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毒母に翻弄される10代の少女を演じて。これからはアイドルとして、女優として

水上賢治映画ライター
「彼岸のふたり」で主演を務めた朝比奈めいり  筆者撮影

 今回が長編デビューとなる新鋭、北口ユースケ監督が作り上げた「彼岸のふたり」。

 室町時代の大阪府堺市に実在したと伝わる伝説の遊女「地獄太夫」をモチーフにしたという物語は、家族の愛を知らない少女と彼女につきまといつづける母親の愛憎入り混じる関係に焦点を当てる。

 簡単に言えば、囚われの娘VS毒母。

 児童養護施設から出て新生活をスタートさせた主人公・西園オトセの前に、彼女を育児放棄し虐待も見過ごしてきた母が現れたことから、壮絶な母娘物語が展開していく。

 その中で、オトセを演じているのが、アイドルとして活動する朝比奈めいり。

 「彼岸のふたり」が本格的に演技に取り組むのが初めてだったという中、難役といっていいオトセを演じ切った。

 心に深い傷を負い、複雑な感情を抱えたオトセを演じてどのようなことを感じたのか?

 朝比奈本人に訊く。

「彼岸のふたり」で主演を務めた朝比奈めいり  筆者撮影
「彼岸のふたり」で主演を務めた朝比奈めいり  筆者撮影

とにかくオトセちゃんに幸せになってほしい気持ちでいっぱい

 今回は本編インタビューに収まらなかったエピソードをまとめた番外編。

 まず、今回、オトセを演じ切って、どんな気持ちでいるだろうか?

「オトセちゃんに出会えてよかったです。

 また、こうした演じる機会に巡り合ったことにも感謝しています。

 演じ切ったいまは、前回のお話に重なるところがあるんですけど、とにかくオトセちゃんに幸せになってほしい気持ちでいっぱいです。

 お母さんと縁は切れないと思うので、たぶんちょくちょくお金を渡さなくてはいけないかもしれない。

 おそらくお母さんとの関係で嫌なことがたびたびあるだろうとは思うんです。

 でも、この物語の中で、彼女はひとつ大きな壁を乗り越えている。

 まだ18歳と若いのでこれからいろいろなことがあると思いますけど、希望も込めて彼女はきっとたくましく生きてゆけると信じています」

「彼岸のふたり」より
「彼岸のふたり」より

アイドルになりたくてこの世界に入りました

 では、ここからは朝比奈本人の話を。そもそも芸能の道へと進むきっかけはあったのだろうか?

「とにかく歌って踊れるアイドルが憧れで。

 アイドルになりたくてこの世界に入りました。

 その夢が叶っていま『イロハサクラ』と『Ellis et Campanule』という2つのグループで活動しています」

お芝居の仕事を始めた自分にわたし自身がびっくりしています(笑)

 今回、本格的な演技初挑戦となったが、お芝居の世界に関わるとは思っていなかったという。

「まさか自分がお芝居のお仕事をするとは思っていませんでした。

 だから、いまお芝居の仕事を始めた自分にわたし自身がびっくりしています(笑)。

 小学生のころに養成所のようなところに通っていて、わたしは歌やダンスのレッスンをしていたんですけど、別のスタジオでは演技のレッスンを受けている子たちがいました。

 そのときにお芝居の練習をよく目にしていましたけど、そのときは完全に他人事としてみていて、『自分もやってみよう』ということも思わなかった。アイドルになるために歌やダンスのレッスンに集中していました。

 だから、まさか自分がお芝居のお仕事をするとは思っていませんでした」

「彼岸のふたり」で主演を務めた朝比奈めいり  筆者撮影
「彼岸のふたり」で主演を務めた朝比奈めいり  筆者撮影

こういう感覚を味わったことはいままでなかった

 ただ、今回、演技の仕事に目覚めたところがあったという。

「もちろん初めてのことでいろいろと至らないことも多々あったと思います。

 北口監督をはじめスタッフやキャストのみなさんにほんとうに助けていただいて、オトセちゃんを演じ切ることができた。

 多くのことが初めてでしたから、戸惑ったこともあったし、不安になったこともありました。

 でも、不思議なんですけど、まったく苦じゃなくてすごく楽しかったんです。

 撮影の準備期間も、北口監督から指導を受けているときも、撮影中も、大変だったんですけど楽しかった。

 がむしゃらに夢中になっている自分がいた。

 周りからみたら些細なことかもしれないんですけど、たとえば北口監督からいろいろアドバイスを受けて台本の理解が進むと、オトセちゃんもどんどん理解できるようになっていく。このことだけでも積み重ねたことが実になって自分の身体にしっかりと入った感覚があってうれしくなるんですよ。

 そうしたことを繰り返していくと、自分がどんどんオトセちゃんになっていく感覚がある。こういう感覚を味わったことはいままでなかった。

 あと、これまでアイドルとして活動してきたので、お仕事でお会いすることがあるのはほぼ同年代のアイドルさんばかりだったんです。

 ただ、今回の作品は、お母さん役の並木(愛枝)さんをはじめいろいろな年代の俳優さんがいらっしゃった。

 それでいろいろな年代の俳優さんとお話しできて、いろいろな考えを聞くことができて、これも勉強になってとっても楽しかった。

 そして、なによりオトセちゃんを演じ切ったときの達成感が半端なくて(笑)。アイドルとはまた別の達成感を味わうことができた。

 どこか未知の領域に踏み出した感覚があって、いろいろな気づきがありました。

 まだまだ勉強しないといけないことだらけだと思うんですけど、お芝居のお仕事もこれから真剣に取り組んでいきたいと思いました。

 これからは、アイドルとお芝居のお仕事、両方を頑張っていけたらと思っています」

【朝比奈めいりインタビュー第一回はこちら】

【朝比奈めいりインタビュー第二回はこちら】

【朝比奈めいりインタビュー第三回はこちら】

【朝比奈めいりインタビュー第四回はこちら】

「彼岸のふたり」メインビジュアル
「彼岸のふたり」メインビジュアル

「彼岸のふたり」

監督・脚本・編集:北口ユースケ

脚本:前田有貴

出演:朝比奈めいり 並木愛枝 ドヰタイジ

寺浦麻貴 井之上チャル 平田理 眞砂享子 エレン・フローレンス 永瀬かこ

星加莉佐 徳綱ゆうな 清水胡桃 吉田龍一 おおうえくにひろ

公式サイト higannofutari.com

全国順次公開中

メインビジュアル及び場面写真は(C)2022「彼岸のふたり」製作委員会

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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