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【パラアイスホッケー&アイスホッケー】師走の週末に繰り広げられた二つの「氷上の日本一決定戦」

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
パラアイスホッケー日本一を懸けた長野vs東京戦(Photo:Jiro Kato)

 来年3月9日から始まるピョンチャン(平昌)パラリンピックの開幕まで、3か月を切りました。

 既に2大会ぶりの出場権を手にしたパラアイスホッケー(旧アイススレッジホッケー)日本代表は、来年1月に長野市で開催される「2018ジャパン パラアイスホッケーチャンピオンシップ(4か国対抗国際大会)」や強化合宿などを行って、大舞台へ備えます。

 その一方で、昨日と今日の二日間にわたって、ナショナルトレーニングセンターに指定され日本代表の活動拠点になっている、やまびこスケートの森・アイスアリーナ(長野県岡谷市)では、国内のクラブチームによる”パラアイスホッケー日本一決定戦”が開催されました。

▼パラアイスホッケー日本一決定戦!

 「日本一決定戦」とは言うものの、残念ながら国内の競技人口は数えるばかり。

 かつては本格的な活動を続けていたチームが4つありましたが、練習は深夜から未明にかけてがほとんど。

 スレッジ(=選手たちが腰かけてプレーする氷上用のソリ)を使ってのプレーが認められなかったり、下肢に障害のある選手たちの移動が困難なリンクもあって、泣く泣く競技から離れてしまった選手も少なくありません。

 このような事情によって、北海道ベアーズ八戸バイキングスの両チームは、単独での参加が困難に。

 そのため、1998年の長野パラリンピック開催決定を受けて本格的な活動が始まった長野サンダーバーズと、首都圏の選手たちが所属する東京アイスバーンズの2チームが、2回戦制でパラアイスホッケー日本一の座を争いました。

▼パラリンピックの出場資格がない選手も参加

 この大会の魅力の一つは、「パラリンピックの出場資格がない選手も参加できる」こと。

 国内チームだけが参加する大会なので、当サイトでの既報どおり、いわゆる健常者も出場が可能です。

 バンクーバーパラリンピックの銀メダリストたちと同じ氷の上で、なおかつ同じルールで試合をする体験は、他の競技では滅多にできないだけに、健常者のプレーヤーには大きな魅力かもしれません。

▼日本一決定戦は朝6時30分から

 長野vs東京の対戦となり、「東日本クラブ選手権大会」との名称で行われた日本一決定戦。

 他のアイスリンクと違わず、やまびこスケートの森も、週末は一般滑走の時間や、多くの予約申し込みがあるそうで、今年の「東日本クラブ選手権大会」も、第1戦が昨夜8時(=ウォームアップタイム)から。

 一夜明けて、今朝行われた日本一を決める第2戦は、午前6時30分開始。

 諏訪湖を望む高台に位置するアリーナは、(屋内リンクですが)真冬の朝とあって、試合開始前に自動販売機で購入した暖かいお茶が、試合開始10分ほどで、冷たいお茶になってしまうほど・・・。

 早朝から雪も降りはじめ、文字どおり凍てつく寒さの中、両チームの選手たちが、体から湯気を発しながらパックを追い掛けた戦いは、東京が2連勝(第1戦:5-3、第2戦:4-2)して、日本一に輝きました!

▼東京の勝因はキャプテンの至らなさ!?

 底冷えする寒さが影響してしまったのか、東京のゴールを守ったGKの小林斉章(なりあき)は、「試合前のウォームアップの状態は最悪でした」と不安を抱えながら第2戦に臨んだそうです。

 ところが、いざ試合になると、一転して落ち着いたプレーでゴールを守り、18本のシュートを浴びながら2失点に抑える活躍。(試合は正味15分のピリオドをインターミッションを挟みながら第3ピリオドまで戦って勝敗を決する)

 「キャプテンの至らなさを、みんなで補ってくれたのが勝因です(笑)」と、日本代表のFWとしても活躍しているチームリーダーの児玉直(なお)がジョークを口にしたほどの会心の勝利で、東京が王座奪還を果たしました。

