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【2020年の鉄道】JRと地下鉄で新駅が誕生、常磐線は全面復旧 地方は廃線相次ぐ

小林拓矢フリーライター
利用者の多い都市部の鉄道(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 新年になり、世の中が動き出した。多くのネットメディアで、ことしの鉄道業界はどうなるのか、という記事が掲載されている。こちらでも、鉄道業界の動きで気になるところを記しておきたい。

東京圏鉄道の発展と課題

 多くの人が注目しているのは、3月14日のダイヤ改正で開業する、JR東日本の高輪ゲートウェイ駅だろう。6月には東京メトロ日比谷線に虎ノ門ヒルズ駅も開業し、新駅への期待は高まっている。

 ことしは東京オリンピック・パラリンピックということもあり、そのための整備も進んでいる。JR東日本の原宿駅や千駄ヶ谷駅などは、ホームの増設などが行われ、押し寄せる多くの人への対応を進めている。

 一方で、競技会場が新たにできる臨海副都心エリアでは、りんかい線やゆりかもめしかないという状況もあり、増発等での対応が求められている。ゆりかもめは自動運転の能力を最大限に活かし、コミックマーケットのときのような高密度運転を行うことが予想される。りんかい線は大崎~新木場間の臨時列車を増発させるという、やはりコミックマーケットのときと同様の対応が行われるだろう。

 ただでさえ外国人観光客が押し寄せる東京エリアで、さらに東京2020大会の観客の輸送を乗り切れるかがことしの最大の課題ではある。この期間には深夜時間帯の運転も予定され、それにより多くの人を運ぶことが可能になるものの、人手不足の中で過剰労働になることも予測され、このあたりに鉄道事業者は頭を悩ませていることだろう。

常磐線の全線復旧

 東日本大震災と福島第一原発事故の影響で全線の運行再開まで時間がかかった常磐線も、この3月14日に運転が再開される。すでに試運転が行われており、E657系特急型車両が仙台まで入線したとの情報も入っている。

 運転再開後は品川・上野から仙台まで「ひたち」が直通し、長距離の在来線特急の旅を楽しむことが可能になるだろう。常磐線は幹線であり、被災後の復旧は必要だったものの、どうしても原発事故後の放射線量の影響で時間がかかっていた。その状況から脱することができ、地域にとって明るいニュースであるだけではなく、復興の観点からも今後の見通しが立つニュースでもある。

豪華特急の登場、新幹線の高頻度運転

 近鉄の「ひのとり」、JR東日本の「サフィール踊り子」といった、豪華さを売りにした新型特急も、この春には登場する。近鉄は名阪間輸送で新幹線にはどうしても時間では勝てないため、乗り心地のよさや快適さを売りにした列車を出してきた。美しい赤色の車体が名阪間で高速で運転され、近鉄でもっとも格の高い列車がよりいっそうグレードアップする。

「サフィール踊り子」は全車グリーン車以上という車両となっており、車内では麺類などの軽食も提供される。「スーパービュー踊り子」はバブルの影響を受けた豪華車両として登場したものの、最近では時代に合わない車両となっていた。その影響もあって大きくリニューアルしたということになる。普通の「踊り子」にもE257系が導入され、国鉄時代からの185系は徐々に姿を消していく。

 また東海道新幹線では700系が消えることにより車両の性能が統一、「のぞみ」が1時間に最大12本運転することが可能になる。このダイヤは、東京~名古屋~大阪エリアの移動量の多さを示しており、この地域の経済的発展が見えるようになっている。

課題の大きい地方鉄道

 一方、地方鉄道は課題が大きい。被災鉄道の復旧や、路線の廃線などがことしも行われる。JR北海道札沼線の北海道医療大学~新十津川間は5月で廃線になり、JR東日本気仙沼線・大船渡線BRTは「鉄道」としての扱いを終える。

 JR北海道では日高本線の廃線がほぼ確実な情勢となっており、留萌本線のように利用者の少ない路線や、根室本線の一部区間のように被災して年月が経っている路線の廃線の話も出ている。

 その他のエリアでも、何かで被災したらもう復旧は困難、というところも出てくるだろう。現実に、JR九州の日田彦山線運休区間の存廃論議も行われている。

 新しい取り組みも見られている。阿佐海岸鉄道では、「デュアル・モード・ビークル」(DMV)の導入が進められており、道路も鉄道も走ることができるという車両となっている。

 この車両を登場させることで、コスト削減やバス網との接続の改善などが図られ、経営の厳しい地方鉄道のモデルケースになるのではと期待されている。

 だがこのDMVには難点もある。鉄道の動力車運転免許と自動車の2種免許の両方を必要としており、人材育成コストがふつうの鉄道に比べてもかかるという問題がある。実際、阿佐海岸鉄道では、運転士候補を数人採用したものの、免許取得できず退職した人や、研修途中での退職者も現れている。求人票で免許が取得できないと退職という旨は記してあるものの、人材育成と採用という面ではあまりにも荒っぽく、鉄道会社の人材育成と雇用の観点からは問題が大きすぎる。このあたりが近いうちに表面化すると予想している。

 都市と地方の格差が広がる中、鉄道の置かれた状況が大きく異なる状況はますます深刻化する。何らかの形で「再分配」が必要ではないか。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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