80年代の青春を描いた大ヒット作!韓国ドラマ「応答せよ1988」を絶対見ないと!
月に一度のお約束【韓国カルチャー早耳情報】が、今月もやってまいりました。今回は今年の1月に韓国で放送を終えたばかりで、日本でも今月から放送開始となる大ヒットドラマ『応答せよ1988(原題)』をご紹介します。
ある特定の時代を舞台に、ヒロインとその仲間たちの恋と友情を描いた「応答せよ」シリーズ。これまでの2作品「1997」「1994」はともに大ヒットしましたが、「1988」を舞台にした最新作はシリーズ最大のヒット作となりました。何しろ80年代カルチャーと時代へのノスタルジーが満載で、韓国ドラマ好きじゃなくとも笑って泣いて懐かしんで、楽しめること間違いなし!
ということで、まずはこちらの予告編をどうぞ。
●見どころ1 現在と過去を行き来する大人気シリーズのお約束「ヒロインの夫探し」
シリーズの面白さは独特の構成にあります。
物語は、それぞれタイトルにある「過去」を舞台にヒロインとその仲間たちのドラマを描きますが、その合間合間に「現在」を生きる彼らの姿がちょいちょい差し挟まれ、視聴者はそこで「ヒロインは仲間のひとりと結婚したらしい」こと知ります。「過去」のドラマは、その相手が誰なのか、どうやって恋に落ち結婚に至ったのかを、徐々に明らかにしていきます。つまり「過去」のドラマはちょっとした「謎解き」になっているのですが、これが一筋縄ではいきません。
視聴者は「現在」のやりとりをヒントにしながら、「相手はこの人だろうな」と見進めていくのですが、「現在」にも「過去」にも嘘や勘違いがあるわけです。視聴者はその巧妙な脚本に、うまーく手玉に取られてしまうんですね~。
さて今回の仲間たちは、ソウルの下町、双門洞で育った幼馴染の高校生5人組。ヒロインは陽気で素直で人が良く、おっちょこちょいでお調子者だけど、面倒見のいいトクソン。演じているのはアイドルグループ「Girl’s Day」のヘリで、グループ内ではマンネ(末っ子)のかわいこちゃんとして知られていますが、それを振り切るかのような面白演技が炸裂しています。
彼女を巡る幼馴染みの男子4人を見ると――相手はチェ・テク(パク・ボゴム)か、ソン・ソヌ(コ・ギョンピョ)あたりかな~と顔だけであたりをつけるわけですが(^^;)、その判断が段々と揺らいでいくのがこのシリーズのすごいところ。それはこの作家が描く男子キャラが、あまりに魅力的だからなんです~。
●見どころ2 わちゃわちゃ感が楽しい、4人の男子たち
注目の男子キャラについて。
まずはなんといってもチェ・テク。このドラマで大ブレイクしたパク・ボゴム演じる天才棋士です。
テクを一言で言うなら「母性本能くすぐり系」。一目見て分かると思いますが、黒目がちでつぶらな瞳が小動物みたいで、前半はほとんど言葉を発さず常にニコニコとした笑顔が印象的です。十代にして囲碁6段という天才なのですが、それ以外は丸っきりダメ(靴紐が上手く結べないとかwww)、そのギャップもめちゃめちゃ可愛い~。さらに、勝負師として孤独が描かれ始める中盤あたりから、グイグイと男っぽくなっていくのもたまりません。対局を前に何も食べられず眠れず、身をすり減らしてゆく姿、対局に行く前にトクソンに「負けてもいいよね」と聞くところ(「いいよ!」と明るく答えるトクソンも、また魅力的!)、勝負を終えて疲れ果てて倒れ込むように眠る姿など、作品を見た全女子が母性本能くすぐられちゃうに違いありません。
幼馴染たちもそれは同じで、普段はテクを使いっ走りにしたり賞金にたかったりする無遠慮さですが、その一方で「天然記念物級に純粋なテクを守らねば」と、何かと面倒を見ます。みんなが、靴紐をチェックして変なら結び直してあげるし、部屋を訪ねたら碁を打ちながら寝落ちしてた、なんて時には、お布団を敷いて寝かせ静かに去ってゆく。幼馴染の友情がすごく感じられます。
二人目は生徒会長のキム・ソヌ。演じるコ・ギョンピョは、私の中では『隣の美男(イケメン)』で漫画家と同居していた弟分ドンフン役なのですが、世間的には『のだめカンタービレ』のバイオリン奏者イルラク役なのかな?出演最新作は、チャン・ドンゴン、リュ・スンリョン主演の映画『7年の夜』で、来年公開予定だそうです。
