打で追い上げ、続く5回表には一死満塁から丸子達也の左前安打で同点に追いつき、さらに暴投で4-3と逆転する。
この1点をドラフト候補のリレーで守り切った。3点を奪われた3回裏二死一、三塁でリリーフした太田 龍は、このピンチを凌ぐとテンポのいい投球で逆転を呼び込む。ストレートは150キロをマークし、フォークボールのキレも抜群。6回までは反撃のムードすら作らせない。
それでも、7回裏一死一塁では西田光汰を投入。マウンド上で常に白い歯を見せる西田は、持ち前の強気なマウンドさばきで最後の打者も三振に斬って取り、雄叫びを上げながら歓喜の輪に呑み込まれた。
そして、第四代表決定戦では、明治安田生命が投打にセガサミーを圧倒。4年ぶり6回目の本大会出場を果たした。
また、90回の記念大会で1枠増の3代表となった東北は、櫻糀大輝、山田周平の左右の新人コンビ、2年目の加藤 弦ら若手投手が登板を重ねるごとに成長したJR東日本東北が、4年ぶりの出場を第一代表で飾る。エースの小島康明が安定した投球で攻撃のリズムを引き出す、きらやか銀行は2年ぶりに全国の舞台に返り咲き。7日間で6試合を戦い抜いた七十七銀行は、第三代表に滑り込む。日本製紙石巻との第三代表決定戦では、先発の鈴木貴也が5回二死までヒットを許さない好投で試合を作り、攻撃は二死からコツコツと得点を重ねる。最終回に日本製紙石巻も意地の反撃を見せたが、七十七銀行が7-3で逃げ切った。
なお、他の地区の二次予選のレポートは、以下をご覧いただきたい。