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【F1】開幕戦の主役はアロンソ!!約2年ぶりの表彰台で輝きを取り戻した41歳。

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
フェルナンド・アロンソ(写真:ロイター/アフロ)

現役最年長ドライバーが魅せた!

2023年、「F1世界選手権」の開幕戦・バーレーンGPでフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)が好レースを展開して3位表彰台を獲得。F1のポディウム(表彰台)に帰ってきた。

決勝レースでオーバーテイクショーを展開したアロンソはファン投票でそのレースのMVPを決める「Driver of The Day」も獲得。レッドブル勢独走の開幕戦で、ファンを大いに興奮させたのは、誰も文句のつけようがない、41歳の走りだった。

移籍後の初レースで表彰台を獲得

今季、アルピーヌを離れて「アストンマーティン」に移籍したアロンソ。今季の新車AMR23は僅か3日間という短期日程で行われた事前テストから不気味な速さを見せ、勢力図の中で2番目に位置しているのではという観測もあった。

アストンマーティンAMR23に乗るアロンソ
アストンマーティンAMR23に乗るアロンソ写真:ロイター/アフロ

第2のレッドブルと呼ばれるほどAMR23のデザインはレッドブルのマシンに似ている。それもそのはず、AMR23は「レッドブル」に昨年春まで所属した空力エンジニアのダン・ファローズが手がけたマシンだからだ。特徴的なサイドポンツーンのデザインを持つ、空力のスペシャリストが手がけたマシンの戦闘力は驚くほど高い。

バーレーンGPが幕を開けるとAMR23は隠していた爪を見せる。フリー走行2回目と3回目でフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は首位を獲得。予選ではポールポジションのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に対し、0.6秒差の5番手につけた。

決勝では5番手からスタートし、チームメイトのランス・ストロール(アストンマーティン)に追突されるも、ジョージ・ラッセル(メルセデス)、ルイス・ハミルトン(メルセデス)と激しいバトルを展開。最後は決勝レースペースが思うように上げられなかったカルロス・サインツ(フェラーリ)を華麗にオーバーテイクし、自力で3位表彰台を獲得したのだ。

レースを通じて国際映像もずっとアロンソをテイクしっぱなしだった。F1の中でも名勝負の一つに数えられても何ら不思議ではないアロンソのレースに世界中のファンは釘付けになっていった。

「僕たちがここまで競争力があるとは想像できなかった。バーレーンではレッドブルに次ぐ2番目に速いクルマを手にしていると分かったし、チームを誇りに思うし、アグレッシブにこれからも攻め続けるだけさ」

キャリア99回目の表彰台に登ったアロンソの目は全盛期の輝きを取り戻した。

紆余曲折あったアロンソのキャリア

現役最年長41歳。ドライバーの若年化が進む現代のF1において、アロンソのパフォーマンスはサプライズ以外の何ものでもない。ましてやキャリアのピークは過ぎたと考えられていたベテランが、棚ぼたではない展開で表彰台を獲得するとは。

2005年 ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)と対決した若き日のアロンソ(ルノー)
2005年 ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)と対決した若き日のアロンソ(ルノー)写真:アフロスポーツ

20代の若き日にF1ワールドチャンピオンを2回獲得し、ミハエル・シューマッハを上回る勝利とチャンピオン獲得の記録を塗り替えても何らおかしくはなかった天才、フェルナンド・アロンソ。彼のここまでの代表的なキャリアを年表にしてみよう。