王座奪還を果たした東京アイスバーンズ(Photo:Jiro Kato)
王座奪還を果たした東京アイスバーンズ(Photo:Jiro Kato)

▼次世代選手の強化練習も開催

 クラブチーム日本一決定戦だけでなく、この週末には「次世代選手の強化練習」も開催されました。

 これは前述のとおり競技人口が少なく、平均年齢が年々アップしていくために行われたもの。

 ピョンチャンパラリンピックの最終予選に出場した日本代表17人のうち、20代の選手は一人だけだったことでも明らかなように、日本のパラアイスホッケー界にとって、次世代選手の発掘は喫緊の課題だと言えるでしょう。

 この中から、2022年の「北京パラリンピック」の日本代表選手が現れるか !? 楽しみに待ちたいところです。 

▼アイスホッケー日本一決定戦

 パラアイスホッケーと時を同じくして、アイスホッケーの日本一を決める第85回・全日本アイスホッケー選手権も、今日大会最終日を迎えました。

 長野市で行われた昨年の大会前に、当サイトで紹介したとおり、全日本選手権は、1930年(昭和5年)に日光(栃木県)で第1回大会が行われたのを皮切りに、出場チーム数や会場、開催方式などを変えながら(ほぼ毎年)行われてきた「アイスホッケー日本一を決める戦い!」

▼9季ぶりの東京開催

 今大会のオフィシャルプログラムへの寄稿依頼を受けた筆者は、スマイルジャパン(=アイスホッケー女子日本代表)に多くの選手を送り出している八反田孝行 SEIBUプリンセスラビッツ監督(現日本アイスホッケー連盟強化部長)と、現役時代にミスター雪印と呼ばれた岩本裕司(現男子日本代表監督)両氏に話をうかがいました。

 テーマの一つとなったのが、実に9季ぶりに東京での開催となったこと。

 両氏が現役時代の全日本選手権は、国立代々木競技場第一体育館でお正月に開催されるのが “定番” となっていて、近くの明治神宮で初詣を済ませた人たちがスタンドを埋め尽くし、1万人近い観客が見詰める中で、アイスホッケー日本一を決める戦いが繰り広げられていました。

▼右足用のスケートが二つ!?

 当時を振り返って岩本氏は、「初めて決勝に勝ち上がった時は、まだ22歳と若かったので、すごく緊張してしまって、右足用のスケートを二足持って、ホテルから会場に向かったのを思い出します」と苦笑い。

 その試合では、左足のスケートが届くまで、出場しなかったチームメイトのスケートを借りて急場をしのいだとのこと。それが災いしたのではないでしょうが、王子製紙(当時)に敗れて、初優勝はお預けに・・・。

 しかし、日光アイスバックスの監督に就任し、3季前の全日本選手権で日本一に輝きました。

 一方の八反田氏は、3月下旬に開催予定の「全日本女子選手権」で、2季ぶりの優勝を目指します。

 昨季の大会では、オーバータイム残り1秒で決勝点を許して連覇を逃しただけに、日本一奪還なるか? 注目が集まります。

▼1740日越しのリベンジならず

 西東京市を舞台に行われた今季の全日本選手権は、「王子イーグルスvs東北フリーブレイズ」の顔合わせで、今日決勝戦が行われました。

 試合は、イーグルスの成澤優太(なりさわゆうた)と、フリーブレイズの畑享和(はたみちかず)という両チームのGKが、ともに得点を許さず、1点を争う攻防に。

 くしくも、この二人のGKは、5季前のアジアリーグ・プレーオフファイナルで対戦し、フリーブレイズが優勝に王手を掛けて迎えた第4戦で、虎の子の1点を守り切った畑が完封勝利を達成。

 畑はプレーオフMVPに選ばれる働きで、フリーブレイズをアジアの頂点へ導きましたが、日本一の座を懸けた今日の決勝戦でも、24本のシュートを全てセーブし、1-0のスコアで勝利。今大会のMVPに輝きました

 対して、1740日越しのリベンジを果たせず、大会2連覇を逃したイーグルスと成澤は、来年3月に行われるアジアリーグのプレーオフでの雪辱を期します。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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