年齢別にみた所得税・社会保険料負担額のリアル-高齢世代にも社会保険料が重くのしかかる現実-
昨日、「おじいちゃん政党」に逆戻りした自民党には所得税減税は無理?【追記アリ】という記事を書いたばかりですが、報道(「岸田首相、所信演説で減税意欲表明へ 所得税念頭、党税調に検討指示」(2023年10月17日 時事通信))によれば、岸田総理は所信演説で所得税減税を念頭に減税意欲を表明されるとのことです。
もちろん、実際に減税するのと減税意欲を表明するのとでは雲泥の差がありますが、「世論の動向を見定める方針」とありますから、所得税減税を求める声が大きくなれば、必要な措置が取られるのではないでしょうか?
一方で、所得税減税もさることながら社会保険料の引き下げを求める声も根強くあります。
そこで、総務省統計局「家計調査」により、年齢別に所得税負担額と社会保険料負担額をグラフにしてみたのが下図です。
上図から明らかなように、各年代とも所得税負担額よりも社会保険料負担額の方が重いことが分かります。
年金、医療、介護給付があるとはいえ、高齢世代にとっても、社会保険料は家計の重しであるといえます。
さらに、社会保険料は労使折半とされ、事業主負担があります。経済学的には、事業主負担は私たちの賃金を引き下げていると考えるので、機械的には実は私たちの社会保険料の負担額は給与明細記載額の2倍であるというのが実態ともいえます。
機械的に私たちの社会保険料負担額を2倍にしたものを真の社会保険料負担額とすれば、図1は図2のように修正されます。
事業主負担は本来私たちの賃金から支払われていると考えれば、社会保険料負担は所得税負担とは比べ物にならないほど大きいことが確認できます。
いずれにしても、社会保険料の事業主負担は企業から見れば人件費に他なりませんから、社会保険料の軽減は、私たちの家計にとっても、企業にとっても、喫緊の課題であることが分かります。
現状、岸田総理は、国民の批判の声に右往左往というイメージですが、落ち着いて持ち前の「聞く力」を発揮されれば、数多の雑音があっても、自ずとやるべき政策が見えてくると思います。
社会保険料の引き下げについては、これは経済対策というよりは社会保障制度全体の見直しの中でしっかり議論してほしいと思います。