【F1】愛されるメキシコの英雄、セルジオ・ペレス!初のポールトゥウインを達成した彼の魅力とは?
F1界きっての好感度ナンバーワンドライバーといえば、誰もがセルジオ・ペレス(レッドブル)を思い浮かべるだろう。
2021年に「レッドブル」に加入し、2022年はコンストラクターズ王座獲得に貢献したペレス。ここまで2年間、チームのエースであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と常に比較され、援護役に徹してきた印象だが、2023年の第2戦サウジアラビアGPではキャリア初のポールポジションからの優勝(ポールトゥウイン)を達成。
F1参戦レース数も250戦に迫ろうというベテランは今、キャリア最高潮の時を迎えている。
愛される笑顔と魅せるレース
セルジオ・ペレスがF1で人気者である理由は、彼の穏やかな笑顔であろう。メキシコ出身のペレスだが、世界各国のドライバーが参戦する最高峰国際レースのF1において、国籍関係なく高い人気を集めているのだ。
とはいえ、「レッドブル」加入前まではどちらかというと地味な存在で、2013年に「マクラーレン」から1年で解雇された時点で、彼がトップチームで走ることはもう無いだろうと考えられていた。
しかし、2014年から2020年まで在籍した「フォースインディア/レーシングポイント」では常にポイント獲得争いを展開し、年に1、2度は表彰台に登壇する走りを披露。ちょうど時代は「メルセデス」の独走状態であり、テレビ中継の国際映像が退屈なメルセデス同士の争いよりも中団のバトルにフォーカスを当ててレース映像を作るようになり、その中でバトルに競り勝つペレスの姿は世界中のファンの心を捉えていった。
「フォースインディア/レーシングポイント」時代にリタイアしたレースはごく僅か。2019年に8戦連続でノーポイントに終わった事があったものの、ペレスは常にレースを完走し、多くの入賞ポイントを獲得してきた。
そんな仕事人ぶりが高い評価を受ける中でも、世界的に人気が上昇し、政治的な力関係が変化してきたF1で2020年に、ペレスはシート喪失の危機を迎えてしまう。「レーシングポイント」に初優勝をもたらしたにも関わらず放出が決定し、行き場を失っていたペレスに白羽の矢を立てたのは「レッドブル」だった。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)の女房役に「レッドブル」は2021年シーズンからセルジオ・ペレスを起用すると発表。これはレッドブル育成枠の若手を起用するも、そのパフォーマンス不足に苦慮していた「レッドブル」にとって、苦肉の策とも言える起用だった。
ところが、この起用は正解だった。30代を迎えていたセルジオ・ペレスは加入6戦目となるアゼルバイジャンGPで優勝。そして2年目の2022年はついにF1最大のレースイベント、モナコGPでも優勝を飾ることになったのだ。
市街地コースを得意とするペレス
セルジオ・ペレスはこれまで5回の優勝、28回表彰台に登壇しているが、その多くは鈴鹿やスパ・フランコルシャン(ベルギー)といったような有名な常設サーキットではなく、波乱が起きやすい市街地コースなど多くのドライバーが走り込んでいないコースである。攻略が難しく、不確定要素が増えやすいコースほどペレスは結果を残す事が多い。
「ザウバー」時代の2012年には公園を使った市街地コースの一つ、カナダGPで3位表彰台。「フォースインディア」時代にはまだ2回目の開催だったロシアGP(2015年)、モナコGP(2016年)、アゼルバイジャンのバクー市街地で初開催されたヨーロッパGP(2016年)などで3位表彰台を獲得。
チームの状態も最高潮だった「レーシングポイント」の2020年は、彼がF1デビューを果たす前に開催が無くなっていたトルコGPで2位表彰台。そして、初優勝はいつものバーレーンGPとは異なるレイアウトで行われたサクヒールGPだった。
レッドブル加入後の初優勝はフェルスタッペン、ハミルトンがリタイアになったレースではあるが、得意とするバクー市街地コースのアゼルバイジャンGP。昨年はサウジアラビアGPでキャリア初のポールポジション、モナコGPでも優勝、そしてシンガポールGPで優勝を飾り、今年のサウジアラビアGPで初のポールトゥウインを勝ち取った。
ペレスはまさに現代の市街地コースマイスターとも言える実績を残してきているのだ。今季はこれからオーストラリアGP(アルバートパーク)、アゼルバイジャンGP(バクー市街地)、マイアミGP(仮設サーキット)などストリートコースあるいはそれに近い特性のコースが続く。そういう意味では今季は前半戦からペレスがどれだけチームメイトのマックス・フェルスタッペンに肉薄できるかが大きな見どころと言える。
今やF1人気を牽引する存在に
「チェコ」の愛称でファンからの声援を浴びるセルジオ・ペレス。彼に最も熱い視線が集まるのは今季も第20戦として設定されているメキシコシティGPだ。
2015年に改修され、開催が復活した母国メキシコでのレースはF1のカレンダーの中でも最も熱狂的な雰囲気となるレースの一つで、野球場のスタジアムを流用したスタジアムセクションでは大歓声が巻き起こる。「レッドブル」加入後のペレスは2021年、2022年と2年連続で3位表彰台に登り、地元ファンの喝采を受けた。
「母国で表彰台に乗れるなんて最高の気分だよ、さぁテキーラを飲もうか!」
2021年に母国で初めて表彰台に立った時、チームへの無線でこう語ったペレス。勢いに乗る今季、「レッドブル」の速さは圧倒的であり、地元メキシコシティGPでの初優勝どころか、チームメイトのマックス・フェルスタッペンとのチャンピオン争いで迎える可能性も十分にある。
そうなった時、まさに流れはアメリカ大陸のF1人気を牽引するセルジオ・ペレスに流れは向いてくるはずだ。メキシコだけでなく、隣国アメリカで3大会も開催される今年のF1はラテンの血が騒ぐメキシコの熱狂的なファンによって大いに盛り上がることになるだろう。ペレスは今やF1に欠かせない存在になった。
中堅チームを献身的に支え、奇跡的にトップチームのシートを手に入れたベテランはメキシコ初のワールドチャンピオンを目指す!