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人気イタリアンの「子連れ客12か条」が大反響! 注意書きは全て本当に正しいか?

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

イタリア料理は日本でも人気

日本でも人気がある外国料理はイタリア料理です。

特にピッツァやパスタは、日本でも定着している料理であり、老若男女に受け入れられている定番メニューであるといえるでしょう。カジュアルなイタリアンではピッツァもパスタも、高級なイタリアンでもパスタは提供されるだけに、イタリア料理店では食べ慣れた料理が食べられるという安心感があります。

イタリアンなら安心できるということから子連れにも人気ですが、最近あるイタリアンバールによる子連れ客への注意書きが、大きな反響を呼びました。

イタリアンバールの発信が大きな反響

大反響のあったイタリア料理店とは、東京都品川区中延にある「イタリアンバールフォセッタ」。第二京浜道路と交差する三間通り沿いに位置しており、中延駅から徒歩5分とアクセスは良好です。

生パスタとナポリ風ピッツァが自慢の店で、食べログの口コミ集計による予算では、ランチは1,000円から1,999円、ディナーは2,000円から2,999円と、リーズナブルな部類に入ります。

バールと謳われているように、軽食喫茶をもとにする業態であり、気軽に利用できる店であるといえるでしょう。コーヒーだけではなく、お酒も提供されているので、夜はやや大人向けの雰囲気になるといえます。

12項目の注意書き

このイタリアンバールでは、子連れ客に対して、以下のような12項目の注意書きが掲載されています。

当店ではお子様連れのお客様も歓迎しておりますが以下の注意点を守っていただくようお願いしています。

・ベビーカーの入店はご遠慮ください

・店内を歩かない、走らない、席の上に立たない

・トイレは大人と一緒に

・大きな声を出さない(泣き止まない場合は一度外へ出てあやしてください)

・故意に物音を立てない(椅子を蹴る、食器やテーブルを叩くなど)

・動画やおもちゃの音は最小限に

・お店のもので遊ばない

・飲食物の持ち込みはご遠慮ください(離乳食はお声かけいただければOKです)

・ゴミはお持ち帰りください

・席でオムツを替えないでください

・お子様も1ドリンク・1オーダーをお願いします

・席や床を汚した場合はお声かけください

以上のことが守られない場合、言い聞かせても改善されない場合はスタッフよりお声掛けさせていただいております

12項目の注意書きは店舗に貼られていたり、公式サイトに記載されたりしており、つい最近、Twitterで大きな話題となりました。

反響の多くは、件のイタリアンバールに賛同する声です。それぞれの注意書きについて考察していきましょう。

「ベビーカーの入店はご遠慮ください」

ベビーカーによって店内のスペースが占有されてしまいます。入り口や外などに置き場所があればまだよいですが、置き場所がなければテーブルの側に置くことになります。そうなると、通路を狭くして他の客やスタッフが通りづらくなったり、隣のテーブルに侵入して窮屈にさせてしまったりするでしょう。場合によっては、使いにくい席ができることになり、客席の稼働率が落ちてしまうかもしれません。

「店内を歩かない、走らない、席の上に立たない」

子どもが店内を動き回ったり、席の上に立ったりすると、怪我をするおそれが格段に上がるでしょう。それだけではなく、店内でスタッフや他の客と接触する危険性があったり、子どもとの衝突を回避しようとした人が怪我を負ったりしてしまうかもしれません。子どもが店内を動き回ることによって、オペレーションがやりづらくなるのは確かです。

「トイレは大人と一緒に」

子どもだけでトイレを利用すると、汚してしまう可能性が高くなります。大人がいれば、汚してしまってもきれいにできますが、子どもだけでは、汚したままになるのは明白。トイレで何らかのトラブルが発生した時にも対応できません。トイレは男女兼用の個室がひとつだけという店も多いので、この後に利用する客にも迷惑をかけてしまいます。

「大きな声を出さない(泣き止まない場合は一度外へ出てあやしてください)」

「故意に物音を立てない(椅子を蹴る、食器やテーブルを叩くなど)」

「動画やおもちゃの音は最小限に」

どれも店内の騒音となり、居心地が悪くなったり、会話を妨げたりしてしまいます。音は耳を塞がない限り飛び込んでくるものなので、飲食店の食事では非常にやっかいなものです。よく食事における不快なマナーとして、くちゃくちゃ食べる音やパスタをすする音、スープやドリンクをズズズと飲む音が挙げられます。これらが忌み嫌われているのは、聞きたくなくても聞こえてしまうことも大きな要因でしょう。

