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やっぱり気になる 横浜DeNAはなぜ大逆転日本一を達成できたのか #専門家のまとめ

横尾弘一野球ジャーナリスト
激闘を終えた横浜スタジアムは、翌日もグッズを求めるファンなどで賑わっていた。

 ペナントレースが激しさを増す夏の終わり、2024年のプロ野球で横浜DeNAが頂点に立つと考えていた人は地球上に誰もいなかったはずだ。いや、クライマックス・シリーズに進出することさえ、「何とか粘ってほしい」という願望に過ぎなかったと思う。それが「ここで負けたら終戦」という空気が漂う試合をことごとく拾い、貯金2でセ・リーグ3位に滑り込むと、クライマックス・シリーズでは阪神、巨人を相手に5連勝。反撃してきた巨人との最終戦も制して日本シリーズ進出を決め、福岡ソフトバンクにもKO負け寸前からの猛反撃でKO勝ちしてしまう。野球の怖さと醍醐味を感じさせてくれた感動の快進撃はなぜ成し遂げられたのか。横浜DeNAファンでなくても、やはり気になるところだ。

ココがポイント

第3戦、東 克樹投手が先発して勝った試合ですね。あの試合で潮目が変わった気がします。
出典:web Sportiva 2024/11/4(月)

日本シリーズ制覇をイメージしているように感じられた。そこでキーマンになってくるのが、遠藤拓哉メンタルスキルコーチだ。
出典:web Sportiva 2024/11/4(月)

2連敗からの4連勝。下克上を完成させたナインを三浦監督はほほを緩めてたたえた。「試合をするたびに選手が進化してくれた」。
出典:東京新聞 2024/11/3(日)

エキスパートの補足・見解

 2連敗して福岡へ移動した際のミーティングで、桑原将志が「悔しくないんか」と気合いを入れたという報道があった。そして、第3戦で桑原が勝ち越し本塁打を放ったシーンから、日本シリーズ全体の流れが変わったようにも感じる。その背景には、近年のスポーツ界では不可欠な人材と言われるメンタルコーチの貢献もあったはずだし、ベテラン・筒香嘉智のプレーでも姿勢でもチームを上昇気流に乗せた貢献もあっただろう。さらに、見えない部分でも福岡ソフトバンクとの優劣を逆転させた要素もあったかもしれない。かつて中日を率いて黄金時代を築いた落合博満は、「プロ12球団の戦力は、どこも大きくは変わらない。監督が采配しなければ、全チームが勝率5割付近になるはずだ。それが大きな差がつくのは、監督やコーチが余計なことをやったり言ったりするのも原因のひとつ」と言ったことがある。福岡ソフトバンク側には、小久保裕紀監督やコーチの発言が2連勝による油断や勢いを止めたという報道もあり、短期決戦の怖さをあらためて感じさせられる。長いペナントレースを戦い抜き、貯金2のチームが同42のチームを上回ったという事実については、様々な意見があるだろう。ただ、横浜DeNAに一貫していたのは、どんな状況に追い込まれても下を向かず、決して諦めなかったこと。勝負事では、できそうでできないことと語られており、それが一番大事なのかもしれない。

(写真は筆者撮影)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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