2001年 ミナルディ / F1デビュー、ノーポイント

2002年 F1レギュラーシートはなく、テストドライバーとして活動

2003年 ルノー / 当時の史上最年少優勝を達成

2004年 ルノー / ランキング4位を獲得

2005年 ルノー / 当時の史上最年少ワールドチャンピオンに輝く

2006年 ルノー / 7勝をマークし、2年連続のワールドチャンピオンに

2007年 マクラーレン / 新人のハミルトンとの確執、1年で離脱

2008年 ルノー / 日本GPを含む2勝

2009年 ルノー / 優勝なし

2010年 フェラーリ / 移籍後の初戦で優勝、ランキング2位

2011年 フェラーリ / 優勝1回のみ

2012年 フェラーリ / 優勝3回、ランキング2位

2013年 フェラーリ / 優勝2回、ランキング2位

2014年 フェラーリ / 優勝なし ランキング6位

2015年 マクラーレン / ランキング17位

2016年 マクラーレン / ランキング10位

2017年 マクラーレン / ランキング15位 

モナコGPを欠場してインディ500に挑戦

2018年 マクラーレン / ランキング11位

並行してトヨタからWECに参戦 / ルマン24時間優勝

インディ500では屈辱の予選落ち

2019年 F1には不参加 / ルマン24時間優勝

2020年 F1には不参加 / ダカールラリーとインディ500のみに参戦

2021年 アルピーヌ / 3位表彰台を含む入賞15回

2022年 アルピーヌ / 入賞14回で8年ぶりのシングルランキング獲得

2023年 アストンマーティンに移籍

アロンソはいつ全盛期だったのかと問われると、記録上はルノーで2度チャンピオンに輝いた2000年代ということになるだろう。しかし、そこからドライバーとして下降線を辿ったわけではないところにアロンソの凄さがある。

トヨタでル・マン24時間レースにも参戦し優勝した
トヨタでル・マン24時間レースにも参戦し優勝した写真:アフロスポーツ

チャンピオン獲得が僅か2回だけになってしまったのは、フェラーリ時代はレッドブルという驚速の新興チームが立ちはだかり、マクラーレン・ホンダ時代には無惨なほどの戦闘力不足に悩まされた。

2018年を最後にF1から引退状態になるも、2021年にアルピーヌ(ルノー)から電撃的なF1復帰。40代を目前にし、キャリアの締めくくりに入ったと誰もが思った参戦だったが、戦闘力は決して満足できるものではなかったアルピーヌで入賞を繰り返し、トップ10のポジションに戻ってきたのだ。

真の鉄人、アロンソの全盛期はこれから

ドライバーとして新たなキャリア形成を目指し、ル・マンやインディ、ダカールラリーなどに挑戦するというモラトリアム期間を経て、F1でまたもや新たなキャリアを作り上げようとしているフェルナンド・アロンソ。

アロンソと昨年限りで引退したかつてのライバル、セバスチャン・ベッテル
アロンソと昨年限りで引退したかつてのライバル、セバスチャン・ベッテル写真:ロイター/アフロ

アストンマーティンの移籍は「大きな賭けだった」と本人も認めているが、アルピーヌよりもランキングが下位のアストンマーティンへの移籍は誰もが理解に苦しむものだったと言える。また、過去にもマクラーレンでルイス・ハミルトンと確執を生んだり、マクラーレン・ホンダの時代には無線交信でホンダのパワー不足を露骨に批判したこともあったため、移籍先のアストンマーティンでまた混乱を起こして終わるのではと多くの人が予想していたのだ。

ところが、その結果は予想とは真逆のものだった。グリッド上で2番目に高いポテンシャルを持つマシン、アストンマーティンAMR23を手にし、すでに彼の視線は最強パッケージのレッドブル・ホンダを倒すことに向いている。

1-2フィニッシュを飾ったレッドブルの2人とシャンパンファイトをするアロンソ
1-2フィニッシュを飾ったレッドブルの2人とシャンパンファイトをするアロンソ写真:ロイター/アフロ

フェルナンド・アロンソとアストンマーティンは複数年の契約を結んでいる。チームメイトのランス・ストロールの父でチームオーナーのローレンス・ストロールはアロンソの加入を契機にトップチームへと躍進する野望を抱いており、アロンソもその高いモチベーションに刺激を受けているという。

開幕戦の結果を見て分かる通り、今季もレッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンの優位は揺るがないだろう。メルセデスやフェラーリは予想以上の苦境に立たされている。そんなシーズン序盤戦の見どころは、動物的な勘でバトルを展開するフェルナンド・アロンソに集まっていくことになるだろう。

2013年以来、10年ぶりのF1優勝を成し遂げられるか楽しみだ。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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