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日本グランプリが春開催に!注目の2024年F1シーズン開幕戦の注目ポイントは?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
F1 フェラーリ(写真:ロイター/アフロ)

自動車レースの最高峰「F1世界選手権」の2024年シーズンが2月29日(木)からバーレーン・インターナショナルサーキットのバーレーンGPで開幕した。同グランプリの決勝レースは3月2日(土)に行われ、12月8日(日)に決勝が行われる最終戦アブダビGPまで全24戦という史上最多のレース数で行われるシーズンとなる。

鈴鹿・F1日本グランプリは4月開催に

来年2025年に7度のワールドチャンピオン、ルイス・ハミルトン(メルセデス)がフェラーリに移籍することが発表され、世界が衝撃を受けたものの、今年2024年のドライバーラインナップは昨年の最終戦と変わらないメンバーで争われる。F1は2026年に大幅な車両規定の変更を予定しているが、それまではマシンに関する規定も概ねは変わらず現状維持となり、変化に乏しいシーズンオフとなった。

レースを見る上で変わった部分といえば「アルファロメオ」が「キック・ザウバー」に、そして日本の角田裕毅が乗る「アルファタウリ」が「RB」に名称変更をしたことぐらい。あとはレース形式としては24戦中6戦でスプリントレースが開催されるが、金曜日にスプリント・シュートアウトが行われ、土曜日にスプリントレース、その後、決勝に向けた予選とレースウィークの流れに一部変更が加えられている。

緑のカラーリングになったキック・ザウバー
緑のカラーリングになったキック・ザウバー写真:ロイター/アフロ

ただ、日本のファンにとっては大きな変更点がある。鈴鹿サーキットの日本グランプリは第4戦(4月7日・決勝)に変更となり、初の春開催となる。これまで日本グランプリは秋のシーズン終盤戦に設定されており何度もチャンピオン決定の舞台になってきたが、今年からはシーズン序盤の勢力図争いを楽しむことになるわけだ。

日本では新年度が4月から始まるため忙しい人が多い時期であり、イベント開催日程としては厳しい。しかし、世界を転戦するF1は国から国への移動で排出されるCO2量の削減を重要視しており、オーストラリア→日本→中国とアジア・オセアニアを転戦するスケジュールに組み込まれた。

鈴鹿サーキット
鈴鹿サーキット写真:代表撮影/ロイター/アフロ

新生RB、角田裕毅の活躍にかかる

これまでの秋開催ではシーズンの成り行きを見ながらチケットの発売を待つという感じだったが、今年はすでにチケットも発売されており、開幕から1ヶ月でF1日本グランプリがやってくる。なかなかスケジュールが組みづらい日程ではあるが、開幕戦の結果次第では鈴鹿に行こうと決断する人も出てくるだろう。

その鍵となるのが4年目のシーズンを迎えた日本人ドライバー、角田裕毅の動向だ。前述のようにチームは「RB」に名称変更(正式名称:ビザ・キャッシュアップ・RB)。ホンダが製作し技術協力するパワーユニットを使うことには変わりはないが、開幕戦ではやはりそのマシンの仕上がり具合に注目が集まる。

角田裕毅
角田裕毅写真:ロイター/アフロ

昨年のマシンAT04は戦闘力が低く、特に前半戦は苦戦を強いられた。しかし、逆にパフォーマンスの低いマシンのポテンシャルを引き出し、ポイント獲得に向けて素晴らしいレース運びを展開した角田裕毅はF1ファンや関係者から高い評価を受けることになった。デビュー当時は爆発的な速さで注目を浴びながらも、成績が安定しなかった角田。奔放な無線での発言などもピックアップされて、メンタル面での弱さが取り沙汰された時代もあった。しかし、3年目で大きく成長し、F1での地位をなんとか築き上げることができた。

今年はF1で4年目のシーズンだ。昨シーズン後半戦は続けざまにポイント獲得に成功(最高位6位)。今季のニューマシン、VCARB01が終盤戦の勢いを維持できているかどうかは角田の将来を大きく決める重要なポイントになる。

チームメイトはシーズン途中から加入したダニエル・リカルド。通算8勝をマークした実績の持ち主も角田の将来を決めるベンチマークとなる。事前テストでRBのマシンは大きなポテンシャル向上を果たしているかもしれない兆候が見え、開幕戦バーレーンGPでの結果に期待がかかる。

角田裕毅
角田裕毅写真:ロイター/アフロ

角田は次なるステップに向けて大一番のシーズンになる。マシンの本当のポテンシャルがどうか次第ではあるが、優勝経験者のリカルドよりも良い成績を残して3レースを終えれば日本グランプリの盛り上がりは必至だろう。過去2度の出走で入賞が叶わなかった鈴鹿での好成績が期待できる状況になれば良いのだが。

フェルスタッペン独走を止めるのは?

車両規定がほとんど変わっていない2024年。近年の例を見ても分かるとおり、レギュレーションの大幅変更がないと、大枠の勢力図は変わりづらい。昨年22戦中21勝をマークした「レッドブル」はその速さを維持すると考えられている。ホンダが開発に携わったパワーユニットを搭載するだけに、日本のファンも期待しているところだろう。

しかし、「レッドブル」そしてエースのマックス・フェルスタッペンの独走が続くとなると、F1の人気は危ういかもしれない。彼らを脅かすライバルが序盤戦から好レースを演じてくれなければ2024年の注目度は下がり切ってしまう。

マックス・フェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン写真:ロイター/アフロ

ライバルの最有力となるのは事前テストでも好調だった「フェラーリ」。来季からルイス・ハミルトンの加入が決まっているが、シャルル・ルクレール、カルロス・サインツの2人はレースシミュレーションでも好感触を得ている。「フェラーリ」は戦略ミスで勿体無いレースをしてしまうことが目立つが、昨年はテストの段階から苦戦していただけに、今季はレッドブルに真っ向勝負を仕掛けることを期待したい。

フェラーリ
フェラーリ写真:ロイター/アフロ

そしてもう一つの注目は「マクラーレン」だろう。昨シーズンはカタールGPのスプリントレースで1勝を飾り、コンストラクターズランキング4位。シーズン後半はランド・ノリス、オスカー・ピアストリ共に表彰台の常連となり、日本グランプリのダブル表彰台も記憶に新しいところ。24歳のノリス、22歳のピアストリ共に今後のF1を牽引する有望株であり、規定が変わる2026年以降の契約もすでに締結。伸び盛りの若手たちの決勝での初優勝が今季見れるかもしれない。

マクラーレンのランド・ノリス
マクラーレンのランド・ノリス写真:ロイター/アフロ

気になるのは長年トップチームとして君臨した「メルセデス」。今季限りでハミルトンが離脱することになっており、その後釜探しも含めて今季のマシンのポテンシャルが気になるところ。初日のフリー走行では1-2の位置につけたが、果たして本当の実力はいかほどかまだまだ不透明だ。

各チームの本当の勢力図が見えてくるのは予選、そして今季初となる決勝だ。レッドブルを駆逐するライバルは現れるのか、それとも昨年と変わらないのか。F1史上最長のシーズンがいよいよ幕を開ける。

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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