訂正:北朝鮮の軍事パレードで新型固体燃料ICBMが5両登場、火星17は12両確認
北朝鮮は2月8日に朝鮮人民軍創建75周年の閲兵式を行ったことを翌日9日に発表しました。首都の平壌で夜間に軍事パレードを実施し、新型の固体燃料ICBMと思わしきキャニスターを搭載したTEL(輸送起立発射機)が登場しています。
9軸18輪TELに搭載された新型固体燃料ICBM
新型固体燃料ICBMは9軸18輪のTELに搭載されています。これは液体燃料ICBM「火星15」用のTELと同じサイズですが、車両の細部は異なっています。
なお固体燃料ICBMはキャニスターと呼ばれる筒の中にミサイルを収納し、ガス圧でミサイルを打ち出して空中で主ロケットモーターに点火するコールドランチ方式を採用しています。つまり発表された写真の車両が搭載して見えているのはキャニスターであり、ミサイル本体そのものではありません。
新型固体燃料ICBMはまだ試射をしていないので、おそらく今回のパレードには中身のミサイルは入れずに出て来ています。新型固体燃料ICBMはまだロケットモーター燃焼テストが確認されているだけで、飛行テストはこれからになります。
関連記事:北朝鮮がICBM用の固体燃料ロケットモーター燃焼試験を実施(2022年12月16日)
実は過去に北朝鮮は2017年4月15日の故・金日成主席生誕105年記念式典のパレードでも固体燃料ICBMを登場させています。この時のTELは8軸16輪の車両で、液体燃料ICBM「火星14」用のTELと同じサイズでした。
過去記事:北朝鮮の固体燃料コールドランチ式新型ICBMの衝撃(2017年4月15日)
最近では火星14も8軸16輪TELも全く姿を見せておらず、おそらく火星14は試作で終わり、8軸16輪TELは全て火星15用の9軸18輪TELに改造されたのではないかという推定もあります。
今回の2023年2月8日のパレードでは新型固体燃料ICBMの9軸18輪TELは少なくとも5両を確認できます。これは9軸18輪TELを火星15に搭載して登場していた時よりも数が増えています。
今回登場した新型固体燃料ICBMのTELは車体番号571、572、573、574、575の5両が確認されています。
11軸22輪TELに搭載された液体燃料式ICBM「火星17」
今回の2023年2月8日のパレードでは11軸22輪TELに搭載された液体燃料式ICBM「火星17」が少なくとも10両以上を確認できます。つまりICBM用の大型TELが新型固体燃料ICBMの9軸18輪TELと合わせて15両は存在していることになります。
※追記訂正:高精細な画像で再確認したところ火星17の11軸22輪TELは12両と判明。新型固体燃料ICBMの9軸18輪TELの5両と合わせてICBM用TELは17両が登場。
昨年の2022年4月25日の朝鮮人民革命軍創建90周年(ややこしいですが朝鮮人民軍創建日とは別の祝日)の軍事パレードで登場したICBM用TELは火星17と火星15の合計8両でした。
過去記事:北朝鮮が軍事パレードを開催。ICBMは8両が登場(2022年4月26日)
つまり北朝鮮はICBM用の大型TELの量産に成功している事になります。ある意味ではミサイル本体よりも量産が困難だとされる大型TELを量産しているとなると、北朝鮮の長距離核戦力は急速に増大していく懸念が生じてしまいます。
なおこの2022年当時の記事では「巨大で重い火星17を複列で走らせることができなかった可能性」について触れましたが、2023年の今回のパレードでは火星17を複列で走らせており、以前までは単列で走らせていたのは特に技術的な制約ではなく、単に見せ方の都合だった模様です。
火星17は2020年10月10日の朝鮮労働党創建75周年の軍事パレードで初めて登場し(この時は名称非公開)、後に名称が判明しています。