コミケを支えた新交通システムの自動運転 その強みと弱み
コミックマーケット96は、今月9日から12日まで史上初の4日間開催となった。東京ビッグサイトの東展示棟が東京五輪の関係で使用できなくなったため、西展示棟と南展示棟をサークルスペース(東京ビッグサイト駅)、青海展示棟を企業ブース(青海駅)と分けることになった。
従来のコミケなら、企業ブースも有明にあり、巨大な建物の中を行き来するだけで十分だった。しかし今年は猛暑で日差しも強かったため、一駅だけどゆりかもめに乗る必要があった。ゆりかもめ側は特別なダイヤを組んで対応した。
約3分間隔のダイヤ
ゆりかもめは、7時台から18時台まで、およそ3分間隔のダイヤを組んだ。従来のコミケでは、早朝から人が並び、昼ごろにはその列も消え、一方で午後になると帰る人が出始め、16時に閉会するといっせいにゆりかもめやりんかい線の駅に殺到した。しかし今年のコミケでは人の流れが複雑になっていて、ゆりかもめが打ち出した答えは、およそ3分間隔のダイヤで全線を運行するというものだった。
3分間隔を支える自動運転
ゆりかもめのような新交通システムでは通常、運転士のいない自動運転で運行され、監視カメラやセンサーなどで乗客の動きに対応している。
自動列車運転装置(ATO)によって運行が行われ、全駅にフルスクリーンタイプのホームドアを設置している。ATO搭載路線では運転士の乗務している路線としていない路線があるものの、一般的には運転士が乗務している路線は2本のレールの上を走る鉄道であり、新交通システムでは運転士は乗務しない。なお、新交通システム各社も、異常時に必要とする運転士の訓練を行っている。
2本のレールの上を走るJR山手線ではATOを導入する計画が進んでいるものの、運転士なしの乗務は将来的な計画の段階に留まっている。
無人の自動運転が行われる背景には、車両の建設コスト削減や人件費削減、効率化がある。今回のゆりかもめの長時間に渡る高頻度運転は、自動運転だからできた面もある。
最近の新交通システムのトラブル
だが新交通システムの自動運転のトラブルは相次いで起こっている。最近は横浜シーサイドラインで逆走事故が起き、現在も運行に運転士は必要な状態となっている。運転本数は通常の65%程度となっており、完全に回復しているとはいえない。
大きく報道されていない事案ではあるものの、自動運転の難しさがわかるできごとが、愛知県のリニモで起こった。
8月3日に藤が丘駅で車両とホームドアの間に乗客が取り残されホームから転落し、救助のため全線で運転を見合わせたというできごとがあった。
リニモではこの人身障害事故の再発防止対策として、全列車に係員が添乗し、乗客の安全確認を行うことになった。
しかし、全列車に係員を乗務させるための要員を確保することが困難になった。
そこでリニモは、「臨時ダイヤ」として列車の減便を実施し、各駅の発車時刻を変更した。監視カメラ増設などの安全対策が整うまでという。この安全対策は10月初旬に完了する予定であり、その後もとのダイヤに戻すという。
幸運だったゆりかもめのコミケ輸送
横浜シーサイドラインの逆走事故は、車両内での断線が原因で、それを検知できなかったことが原因となっている。リニモの場合は、車両とホームドアの間に乗客がいるのを感知できなかったことに原因がある。
ゆりかもめの今回のコミケ輸送では、自動運転の限界に挑戦したかのようなダイヤを組んでいた。そのため、一つトラブルが発生したら大混乱になる可能性もあった。
こういったトラブルが、コミケ期間中にゆりかもめで起こらなかったことは、幸運なことだった。どんなに整備を丁寧にしても意外なところからトラブルが起こる可能性があり、そういったトラブルがこの期間に起こらなかったことは、日々のゆりかもめの整備が綿密だっただけではなく、幸運も作用したということがいえる。一方で、今後の課題としてはトラブルや混乱への対処の強化が求められている。
臨海副都心エリアでは東京2020大会も含め、大規模なイベントが続く。イベントを支える交通機関の安定した運行を望みたい。