北欧諸国への難民申請者数が減少、最も激減したのはノルウェー。ポピュリズム効果?
EU統計局(ユーロスタット)の発表によると、2016年にEUに初めて難民申請をした人数は120万4280人。2015年の125万7000人と比較して減少。2014年時の56万2700人と比較すると、その数はまだおよそ2倍に及ぶ。
申請者で多くを占めるのはシリア(33万4820人)、アフガニスタン(18万2985人)、イラク(12万6955人)。
欧州の中でも特に申請者数が多いのはドイツ。2015年(44万1800人)と比較して2016年(72万2265人)と63%増加した。
対して、北欧諸国への申請者数は激減。調査対象国の中で前年度から最も減少したのはノルウェー。
2015年から2016年の数の推移
ノルウェー 3万470人→3240人=マイナス89%
スウェーデン 15万6110人→2万2330人=マイナス86%
フィンランド 3万2150人→5275人=マイナス84%
デンマーク 2万825人→6055人=マイナス71%
100万人の人口比に対して受け入れている申請者数は、
ノルウェー 622人
スウェーデン 2267人
フィンランド 961人
デンマーク 1061人
ドイツは8789人で、EU諸国内でのシェアは60%と圧倒的な数を記録している。
右翼ポピュリズム政治の効果?
2013年の国政選挙で、ノルウェーは右翼ポピュリストである進歩党が与党に。首相率いる保守党と連立政権を組む。
進歩党のシルヴィ・リストハウグ移民・統合大臣は、「福祉国家の豊かなノルウェーが魅力的にうつらないように」厳しい政策を導入。積極的に国内外で「ノルウェーではあなた方を歓迎しない」、「申請者の増加は国家にとっての脅威」という姿勢を見せてきた。
リストハウグ大臣は現在産休中だが、自身のフェイスブックで今回の結果に対してこうコメントしている。「効果的な話し方と政治、厳しい境界線には効果がある。昨年、申請者の数が最も激減したのはノルウェー!今後、受け入れた人々の社会統合をより成功させるためにも、重要なことです。これからも低い数字を維持するためにも、できる限りのことをしていかなければなりません!」。
産休中のリストハウグ大臣の代理を務める進歩党のサンドバルグ漁業大臣も自身のフェイスブックで賞賛。長い間、ノルウェーよりも厳しい受け入れ政策をしてきたデンマークを超えることができたのは、進歩党の政策があったからこそだと語る。左派社会党SVなどの左翼陣営が政権を担っていれば、スウェーデンのような結果になっていただろうとも強調。
進歩党の党員たちは、これまでもスウェーデンの寛容な受け入れ対策を「失敗例」だとして言い続けてきた。デンマーク、フィンランド、ノルウェーではポピュリスト政党がすでに政権へ影響力を持っている。
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Photo&Text: Asaki Abumi