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「スイスのジャッジ」がくふうハヤテのトライアウトに。関西独立Lの本塁打王は「清水のジャッジ」になるか

菊田康彦フリーランスライター
「スイスのジャッジ」ことノア・ウィリアムソンは笑顔を絶やさぬ好青年(筆者撮影)

 今年からプロ野球(NPB)の二軍、ウエスタン・リーグに参加したくふうハヤテベンチャーズ静岡のトライアウトが11月2、3日の2日間にわたって、ホームグラウンドのちゅ~るスタジアム清水で開催された。3日の2次選考に参加したのは前日の1次選考合格者に、前横浜DeNAベイスターズの髙田琢登、前埼玉西武ライオンズの高木渉らNPB球団在籍経験のある6選手などを加えた計66名。その中にひときわ大柄な外国人選手がいた。

 身長193センチ、体重104キロという恵まれた体格に、どこかあのアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)を思わせるフォーム。米国ワシントン州のエバレット・コミュニティカレッジから2021年のメジャーリーグドラフトでマイアミ・マーリンズに19巡目で指名され、今年3月には欧州代表として侍ジャパンとの強化試合にも出場した、その選手の名はノア・ウィリアムソン(24歳)。トライアウト終了後、彼を直撃した。

トライアウトのシート打撃で逆方向に二塁打「パワーは僕の持ち味」

──なぜくふうハヤテのトライアウトに?

 僕は去年の12月に初めて日本に来たんだけど、この国が本当に好きなんだ。街の雰囲気、人々、あらゆるものが好きなんだよ。たぶんこの国そのものが好きなんだと思う。僕は母親がスイス生まれで、アメリカとスイスのハーフになるんだけど、日本はアメリカというよりスイスに近い感じがする。日本人の考え方はスイスの人とちょっと似ているところがあるし、すぐに親近感を覚えたよ。今シーズンは関西(独立リーグ)の兵庫ブレイバーズでプレーしたけど、独立リーグは試合数が少ない。僕は見てのとおり身体も丈夫だし(笑)、毎日でも試合がしたいほうだからね。

──カウント1―1から始まるシート打撃では3度打席に立った。

 最初の打席はファウルが多かったから長かったね。全部で8球だったかな。結果はフライアウト(ショートフライ)だったけど、粘れたのは良かったと思う。2打席目は強い当たりのゴロをサードに捕られてしまった。最後の(ライトオーバーの)二塁打は、あれが本来の僕だよ(笑)。

──長打力が自身の持ち味?

 そのとおり。僕は今年、リーグのホームラン王だったんだ。10本打って、2位に大差をつけてね。だからパワーは間違いなく自分の持ち味の1つ。プロ入りしてから、僕は毎年のように単打よりも長打を多く打ってるんだ。長打を打てば点が入るし、試合を動かすことにもなる。それが僕の仕事さ。このチーム(くふうハヤテ)にもそんなふうに貢献できたらいいね。

「巨人のテストを受けた時に『スイスのジャッジ』って書かれてね(笑)」

トライアウト2日目のシート打撃では逆方向へ大きな二塁打を放った(筆者撮影)
トライアウト2日目のシート打撃では逆方向へ大きな二塁打を放った(筆者撮影)

──見た目がどことなくヤンキースのジャッジに似ている。

 ははは、よく言われるよ。先月(読売)ジャイアンツの(新人)テストを受けた時には、記事に「スイスのジャッジ」って書かれてね(笑)。実は僕はマーリンズのマイナーを退団してから、彼と同じコーチに教わったんだ。だからフォームが似てるんだろうね。顔もちょっと似てるって言われるからおかしいよね。

──今後については?

 今はここ(くふうハヤテ)でプレーするというのが一番のオプション。ただ、僕は日本のチームであればどこでも構わないと思っている。日本で野球をすることが来年の目標であり、それが最良のシナリオさ。そして、いつかはNPBのチームでプレーしたいね。

 トライアウトを終え、ユニフォームを脱いだウィリアムソンは常に笑顔を絶やさず、1つひとつの質問に丁寧に答える好青年だった。ルーキー級とA級でプレーしたマーリンズのマイナーでは通算97試合の出場で打率.180、5本塁打、41打点、OPS.589と結果を残せず、3年目の途中でリリースされてしまったが、その後は自らジャッジのパーソナルコーチに教えを乞い、スイングの改善に取り組んだ。

 今季は関西独立リーグの兵庫で43試合に出場して10本塁打を放ち、先月のドラフトで東京ヤクルトスワローズから育成4位指名を受けた松本龍之介(堺シュライクス)の5本を大きく引き離してホームラン王を獲得。その一方で打率.194、53三振と確実性という点では課題が残るが、創設初年度はいずれも両リーグワーストのチーム20本塁打、同333得点と長打力、得点力不足に苦しんだくふうハヤテが、彼のパワーや将来性をどう評価するか。

 今回のトライアウトの合格者は今月中にも発表される見通しで「スイスのジャッジ」あらため「清水のジャッジ」が誕生するのかどうか、注目したい。

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フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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