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今週末は花見の前に「花散らしの風」か

饒村曜気象予報士
川に流れる桜の花びら(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

さくらの開花と満開

 平成最後のさくら(ソメイヨシノ)は、3月20日に長崎、3月21日に東京、横浜、福岡の開花から始まりました。

 例年より暖かい春の始まりにより、関東から西日本の平野部で例年より早い開花でしたが、この頃から日本上空には寒気が南下しはじめました。

 このため、東京では3月27日に満開となったものの、多くの地点では、開花から満開までの期間が延び、満開になっても散り果てるまでの期間が延びています。

 4月に寒気が南下することはときどきありますが、多くは一時的な南下で、今回のように数日にわたる南下は珍しいものです。

 このため、福島県只見町で48時間降雪量が63センチ、長野県野沢温泉村で72時間降雪量が62センチなど、4月としての長い期間の観測記録を作っています。

 最初さくらが咲いた長崎では、寒気の南下によって満開が開花の14日後、予想通りの4月3日でした。このため、今週末の6日、7日は十分楽しめるでしょう(図1)。

図1 長崎のさくらの見頃予想
図1 長崎のさくらの見頃予想

 ただ、長崎に次いで開花が早い東京では、開花後に気温が高かったこともあり、3月27日に満開となっていますが、その後の寒気南下で、散り終わりが少し遅くなっています(図2)。

図2 東京のさくらの見頃
図2 東京のさくらの見頃

 とはいえ、東京のさくらは今が盛りで、週末はギリギリでしょう(図2、写真)。

写真 東京赤坂日枝神社のさくら(4月3日に撮影・提供、高橋和也)
写真 東京赤坂日枝神社のさくら(4月3日に撮影・提供、高橋和也)

 寒さが収まり、週末まで気温が平年より高い日が続くからです(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温(4月4~10日は気象庁、11~13日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温(4月4~10日は気象庁、11~13日はウェザーマップの予報)

 東京のさくらは、一斉に咲いたというより、多くの花が咲いたものの、一部はつぼみが残っているという、満開感が少ないと感じている人が多いかと思います。

 その理由として考えられるのが、今年は、寒さにさらされることが少ないまま春を迎えたことです。寒さによる休眠打破という現象が不十分で、昨年のように、一斉に咲き誇ることがなかったのではと思っています。

花ちらしの風

 週末の天気予報によると、桜が咲いている関東から西日本にかけて、晴れて気温も高くなり、花見には適した天気になりそうです(図4)。

図4 土曜日(6日)の天気予報
図4 土曜日(6日)の天気予報

 しかし、その前に大敵があります。

 金曜日(5日)に北日本を通過する低気圧です(図5)。

図5 予想天気図(4月5日9時の予想)
図5 予想天気図(4月5日9時の予想)

 この低気圧に向かって強い南風が吹き込む予報です(図6)。低気圧の発達如何によっては、強い南風で花ちらしの風になるかもしれません。

図6 風と雨の予想(4月5日15時の予想)
図6 風と雨の予想(4月5日15時の予想)

 その場合は、見上げての観賞ではなく、見下げての観賞、川面を流れる花びら「花筏(いかだ)」の観賞となります。

 一方、金曜日(5日)に北日本を通過する低気圧は、日本列島に暖気を持ち込みますので、さくらがまだ咲いていない北陸から東北地方にとっては、開花を促す「催花雨」となるでしょう(図7)。

図7 さくらの開花前線(ウェザーマップ4月1日発表)
図7 さくらの開花前線(ウェザーマップ4月1日発表)

 平成最後の花見も、いよいよ後半戦です。 

図1、図2、図4、図6、図7の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁資料、ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図5の出典:気象庁ホームページ。

写真の出典:高橋和也氏提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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