ファミリーレストランやファストフードとは違い、お酒を嗜むような飲食店であれば、デートや大切な相手と食事している場合もあり、雰囲気もぶち壊しとなってしまいます。椅子を蹴ったり、食器やテーブルを叩いたりすれば、傷つけたり、損壊したりする可能性もあるでしょう。

「お店のもので遊ばない」

店の備品で遊ぶと、それが共用物であれば他の客にも迷惑をかけてしまいます。スタッフが使うものであれば、作業ができなくなり、オペレーションが滞ってしまうでしょう。子どもが怪我をしてしまったり、壊してしまったりするおそれもあります。

「飲食物の持ち込みはご遠慮ください(離乳食はお声かけいただければOKです)」

飲食店に食べ物や飲み物を持ち込むことは、基本的に禁止されています。なぜならば、飲食店の空間にはコストがかかっており、注文してお金を支払ってくれる人に対してだけ、利用してもらうことを意図しているからです。ただ、乳幼児の場合には、オーダーしたくても食べられるものがないことがあります。飲食店で離乳食は用意されていないので、スタッフに伝えれば持ち込んでよいということです。

「ゴミはお持ち帰りください」

知らない人も多いですが、飲食店がゴミを処理するには費用がかかります。事業系一般廃棄物や産業廃棄物などの事業ゴミを処理するには、お金がかかるのです。

廃棄物処理手数料について/東京二十三区清掃一部事務組合

自治体や委託業者によって料金は異なりますが、たとえば、東京都23区では、1キログラムあたり持ち込みが15.5円で運搬含めると40円(2023年10月1日からはそれぞれ17.5円と46円)。委託業者に処理してもらうのであれば、手数料が加味されるので費用が2倍くらいになります。

客が飲食店で食事してゴミを出してしまうのは仕方ありませんが、余計なゴミを出すと、飲食店に余計なコストがかかることも意識しなければなりません。

また、客が多くのゴミを出すと、退店後の片付けにも余分な時間がかかってしまいます。そうなると、客席回転率が下がったり、次の入店客を待たせたりしてしまうでしょう。

「席でオムツを替えないでください」

席でオムツを交換することは、食品衛生としてあまり好ましくありません。見た目や臭いの問題もあり、他の客がおいしく食事できなくなってしまいます。店内もしくは施設内に必ずトイレが設置されているので、スペースの問題がない限りは、トイレなどダイニング以外の場所でオムツを交換するのが望ましいです。

「お子様も1ドリンク・1オーダーをお願いします」

飲食店が利用ルールを決められるので、1人1ドリンク、1オーダーを採用しているのは、特に問題ありません。パスタやピッツァであれば子どもでもオーダーしやすいでしょう。まだ離乳食しか食べられない幼児であれば、前述したように件の店では、オーダーせずに持ち込みの離乳食を食べることが許可されています。

「席や床を汚した場合はお声かけください」

料理を落としたり、ドリンクをこぼしたり、嘔吐したりした場合、スタッフに伝えれば適切に処理してくれます。しかし、店を汚しておいて、黙っている客も少なくありません。

最悪の場合には損害賠償になるので、いいにくいのかもしれませんが、後からバレてしまうのは悪手です。最初から申し訳なく謝っていればまだしも、店から指摘されて明るみに出るのは印象が悪く、それこそ弁償してほしいといわれるでしょう。

他テーブルの客や次の客にも迷惑がかかるので、些細なことでも必ずスタッフに伝えるべきです。

明文化の意味

ここまで12項目を説明してきましたが、どのように感じたでしょうか。どれもごく常識的なことだと思います。文面化すると厳しく感じられますが、逆にいえば、このように明文化しなければ守られないということです。明文化せずに注意すれば、いきなりいわれても知らないと、文句をいう客もいるでしょう。

ルールに納得

ノーショー(無断キャンセル)やドタキャン(直前キャンセル)すると、その損害分がいずれ、価格に転嫁されてしまい、他の客が迷惑を被ってしまいます。これと同じように、ここで挙げられていることを守らなければ、一部のよくない客のせいで、他のよい客が、直接的な被害や間接的な不利益を被ってしまいます。

件の店も述べていますが、私も、小さい子どもを含めて多くの人に飲食店へ訪れてもらいたいです。それだけに、飲食店がしっかりとルールを明文化して、客も理解・納得した上で入店し、楽しい食体験を紡いでもらえたらと思います。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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