彼が演じるソヌのイメージは「オムチナ(自慢の息子)」。背が高くてイケメンで、前向きで真面目で成績優秀、「現在」のトクソンからは「この界隈で一番まとも」と紹介されている生徒会長です。かといって優等生ならではのヒョロッとした感じとは無縁で、たとえば絡んでくるタチの悪い先輩をご機嫌とってやり過ごす、なんてことは絶対にせず、一歩も引かずに真正面からまっすぐに見据えるような男っぽさのある人。そういう性格は恋愛でも同じで、変な小細工はせず正面突破。困難があっても全然メゲず、笑顔で真摯に自分を貫き、そのうち周囲が根負けする――というめちゃめちゃ強い人です。
2年前に亡くした父親に代わって母と妹ジンジュを守るという意識も強く、特に15歳くらい年が離れたジンジュは目の中に入れてもいたくないほど。大きなソヌが小さなジンジュの世話を焼く姿は本当にかわいく、同時にソヌの「父性」「包容力」の魅力も感じさせます。
三人目は、ぶっきらぼうなジョンファン。リュ・ジュニョルは大抜擢されたほぼ新人ですが、このドラマで大ブレイク。現在韓国で放送中のファン・ジョンウム共演の『運勢ロマンス』でも主演を務めています。
イケメンというわけではないのですが、テク可愛い~、ソヌ素敵~と見てたはずが、あれ、ジョンファンちょっと良くない?ジョンファン素敵かも?え、やだやだ、ジョンファンにキュンとしちゃったんですけども!という女子続出の、今回の大大大大ダークホースです。
ジョンファンは成績優秀で物事に動じず冷静、言葉も少なく表情もあまり変えないタイプ。理論的でクールなので仲間から「無粋だ」と言われたりもしますが、本当は自分の感情が上手く表現できないだけ。すごく照れ屋なだけで、実は仲間の中で一番のロマンチストです。例えば混雑するバスの中でトクソンの盾になってあげたり、急に振り出した雨に傘を持って帰りを待ったり、でも同時に発する言葉があまりにぶっきらぼうで、(ただでさえ鈍感な)トクソンはそこに恋愛感情があることに全然気づきません。
ちなみにジョンファンのこういう性格は、ヒロインのトクソンの姉、ボラ(ソウル大に通う優等生)とすごくよく似ています。
ふたりは、何もしなくても愛されちゃうトクソンとテクのようなタイプに、コンプレックスとはいかないまでも引け目を感じ、分かっているのに変えられない自分の不器用さがイヤなんだけど、そういう自分を生きていくしかないと観念もしている。この作品の中で一番複雑な深みのあるキャラクターで、恋愛においても家族との関係においても「切なさ担当」。私はこの二人には何度も何度も泣かされてしまいました。ジョンファン演じるリュ・ジュニョルは、びっくりですがもう30才なんですね。確かに25~6歳のキャストとは、男としての哀愁とか深みが違う感じです。
さて最後の一人は「お笑い担当」のドンリョン。演じるイ・ドンフィはこちらも30才、今や映画に引っ張りだこで、来年公開のヒョンビン主演のアクション大作『共助』への出演も決まっています。
彼が演じるドンリョンは、みんなが通う高校の学年主任の息子なのですが勉強は全然できず、子供じみたおふざけばっかりしている男。唯一得意なのはダンスで、アイドル番組を見てはいつもトクソンとダンスバトルを繰り広げています。まあこの人に関してはラブラインには関わらない、と言ってても「ネタバレ」を怒る人はいないと思いますが、無関係だからこそいろいろ見えている存在で(まったく見えていないこともありますが)、時にすごーくいいセリフを吐くナイスキャラです。
さてこの4人(3人ですけど)のうちの誰がヒロイン、トクソンの夫になるのか。二転三転する恋愛模様にぐいぐい引き込まれると思います~。
●見どころ3 笑って泣かせる家族たちのキャラが最高
その恋愛エピソードを繋ぐ家族のエピソードが、実のところこのドラマの最大の魅力かもしれません。「応答せよ」シリーズで必ずヒロインの両親を演じるソン・ドンイル(『僕の彼女は九尾狐(クミホ)』)とイ・イルファ(『星から来たあなた』)の掛け合いはいつも通りの面白さですが、私のお気に入りはジョンファンの両親を演じるキム・ソンギュンとラ・ミラン、そしてチェ・テクの父親チェ・ムソンです。
キム・ソンギュンはシリーズの前作『応答せよ1994』では老けた大学生を演じていた人。私の中では『悪いやつら』で演じていたすっごい変な髪型のハ・ジョンウの右腕役の印象が強いのですが、このドラマでは完全に逆方向に振り切ったスーパー能天気キャラ。宝くじの当選でド貧乏から急激に金持ちになったせいか、度外れた貧乏性なのも笑わせます。
