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前DeNA髙田琢登、古巣の26年ぶり日本一の日に猛アピール!「体が壊れるまで野球を続けていきたい」

菊田康彦フリーランスライター
11月3日にくふうハヤテのトライアウトに参加した前DeNAの髙田琢登(筆者撮影)

 セ・リーグ3位からクライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズではパ・リーグ優勝の福岡ソフトバンクホークスを下して、日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズ。ナインが26年ぶりの歓喜に沸いた、その日の昼間。今季限りでチームから戦力外通告を受けた22歳の若者が、“生き残り”をかけて必死に腕を振っていた。

地元くふうハヤテのトライアウトに「それはぜひ受けたい」

 若者の名は髙田琢登(たかだ・たくと)。静岡商業高校から2020年のドラフトでDeNAに6位で指名されたサウスポーは、入団4年目の今年、10月1日に球団から戦力外通告を受けた。この4年間、一軍のマウンドに上がることはなく、二軍のイースタン・リーグでも勝ち星なし。それでもまだ野球をあきらめるわけにはいかなかった。

「(DeNAでは)一軍の舞台で全く投げれていないってのはもちろんですし、自分の中ではやっぱ体が壊れる(まで)、野球が続けられる限りは続けていきたい。一番、野球が好きなので」

 そんな思いで、髙田は11月14日に行なわれるプロ野球12球団合同トライアウトへの参加を決意。さらには今年から二軍のウエスタン・リーグに参加した地元新球団、くふうハヤテベンチャーズ静岡がその前にトライアウトを開催すると知り、こちらへの参加も決めた。

「戦力外(通告)を受けた時点で12球団のトライアウトを受けるって自分の中で決めていて、その時点ではハヤテのトライアウトがあるとは知らなかったんです。ベイスターズのスカウトの方と話してた中で『ハヤテもトライアウトがあるよ』って聞いたので、それはぜひ受けたいという話をして受けることになりました」

打者3人を二ゴロ、二飛、左飛。自己採点は「厳しく見て60点、70点」

 くふうハヤテのトライアウトは、ホームグラウンドのちゅ~るスタジアム清水で11月2日に1次選考、3日に2次選考が実施された。NPB球団在籍経験者は1次選考を免除され、髙田は前埼玉西武ライオンズの高木渉ら他の5人のNPB経験者と共に2次選考に参加。まずはキャッチボール、投内連携などを行なったのち、この日のメインであるシート打撃に臨んだ。

 各打者ともカウント1―1からスタートするこのシート打撃で、髙田は独立リーグの選手ら3人のバッターと対戦。「三塁側、右バッターのインコースにキッチリと投げ切りたいと思ってたんですけど打者3人、左バッターだったので、三塁側に強いボールを投げるという意識で投げていきました」と、「自分の得意な球」というクロスファイアを見せることはできなかったものの、先頭をセカンドゴロ、次打者はセカンドフライ、そして最後はレフトフライと、3人ともしっかり抑えてみせた。

「(自己採点は)厳しく見て60点、70点ぐらいかなと思ってます。まだまだスピードを出せると思いますし、もっとストレートで空振りを取ったり、もっとファウルを取って、カウントを稼いで三振を取るってのがやりたい投球なので。そこはバットに真っすぐが当たっていたので、まだまだかなというふうに思います」

 登板後は冷静に振り返った髙田だが、視察に訪れていたNPB球団の編成担当者にもいいアピールになったはずだ。故郷に誕生した球団であり、DeNAでドラフト同期だった池谷蒼大も在籍するくふうハヤテには「地元のチームで、一度(DeNAの二軍で)試合はさせていただいてるんですけど。やっぱ実家も清水ですし、すごいなんかもうよく来ていた球場で、懐かしいなって思ってます」との思いはあるものの、今は「12球団に残ることをまずは第一に、自分の中で頑張ろうと決めているので」と言う。

古巣DeNAの快進撃に「自分も頑張らなきゃいけないと思います」

シート打撃登板後は現在の心境などについて語った(筆者撮影)
シート打撃登板後は現在の心境などについて語った(筆者撮影)

 現役続行を決めた裏には「父とか母にも『できる限り続けてほしい』という言葉をかけていただいているので、できる限りやりたいと思って(トライアウトを)受けています。仕事にもなっているので自分のためっていうのが一番ですけど、やっぱ親に見てもらう一番の場所でもあるので」と話すように、高校時代の監督でもあった父、そして母にまだまだ野球を通じて親孝行がしたいとの思いもある。

 この日は日本シリーズ第6戦が予定されており、ポストシーズンでの古巣DeNAの快進撃について「(今年は)ファームも優勝(ファーム日本一)しましたし、一軍のほうも毎試合見てますけどとてもいい試合をしているので、自分も頑張らなきゃいけないと思います。(ドラフト)同期の牧(秀悟)さんがキャプテンとして活躍してるので、頑張ってほしいです」と話していたその7時間半後、チームは見事に26年ぶりの頂点に駆け上がった。

 2010年の千葉ロッテマリーンズと並ぶリーグ3位からの「下克上」を成し遂げた“仲間”たち。彼らの偉業も自らの活力にして、今は10日後に控えるプロ野球12球団合同トライアウトに照準を合わせる。

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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