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2023年時点で平均時給1500円を下回っている職種とは?

島澤諭関東学院大学経済学部教授
写真はイメージです(写真:アフロ)

最低賃金を1500円にするという公約は与党野党問わず提示されています。しかし、石破茂首相が仰るような2020年代までにというのは少々性急すぎて実現が難しいのではないか?というのは昨日の記事でお伝えしたところです。

石破内閣の2020年代に最低賃金1500円への引き上げ目標は現実的なのだろうか?

最低賃金の引き上げももちろんもっともなのですが、そもそも、職種によっては最低賃金どころか平均的な時給が1500円を下回っている職種もあるのです。

厚生労働省「賃金構造基本調査(令和5年)」によれば、平均時給が1500円を下回っている職種は下表の通りとなります。

表 平均時給が1500円を下回っている職業((出典)厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」により筆者作成)
表 平均時給が1500円を下回っている職業((出典)厚生労働省「賃金構造基本統計調査(令和5年)」により筆者作成)

もちろん、最低賃金は経済学的には市場で決まるはずの賃金水準への介入であるのに対して、上記賃金は市場で決まった賃金そのものであり、決定メカニズムは異なります。

しかし、最低賃金を市場の外からの圧力によって1500円に引き上げていく過程で当然これらの職種の平均賃金も最低賃金の引き上げに対応して改善されていくことになる訳ですが、いずれも日常生活に必要不可欠ですし、やはり生産性の向上や正当な対価の支払いなどとセットで引き上げられていくのでなければ、経済に様々な歪みが生じるのは間違いないと思います。

要するに、最低賃金の引き上げは、経済全体の底上げがあってはじめて可能になるということで、地域や産業、職種などのバランスを無視した最低賃金の引き上げは、様々な職種に悪影響を与えてしまうのだと思いますが、いかがでしょうか?

関東学院大学経済学部教授

富山県魚津市生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁(現内閣府)、秋田大学准教授等を経て現在に至る。日本の経済・財政、世代間格差、シルバー・デモクラシー、人口動態に関する分析が専門。新聞・テレビ・雑誌・ネットなど各種メディアへの取材協力多数。Pokémon WCS2010 Akita Champion。著書に『教養としての財政問題』(ウェッジ)、『若者は、日本を脱出するしかないのか?』(ビジネス教育出版社)、『年金「最終警告」』(講談社現代新書)、『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞出版社)、『孫は祖父より1億円損をする』(朝日新聞出版社)。記事の内容等は全て個人の見解です。

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