ラ・ミランはそんな子供っぽい夫に手を焼くしっかり者の妻。『国際市場で会いましょう』では主人公に店を譲る叔母役を演じていた女優さんですが、常にアニマル柄を着ているこのドラマでの渾名は「双門洞のチーター夫人」。切ない三角関係が盛り上がり始める16話、このチーター夫人とドンリョンが「のど自慢大会」に出るというエピソードが腹がよじれるほど爆笑で、このドラマのバランス感覚の素晴らしさを本当に実感します。
一方、チェ・テクの父親チェ・ムソンは、「もしかしたらこの人が一番素敵なナムジャなのでは…」と思うような度量の大きな父親です。
俳優さんは『奇皇后』で主人公を支え続ける巨漢の宦官を演じていた人。ドラマの前半は、テクを男手ひとつで大切に大切に育てる寡黙な熊みたいなお父さんという感じなのですが、勝負師としてのテクの孤独が描かれ始める中盤からキャラクターが際立ち始めます。
特に対局で日本に飛んだテクの飛行機が事故に遭うエピソードでは、それまでの「朴訥」としたイメージから一転、テクを思う気持ちがいろんな形で奔流のように流れだし、その愛情の大きさに胸を打たれます。
毎回毎回こうした家族の小さなエピソードが満載で、笑わされて泣かされているうちに、気づくと20話があっという間に終わっています。
●見どころ4 カルチャー満載、懐かしの80年代
最後にこのドラマ最大の魅力、「年代」へのノスタルジーをお伝えせねばなりません。
これまでの2作品でもそれは大きな武器だったのですが、この作品「1988」がシリーズ最大のヒットとなったのは「80年代」という時代が、これまで以上に「強いキャラクター」を発揮して、幅広い世代に訴えたからだと思います。大ヒットした映画『サニー』でも描かれた時代ですが、ファッションからして濃いですよね。ポスタービジュアルを見るとシャツやトレーナーをインしてるし、デニムはケミカルウォッシュで太いし(笑)。
私は当時の韓国カルチャーにはそれほど詳しくないのですが、今も活躍する伝説のミュージシャンたち――例えばSMエンタテイメントのイ・スマン社長(伝説のギタリストです)や、BIGBANGがカバーした『燃える夕焼け』のイ・ムンセ――などは、韓流ファンなら知っているところかなーと思います。
でも個人的に「懐かし~!」と楽しく見たのは5人がテクの部屋に集まって見る80年代映画の数々です。『男たちの挽歌』でチョウ・ユンファに心酔する男子たち、『ラ・ブーム』で恋愛に憧れる女子たち、『ダーティ・ダンシング』のダンスを必死にコピーし、『トップガン』で空軍パイロットに憧れ、『フォレスト・ガンプ 一期一会』で人生の苦さを受け入れる――ドラマは同じ時代に青春を送っていた人々の共感とノスタルジーを、映画を通じて掻き立ててゆきます。映画好きな私は、もうまんまと、その戦略にハマってしまいました。ほんとに上手いなー。
さらに今とは違うご近所の人間関係、例えば晩御飯のおかずをご近所に持っていく、調味料の貸し借りがある、みたいな感じは、日本ではむしろ昭和30年代、『Always 3丁目の夕日』の世界観に近い感じがします。路地裏で遊んでいると、家のほうから「ご飯よ~!」というお母さんの声が聞こえる――30~40代の人は、同時代感と共に、そんな幼い頃の記憶も呼び起こされるに違いありません。
韓国では88年と言えばソウルオリンピックの年、ドラマ『エデンの東』『ジャイアント』あたりがこの時代で、都市開発がすごく進んだ時代です。こうした路地にある、小さな出来事に一喜一憂する家族のささやかな暮らしは、ソウルにも東京にも、もうほとんど残っていないのかもしれません。最終話のなんでもないラストシーンに涙があふれてしまうのは、戻りたいけど戻れないからなんでしょうね。
キム・ソヌ役コ・ギョンピョさんのインタビューはこちらでアップしています!
『応答せよ1988(原題)』
6月5日(日)午後8:15~9:50 初回無料放送
6月15日(水)より、CS放送Mnetにて放送スタート
本放送(水)(木)22:00~23:40
再放送(木)(金)8:00~9:40、(日)9:00~12:20(2話連続放送)
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