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くふうハヤテからNPB復帰の西濱勇星「ヤクルトはすごい強いイメージ。今度こそ一軍で活躍できるように」

菊田康彦フリーランスライター
9月27日の試合前に取材に応じたくふうハヤテの西濱勇星(筆者撮影)

 今シーズンからプロ野球(NPB)の二軍、ウエスタン・リーグに参加しているくふうハヤテベンチャーズ静岡の西濱勇星(にしはま・ゆうせい、21歳)が、東京ヤクルトスワローズとの育成契約に合意。9月27日にチームのホームグラウンド、ちゅ~るスタジアム清水(略称ちゅ~るスタ)で取材に応じた。

「チームメイトと高いところを目指してやれたことがいいモチベーションに」

「去年オリックスで1年、育成(契約)でやらせてもらって、支配下に上がれず戦力外となってしまったんですけど、またこうやってもう一度チャンスをいただけたので。今度こそ支配下に上がって、一軍で活躍できるように頑張りたいと思ってます」

 ヤクルトとの契約に当たり、そう意気込みを語った西濱。関東学園大学附属高校からBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスを経て、育成ドラフト1位で2023年にオリックス・バファローズに入団するも、わずか1年で戦力外となって今季は新生・くふうハヤテで再スタートを切っていた。

 チームには自身の他にも、共に横浜DeNAベイスターズで実績を残した田中健二朗や倉本寿彦といったNPB経験者がいるものの、大半はアマチュアや独立リーグから入団してきた選手。前者はドラフト指名を受けることなく既存のNPB12球団と契約を結ぶことができるが、後者は育成であろうともドラフトで指名されない限り、そうしたNPB球団とは契約できない。

「(チームメイトの)選手はドラフト(指名)に向けてやってる方がすごい多かったので、その人たちと高いところ(NPB)を目指してやれたということが『自分も頑張ろう』というか、いいモチベーションになってやっていけたかなと思います」

「ストレートが一番大事だと思うので、そこはこだわりたい」

 これまで縁もゆかりもなかったという静岡で、周りの選手から刺激を受けながら今季は主に先発として21試合に登板。リーグ3位の109イニングを投げて4勝8敗、リーグ5位の防御率3.47という成績を残し、二軍のみのくふうハヤテから一軍のある既存のNPB球団への移籍「第1号」となった。

 その西濱の持ち味は、自ら「真っすぐが一番大事だと思うので、そこはこだわりたいと思ってます」という最速154キロのストレート。「球速自体は去年の方がMAX(最速)は速いんですけど、平均(球速)とかボールの伸びとか、質の部分はちょっとこだわっていたので、そういうところは良くなってるなと思ってます」と手ごたえを口にする。

 現役時代は近鉄バファローズ(現在のオリックスの前身球団の1つ)の守護神として活躍した赤堀元之監督も「もちろんストレートに関してはいいボールを持ってます」としながらも「変化球に関しても自分の中でコントロールできるようになれば、また変わった形になると思う。食事の面もそうだし、環境、ウエイト(トレーニング)もそうだし、(ヤクルト入団で)寮に入ればいろんなこともできると思うのでね。練習もいっぱいできると思うので、その辺は楽しみ」と、新たな環境での成長に期待を寄せる。 

 西濱が「(ヤクルトは)自分がドラフトにかかる前、独立リーグの時から見てくださっていたそうで、その時と去年、今年を比較して『すごい成長が見られて、まだまだ伸びしろを感じた』ということで、評価していただいた」と話すように、ヤクルトも今後の彼のさらなる成長を見込んでいる。

「ヤクルトはオリックスと日本シリーズをやってて、すごい強いイメージ」

赤堀監督(19)も見守る前でナインに胴上げされる西濱(筆者撮影)
赤堀監督(19)も見守る前でナインに胴上げされる西濱(筆者撮影)

 そのヤクルトは昨年、今年はBクラスと苦戦が続いている。それでも西濱の印象にあるのは、セ・リーグを連覇し、日本一にも輝いた頃のイメージなのだという。

「おととし、3年前にオリックスと日本シリーズをやってて、すごい強いなってイメージがあったので。そういうところでやれるのは楽しみだなと思います。こういうチャンスをいただいたので、まず支配下に上がれるようにやっていきたいなと思ってます」

 くふうハヤテはこの日から阪神タイガースを相手に今シーズン最後の3連戦を行なっているのだが、今日、28日にヤクルトとの正式契約に臨む西濱が「HAYATE」のユニフォームに袖を通すのはこれが最後。平日の昼間にもかかわらずちゅ~るスタに集まった600人近いファンの前での「ラスト登板」はなかったものの、試合後に「1年という短い間ではありましたが、本当に毎試合毎試合たくさんの応援、ありがとうございました。また引き続き、もしよかったら応援していただけると嬉しいです。本当にありがとうございました」と挨拶を行ない、頭を下げた。

 最後はナインの手で清水の秋空高く胴上げされ、くふうハヤテから送り出された西濱。次はオリックスではかなえられなかった支配下登録という“夢”をかなえる番だ。

(文中の今季成績等は9月27日現在)

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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